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ホンダ“F1活動終了後”の新ビジョン。レッドブルとの連携強化や4輪レース活動をHRCが担う意図

ホンダ“F1活動終了後”の新ビジョン。レッドブルとの連携強化や4輪レース活動をHRCが担う意図

 ちょうど1年前の10月2日、ホンダは突然「2021年シーズン限りでF1活動を終了する」と発表した。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて経営資源を集中させるためだ、というのがその理由だった。その後、今年の3月には現行S660、8月には現行NSXの生産を2022年いっぱいで終了すると発表した。一方では電動の空飛ぶクルマ・eVTOLの開発に取り組むとか、ホンダジェットばかりか宇宙へ飛び出してさまざまなプロジェクトを推進するとか、矢継ぎ早に目新しくも挑戦的なニュースが流れた。

 僕はそれを聞くたびに、自動車メーカーであるホンダは、新しいモビリティの未来を探ってこれまでとは違う領域へ大きく重心を移し『目の前にある自動車を操る楽しさや夢といった側面を切り落とし始めたのではないか』とどこか脱力した。言ってみれば僕の大好きなモータースポーツは、それ自体は世の中のためにも会社のためにも、さほど役には立たないシロモノであって、これまでもどこか後ろめたさを感じながら関わってきた。しかし今後、環境問題や資源問題を抱え込んだモビリティ分野は社会に迷惑をかけず役に立つ道具に特化していくのかなぁ、そろそろモータースポーツなどと言っていられる時代ではなくなるのかなぁ、と思ったからだ。

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 そう感じていたものだから10月7日に本田技研工業株式会社ブランド・コミュニケーション本部広報部が開いた『モータースポーツ活動についての説明会』に出席するのは気が重かった。生まれながらのペシミスト(悲観論者)である僕は、いよいよホンダはF1に続いてモータースポーツ全般を、NSXやS660の生産終了同様に切り落とし、新時代のモビリティ開発のため資源の投入先を切り替えていくという宣言をするのではないか、と勝手に怯えていたのである。

 ところがいざ説明会が始まってみると、僕が恐れていたイヤな空気どころか、むしろ望んでいた方向性が示され始めたので驚いた。ただし、説明を聞くうちいくつか疑念が生じたのも事実で、説明会の直後、無理を言って渡辺康治ブランド・コミュニケーション本部長にお話をうかがった。

■4輪もHRCが担う意図
 まず、僕が気になっていたことは、会見で渡辺氏から発せられた「ホンダはこれまでモータースポーツ活動をとおして育てられてきた企業であり、レースはホンダのDNAであって、モータースポーツを盛り上げていくのが使命である」とする点だった。ではなぜモータースポーツの象徴であるF1の活動から撤退したり、スーパースポーツカーNSXの生産を打ち切ったりしたのだろう。それはまるで「少なくとも自動車のスポーツ性は“オワコン”である」というに等しい流れではなかったか。

 それを問うと渡辺氏は、「もちろん将来への種まきという意味で宇宙やロボットなどを含め(本田)宗一郎が言ったようにモビリティで人に役立つためいろいろやっていきますが、あくまでも事業のメインはクルマです。そのとき(クルマを操る楽しさを象徴する)レース活動がひとつの大事なファクターになることに変わりはありません」としながら、こう付け加えた。「ただ、そうした“操る楽しさ”を感じてもらうという面が弱まっていたという反省はありました」

 それを聞いて僕は、「ああ、それを認識してひとつの課題であると考えていてくれたのか」と、モヤモヤした気持ちの一部が晴れる気がした。ホンダが次世代モビリティに軸足を置き、“操る喜び”の象徴であるモータースポーツを過去の遺物として切り捨てても不思議はないと思っていた。だが“操る楽しさ”が忘れられていなかったことを知り、かなり救われる思いがしたのである。

 4輪モータースポーツ活動を今後はHRC(株式会社ホンダ・レーシング)で行うという体制変更についても正と負、両方の見方ができる。モータースポーツ活動を別会社に分離すれば持続性は高まるが、本体から切り捨てやすくなるとも考えられるからだ。

 HRCはもともと、本田技研工業の業績を含む都合に左右されず安定したレース活動を持続させるためのレース専門会社として1982年、本田技研工業の子会社として設立された。以降HRCは国内外の2輪モータースポーツ活動を運営してきたが、4輪レース活動については編入されず、本田技術研究所を拠点としたプロジェクト単位で活動が続いていた。第2期F1活動、第3期F1活動が始まり休止するたび「4輪レース活動も本社とは分離しレース専門会社で進める体制をとって持続性を高めるべきではないのか」という議論は繰り返し浮上したが、結局実現はしなかった。それが、第4期F1活動休止の段階でようやく実現することになったのだ。渡辺氏は言う。

「HRCの定款(ていかん:法人の目的・組織・活動・構成員・業務執行などについての基本規約・基本規則)には、もともと『2輪と4輪のレースをやる』と書いてあるんです。だからじつは今回の体制を作る際、定款変更は必要ありませんでした」

 HRC設立の段階から、ホンダのレース活動を2輪4輪ともHRCの独立体制で運営するという構想があったということには驚いた。

「これまでの4輪レース活動はプロジェクトベースなので、F1活動を始めて活動して休止しプロジェクト解散、となると、人材はともかくノウハウは残りませんでした。でも専門会社にすれば仮にプロジェクトが終わってもそこにノウハウがたまっていく。最初から4輪も(HRCで)やるべきだったのかもしれませんが、なぜかここまではそういう体制にはなりませんでした。でも2輪と4輪でこれだけレースをやっている自動車メーカーはホンダだけですから、そこはもっとシナジー効果を出して、両方でホンダのレースブランドを打ち出していったほうがいいだろうということになったわけです。また一方で、2輪と4輪のエンジニア間の交流による相乗効果も期待しています」

 ここは渡辺氏の言葉どおり、ホンダのモータースポーツ活動が持続性を強めて理想的な状態にようやく到達したと理解して、今後の発展に期待したいとは思う。

■レッドブルとの連携強化
 体制面は非常に楽しみになったとはいえ、まだ疑念は残る。というのもF1から撤退する理由が「カーボンニュートラル技術対応のため経営資源をシフトするため」というものだったからだ。果たしてHRCで行われる国内4輪レース活動は今後のホンダに対して技術的なリターンをもたらすことができるのかどうか。それができるとできないとでは、HRCの存在意義は大きく変わってしまうことになるはずだ。これについて渡辺氏はこう言った。

「F1活動を通して得た電動化技術、とくにエネルギーストレージの技術などはレース以外の領域にも水平展開できるような高いレベルの貢献がありました。国内のレースはそれに比べると状況が違いますが、たとえば今後4輪ばかりではなく2輪でもレースを、場合によっては電動化、場合によってはeフューエル化などと、カーボンニュートラル化していかなければならないので、それなら一緒にやったほうがいいだろうという意味でもHRCが機能すると期待しています」

 F1から撤退した後も、ホンダは4輪モータースポーツの場で技術開発に挑戦し続けると聞いてここでも安心した。さらに、SRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)やHFDP(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)で鍛錬に励んでいる若手ドライバーの“夢”が心配ではあったが、これはレッドブルと密接な関係を構築することにより従来どおり機能させてくれるという。

「ホンダとしてF1をやらなくなるので、その意味でのシートはなくなりますがレッドブルは持っているので能力さえあればそこに乗れることもあるでしょう。彼らとは関係を強化して、レース以外のところでもさまざまなコラボレーションを世界で展開できればと思っています」

 じつは、ここでも僕は首をひねらざるをえなかった。ホンダは世界的2輪4輪メーカーであり、対するレッドブルは新興飲料メーカーである。業種もビジネスの規模もかけ離れたふたつの企業がこれだけ綿密な関係を築くことにどれだけの意味があるのか、僕には見えなかったからだ。それについて質問すると渡辺氏はこう答えた。

「自動車メーカーのマーケティングは比較的保守的です。もちろん我々のお客様の幅は広いので全部の領域でというわけではありませんが、いまの若い人を上手に引きつけるやり方が得意ではなく、うまく取り込めていないという反省がありました。レッドブルのように若者に対してマーケティングのパワーがあるところと組むことによって保守的に見える自動車メーカーのブランドをもっと若者寄りにしていけば、何か突破口が開けるのかなと期待しています。たとえばエクストリーム系のところは魅力的で、そういうところでも一緒にやっていければ、ホンダという会社の見え方が変わってくるかもしれません」

 この説明にはツボを突かれるように納得した。それならば今後もホンダとレッドブルの関係は僕の老婆心などそっちのけで前向きに発展、拡大していくのだろう。僕に残された時間はそれほど多くはないけれど、とても楽しみになった。

 最後に、本来はF1日本グランプリで走るはずだったレッドブルF1の特別カラーについて聞いてみた。もともとレッドブル側から提案があったという、ホンダRA272をモチーフとしたカラーリングを、ホンダ側はどう受け止めたのか気になっていたからだ。渡辺氏は即答した。

「基本、そのまま受け取りました。なぜかって、うちの人間はみんなRA272が大好きだからですよ。ホンダのチャレンジの象徴ですよね」

 RA272に憧れてモータースポーツにのめり込み、結局30年以上も国内外のサーキットをうろつく商売に身を投じてしまった僕には、心の底からうれしい言葉だった。そういうことなら、ホンダが空を飛ぼうが宇宙へ飛び出そうが、もうしばらくはサーキットを歩き回ってホンダのレーシングカーが走り回るのを眺めて暮らすのもいいかもしれないなあと力が湧いてきたような気分すらした。

※この記事は本誌『オートスポーツ』No.1562(2021年10月15日発売号)からの転載です。


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