■「プリウスシリーズ」のなかで販売低迷する「プリウスα」
昨今はハイブリッド車の売れ行きが好調です。小型/普通乗用車に占めるハイブリッド比率は、トヨタの場合で43%(2020年1月から6月)です。
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トヨタ車には、「ライズ」「パッソ」「ルーミー/タンク」のようにハイブリッド車を用意しない車種もありますが、それでも40%以上をハイブリッド車が占めています。
ハイブリッド車の売れ行きを押し上げる車種として、ハイブリッド専用車の「プリウス」と「アクア」を連想するでしょう。
登録車販売ランキングでは、2018年にアクアが日産「ノート」に次いで2位、2019年は、ステーションワゴンの「プリウスα」やプラグインハイブリッド車の「プリウスPHV」を含むプリウスシリーズが小型/普通車の登録台数1位になるなど、順調な販売を記録しました。
ところが最近は、売れ行きが下がり気味です。2020年の1月から8月のデータを見ると、プリウスやアクアの登録台数は、対前年比で50%から60%に落ちました。1年前に比べて、半数程度しか売れていません。
いまではさまざまなトヨタ車にハイブリッドが用意されるとともに、2020年5月以降はすべてのトヨタの販売店からトヨタの全車を買えるようになりました。その結果、プリウスやアクアの売れ行きが下がったのです。
これらのハイブリッド専用車のなかでも、とくに登録台数の少ない車種がプリウスαです。2020年1月から8月までの1か月平均は600台前後です。
5ドアハッチバックのプリウスは、以前に比べて登録台数を半減させたといっても、1か月に4700台前後は売っています。プリウスαは明らかに少なく、充電機能を備えたプリウスPHVの約530台よりも少し多い程度です。
現行となる4代目プリウスの発売は2015年ですが、プリウスαの登場は2011年と、9年が経過するモデルで設計が古いです。
プリウスαは、2009年に発売された先代の3代目プリウスをベースに、ボディを拡大して後席と荷室を広げました。荷室に3列目のシートを装着した7人乗りも用意しています。
先代プリウスがベースなので、プラットフォームの設計もひと世代前のものを使っています。
WLTCモード燃費は全グレードが20.7km/Lで、プリウスの30.8km/L(ツーリングセレクションは27.2km/L)に比べると燃費数値は70%以下ですから、相当に見劣りします。
荷室は使いやすいですが、7人乗りの3列目シートは窮屈です。足元空間の前後スペースが狭く、床と座面の間隔も足りないため、腰が落ち込んで膝を抱えるような座り方になります。
大人が多人数で乗車するなら、片道20分以内の距離に限られるでしょう。3列目の居住性はSUVに近いです。
衝突被害軽減ブレーキにも古さが見られます。現行プリウスは、車両に加えて夜間の歩行者や昼間の自転車も検知できますが、プリウスαは車両と昼間の歩行者しか対応できません。
改良されない背景には、売れ行きが下がってコストを費やしにくく、なおかつプラットフォームなどの基本設計も古いために手を加えられない事情もあります。
■プリウスαのフルモデルチェンジはあるのか!?
それではなぜ、プリウスαはフルモデルチェンジされないのでしょうか。トヨタの販売店に尋ねると、次のような回答でした。
「プリウスαの売れ行きはかなり下がりました。発売されたときには、『ウィッシュ』のような天井の低いミニバンからの乗り替えもありましたが、いまのミニバンはどれも『ヴォクシー』のように背が高いです。
プリウスαは、ヴォクシーなどに比べると車内も狭いため、乗り替えるお客さまも減りました。ここまで売れ行きが下がると、フルモデルチェンジをしても、好調に売れる可能性は低いでしょう。そうなると見送られます」
では、逆にプリウスαが廃止されない理由は何でしょうか。この点も販売店に尋ねました。
「いまでも前期型のプリウスαから、後期型に乗り替えるお客さまがおられます。走行距離が伸びるためにハイブリッドが必要で、荷物を積むから使いやすい荷室も欲しいという人です。
ただしヴォクシーのような背の高いボックス型ミニバンは、安定性が下がるため好まれません。そのようなお客さまにとって、プリウスα以外の選択肢はないようです。『カローラツーリング』を提案したこともありますが、荷室が狭いと断わられました」
プリウスαは、メーカーにとって判断の難しいクルマなのでしょう。いまではさまざまなトヨタ車にハイブリッドが設定されるので、プリウスαからヴォクシーや「シエンタ」のハイブリッドに乗り替えるユーザーも少なくありません。
5ドアハッチバックのプリウスも、現行型にフルモデルチェンジされて荷室容量を56リッター拡大しました。
その結果、プリウスαのニーズが下がり、今後の売れ行きも不透明なのでフルモデルチェンジをおこないにくいです。
その一方で、プリウスαは1か月に600台程度は登録されています。背景にはワゴンの激減があります。
プリウスαの全長は4630mmから4645mmですが、このサイズのワゴンは、もはや日本車では選べません。
カローラツーリングは4495mmと短く、荷室の奥行寸法も、継続生産される先代の「カローラフィールダー」に比べて50mm短くなりました。
先ごろ新型が披露されたスバル新型「レヴォーグ」は、荷室面積にも余裕がありますが、全長が4755mmに達するとともに、ターボ車のみのラインナップでハイブリッド車はありません。マツダ6ワゴンにもハイブリッドはなく、全長は4800mmを超えます。
ミニバンのように重心が高くないミドルサイズのハイブリッドワゴンを探すと、いまでもプリウスαは必然の選択です。
そのためにプリウスαを乗り継ぐユーザーもいて、1か月に600台前後は着実に売れるのです。そうなるとクルマの売れ行きが全般的に下がったいま、廃止するのは惜しいでしょう。
昨今は前述の通りワゴンの車種数が激減して、乗り替える新型車がなくて困っているユーザーもいます。
プリウスαにも根強い人気があるなら、新しいプラットフォームを使った新型プリウスα(あるいはプリウスワゴン)の登場に期待したいです。
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みんなのコメント
のと同じパターンですね。こちらは殆どタクシー用になってますが。
トヨタでは数少ないマトモなデザインのクルマなのに、冷遇されてますね。