SUVの総本家をアメリカとするなら、コンパクト級という“ 分家”を生み出したのは何を隠そう日本。いまや内外の主要メーカーがこぞって参入している同クラスだがそこには依然パイオニアならではのアドバンテージが存在するはず。ということで、ここでは乗用車的コンパクトSUVの始祖となるRAV4と欧州の売れ筋モデルを比較してみた。
5代目のRAV4は直球なSUV仕立てに
トヨタの「アルファード/ヴェルファイア」、「RAV4」、「ライズ」がJNCAPで最高ランクに
なにをもって王道と判断するかは人それぞれのはずだが、SUVにおけるそれは既存のカテゴリー、セダンやハッチバックなどでは得られない「非日常」を感じさせてくれることに違いない。その意味で、今回集めたコンパクト級の3台は確かにSUVの王道を行く出来映えだといえる。
まずは日本代表のRAV4だが、このモデルはコンパクト級SUVの始祖というべき存在だ。初代がデビューした1994年当時、同クラスにはスズキ・エスクードが存在していたが、あちらがクロカン4駆の風情を残すラダーフレーム構造だったのに対しRAV4は乗用車らしいモノコックボディを採用。1995年登場の初代ホンダCR-Vともども、現在に至るコンパクト級SUV造りの“基本”を確立した。以降、RAV4は世界的支持を集める人気モデルへと成長。日本でこそ販売されなかったが、4代目は世界のトップセラーSUVという地位も築いている。
昨年、日本市場に復帰した現行型は5代目にあたるが、その特長のひとつは古典的クロカン4駆にも通じるラギッドなエクステリアだ。良い意味での「道具感」は、歴代のRAV4と比較しても随一。クーペなどとのクロスオーバー化が珍しくない現代のSUVとしてはむしろ新鮮でもあり、非日常を感じさせる資質は十二分だ。
一方、初代が全長4m級だったことを思うと、4.6mに達する現行型はもはやコンパクトと呼ぶのに抵抗を感じる体躯ではある。とはいえ主戦場である北米の事情や、トヨタには全長4.4m級のC-HR、ダイハツから供給される4m級のライズが存在することを思えばそれも納得。往年のハイラックスサーフ並みに大きくなった現行型のボディは、必然の結果ということもできる。また、室内や荷室はサイズ相応に広い。それだけに、気兼ねなく使える遊びの道具というSUVらしいニーズにも十全に応えられるはずだ。
試乗車は2Lガソリンの4WD、グレードはタフなイメージを強調するアドベンチャーだったが、その走りはソツのない仕上がりだ。動力性能は、必要にして十分というところ。アクセルを深く踏み込む領域ではCVTの悪癖が顔を出すものの、日常域ではシームレスな反応に好感を抱く人の方が多いだろう。回すといささか騒々しいが、低中回転までならエンジンの静粛性にも満足できる。
それを受け止めるシャシーの味付けは、伝統的なSUVテイスト。ガソリン版RAV4の4WDは、リアにトルクベクタリング機構を採用するなど、凝った作りになっている。それだけに操縦性は見ため以上に素直なのだが、ライド感は基本的にゆったりした鷹揚な味付け。正直、オンロードを攻めても楽しい性格ではない。しかし、SUVだと思えばこれもまたアリ。むしろ、乗用車らしさを強調する欧州勢に対するカウンターとして支持が広がる可能性も見出せる。
情緒に訴えるXC40と理詰めのティグアン
そんなRAV4と比較すると、ティグアンはまさに模範的な欧州産コンパクトSUVだ。折り目正しい外観と同じくパッケージングも煮詰められていて、荷室容量に至ってはRAV4を凌ぐほど。やや生真面目に過ぎる内外装の仕立ては単に背の高いゴルフのようでもあり、SUVに期待されるハレの気分はソコソコ。だが、本気でこの種のクルマを使い倒したい向きには、その実直なツール感が頼もしく感じられるはずだ。
試乗車は、クリーンディーゼルの2Lを搭載したRライン。日本向けのガソリン仕様はFFしか選べないが、ディーゼル版は4WDの4モーションが標準。SUVならではの万能性は、4WDが当然の日本勢にも見劣りしない。
オプションの20インチタイヤを履いていた試乗車の場合、日常域の乗り心地こそ路面からの入力が直截的ではあったが、気になった点といえばその程度。走りは間違いなくクラスのトップレベルだ。洗練度を重視してか、ディーゼルらしい低回転の力感はさほどでもないが、TDIモデルの動力性能は活発といえる水準で1.7トン超えの車重を意識させない。特有のノイズ、振動も走行時は気にならない水準に抑え込まれていて、特に高速のクルージング時は快適なライド感が満喫できる。
また、ステアリング操作に対する正確な反応、自然にストロークする足回りはスポーティな走りも苦にしない。それだけに、理詰めでこのクラスのSUVを選ぶならティグアンは間違いなく最後まで候補に残る選択肢となるだろう。
一方、XC40は同じ欧州産でも理詰めのティグアンに対して独自の情緒を感じさせる点が魅力だ。外観はことさらスポーティな造形ではないが、SUVらしさに洗練された都会的なセンスをプラス。オンロードにも映える、気の利いたプチ贅沢なコンパクトカーという風情は、デザイン性への評価も高い近年のボルボらしい。
今回の3車では一番全長が短いせいか、後席や荷室はティグアンやRAVと比較して多少ではあるがタイト気味。とはいえ、横方向に余裕があるのでSUVとしての実用性に不満はない。外観同様、室内も上質さと新鮮味のバランスが絶妙。この見ためで衝動買いする人がいても不思議はない出来映えだ。また、収納回りを筆頭とする気配りは日本のミニバンに匹敵する水準。この種のクルマで少なくないであろう、女性ユーザーを籠絡する技にもこと欠かない。
試乗車は、ハイスペックな2Lガソリンターボを搭載したT5のRデザイン。ティグアンより軽量なボディに、それを上回るトルクを誇るとあって走りは軽快とすら表現できる活発さ。乗り心地はこちらも少々硬めの入力が気になるが、前席に限ればそれも許容できる範囲内。当然、いざ積極的に操ればスポーティな走りにも対応してくれる。ティグアンやRAV4と比較すれば、そのベクトルこそ多少異なる。だがXC40もまた、いまどきの王道的SUVということができそうだ。
【Specification】TOYOTA RAV4 ADVENTURE
■全長×全幅×全高=4610×1865×1690mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=1630kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V/1986cc
■最高出力=171ps(126kW)/6600rpm
■最大トルク=207Nm(21.1kg-m)/4800rpm
■トランスミッション=CVT
■サスペンション(F:R)=ストラット:Wウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=235/55R19
■車両本体価格(税込)=3,195,500円
お問い合わせ
トヨタ自動車 0800-700-7700
【Specification】VOLVO XC40 T5 AWD R-DESIGN
■全長×全幅×全高=4425×1875×1660mm
■ホイールベース=2700mm
■車両重量=1690kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1968cc
■最高出力=252ps(185kW)/5500rpm
■最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/1800-4800rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ=235/50R19
■車両本体価格(税込)=5,591,666円
お問い合わせ
ボルボ・カー・ジャパン 0120-922-662
【Specification】VOLKSWAGEN TIGUAN TDI 4MOTION R-LINE
■全長×全幅×全高=4500×1860×1675mm
■ホイールベース=2675mm
■車両重量=1730kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16Vディーゼル+ターボ/1968cc
■最高出力=150ps(110kW)/3500-4000rpm
■最大トルク=340Nm(34.7kg-m)/1750-3000rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:4リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=255/45R19
■車両本体価格(税込)=5,449,000円
お問い合わせ
フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン 0120-993-199
【BREAK THROUGH POINT】TOYOTA RAV4
4WDシステムはホンキ仕様!/ガソリン仕様の4WDは、リア左右にカップリングを配したトルクベクタリングを採用するほか、2WD時の経済性向上に貢献するプロペシャフトのディスコネクト機構まで搭載。簡易な構造の欧州勢とは対照的だ。
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みんなのコメント
でもRAV4狙ってる人はティグアンやXC40は手も足も出ないと思うよ。軽がもう一台買える価格差だもん。