2019年のMotoGP第16戦日本GPのMoto3クラス決勝レースを、日本のMotoGPファンは手に汗握って見守っていただろう。母国グランプリで、鈴木竜生(SIC58 Squadra Corse)がトップ争いを展開。最終ラップまで表彰台争いを繰り広げたのだ。しかし、表彰台はラストラップ、鈴木の手からすり抜けた。
ウエットコンディションとなった予選を終え、鈴木は3番グリッドを獲得した。2019年シーズンは1勝と1度の表彰台を獲得。加えてトップ集団でのレースを何度も見せており、残している結果以上に期待感は高かった。
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予選を終えた鈴木は「トップ集団の人数を減らして、楽なレース展開に持っていきたい」「レースを引っ張って、常にトップ3にいられるようしたい」と語った。常に混戦が展開されるMoto3の決勝レースでは、最終ラップの最終コーナーまで複数台、それもかなりの台数によって表彰台争いが繰り広げられることも少なくない。少しのミスで、あっという間にポジションが下がる。鈴木は自らがレースをけん引して最後に優勝を争うライダーをしぼりたい、そう考えいたのだろう。
決勝レース序盤は、鈴木の思い描いていたとおりの展開となった。オープニングラップからトップに躍り出ると、レースをリード。9周目にはロレンツォ・ダラ・ポルタ(Leopard Racing)に交わされるも、僅差の2番手をキープした。実は、このとき鈴木には思惑があった。
「(ダラ・ポルタに)抜かれたというよりもあえて抜かせて、後半の2、3周にタイヤを残すために、ダラ・ポルタの後ろでスリップストリームを使って2位というポジションをキープしていたんです」
鈴木は最終ラップに向け、後ろからダラ・ポルタを観察した。ダラ・ポルタはチャンピオンシップのランキングトップにつける実力あるライダーである。それでも1、2のブレーキングポイントで、鈴木は自身にアドバンテージを見出した。勝負をそこに定めた。
しかし、最終ラップのS字カーブでアルベルト・アレナス(Gaviota Angel Nieto Team)に交わされたことで、そのプランにひずみが生じることになる。勝負どころでダラ・ポルタに仕掛けるには、アレナスをパスしなければならなくなった。
「もし90度コーナーのブレーキングポイントの勝負で3番手ではなく2番手だったら、そのまま2位でゴールできただろうし、優勝もねらえていたと思います」
さらに、90度コーナーでのブレーキング勝負について「今までのことを振り返って、守りに入って自分のポジションをキープしようとしてしまった」とも吐露する。
表彰台をかけて争う最終ラップの勝負で、その一瞬の守りの気持ちがすきを生んだのだろうか。3番手で90度コーナーを通過したあと、鈴木はビクトリーコーナーに向かうシケインでセレスティーノ・ビエッティ(SKY Racing Team VR46)にパスされ、4番手でメインストレートを立ち上がり、そのままチェッカーを受けた。
「相当悔しいです。今日のレース運びだと、2位で終わらないといけないレースでした。今日は、常に挑戦する気持ちを忘れず、挑戦者であり続けなければいけないということを学びました」
そのポテンシャルをしっかりと見せながら、母国グランプリで鈴木が表彰台に立つ姿は幻となった。「この(悔しい)気持ちを糧にして、常にどん欲にがんばります」と、鈴木は今後のさらなる飛躍を誓っていた。
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