長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はアゼルバイジャンGPでのスプリント・フォーマットの週末を振り返る。
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【全ドライバー独自採点/F1第3戦】大きなチャンスを残酷に奪われたラッセル。マシンに苦しみながら今季初入賞の角田
■評価 10/10:バクーでは無敵の速さを見せるルクレール
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選1番手/スプリント・シュートアウト1番手/スプリント2番手/決勝3位
シャルル・ルクレール(フェラーリ)とバクー・ストリート・サーキットは非常に相性がいいようだ。ここで走るたびに彼の生まれ持った速さが明らかになるのだ。予選では、他の誰もかなわないタイムを出す。このトリッキーなサーキットで発揮するされる彼の能力は素晴らしいもので、見ていて非常に楽しい。
週末を通してルクレールは輝いていた。SF-23を自信を持って操り、素晴らしいラップで2回の予選の両方を制した。レースになると、フェラーリにレッドブルほどのトップスピードがないことが大きな不利となり、ルクレールはレッドブル2台についていくことができなかった。それでもスプリントでマックス・フェルスタッペンに勝って2番手を獲得したのは立派だ。日曜決勝では、2台から遠く離れた3位に甘んじたが、タイヤをうまく持たせて、フェルナンド・アロンソからポジションを守り切った。
■評価 9/10:フェルスタッペンにプレッシャーをかけ始めたペレス
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選3番手/スプリント・シュートアウト2番手/スプリント1番手/決勝1位
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選6番手/スプリント・シュートアウト8番手/スプリント6番手/決勝4位
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選5番手/スプリント・シュートアウト6番手/スプリント7番手/決勝6位
バクーでのふたつのレースを制したのはセルジオ・ペレス(レッドブル)だった。これでペレスは今季日曜決勝での勝利数をフェルスタッペンと同じ2回とし、ドライバーズ選手権でチームメイトにプレッシャーをかけ始めた。金曜予選ではフェルスタッペンにかなわなかったが、スプリント・シュートアウトでは上に立ち、スプリントで勝利を収めた。日曜決勝は簡単にはいかなかったものの、優れたタイヤマネジメントが功を奏した。フェルスタッペンは予定より早くピットインしなければならず、セーフティカー出動のタイミングが有利に働いたペレスがトップに浮上。そこからはふたりが優勝をかけて戦うことになり、ペレスはフェルスタッペンと同等、あるいはそれより速いタイムを刻み、リードを守り、勝利をつかんだ。アゼルバイジャンでは全体的にペレスのパフォーマンスの方がフェルスタッペンよりわずかに優れていた。
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は今シーズン、すべてのレースを最高レベルで戦っている。バクーはチームメイトのランス・ストロールが得意としているコースだが、アロンソの方がはるかに速かった。DRSのトラブルにより、スプリントに向けて理想的なグリッドを確保することができなかったが、レースでクレバーなタイヤマネジメントといつもどおりの優れたレーステクニックを駆使して、挽回してみせた。その上、アロンソは走りながら、チームメイトに教えるようにと、セットアップの貴重な情報をチームに伝える余裕まであったのだから、恐れ入る。
このサーキットで不可欠な、自信を持って走れるマシンを手にしていなかったにもかかわらず、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は、素晴らしいパフォーマンスを見せた。金曜予選では、チームメイトがQ2で敗退したのに対し、ハミルトンは5番手。スプリント・シュートアウトではそれほどうまくいかなかったが、スプリントでしっかり2ポイントを獲得した。日曜決勝では、カルロス・サインツをアンダーカットして4番手に上がることを考えて早めのピットストップを行ったところ、その直後にセーフティカーが出動し、プランが台無しになった。10番手まで後退したハミルトンは、しかしそこからポジションを上げていき、チームメイトとストロールをオーバーテイクして、6位まで挽回した。
■評価 8/10:チームメイトを凌駕し、しっかりポイントを稼いだ角田裕毅
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選2番手/スプリント・シュートアウト3番手/スプリント3番手/決勝2位
ランド・ノリス(マクラーレン):予選7番手/スプリント・シュートアウト10番手/スプリント17番手/決勝9位
角田裕毅(アルファタウリ):予選8番手/スプリント・シュートアウト18番手/スプリントリタイア/決勝10位
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選10番手/スプリント・シュートアウト11番手/スプリント10番手/決勝11位
チャンピオンシップリーダーのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、めったにないことだが、この週末はチームメイトの後塵を拝した。2回の予選は一勝一敗だったが、スプリントでも日曜決勝でもペレスにかなわなかった。スプリントではスタート直後にジョージ・ラッセルに対して強硬なディフェンスをしたことにより、ルクレールの前に出るチャンスを失ったといっていいだろう。結局ラッセルとの接触でマシンのエアロ効率が低下してしまった。このことと、スプリント後にラッセルに対して怒りを爆発させた子供じみた態度から見て、フェルスタッペンはまだ完全に成熟しているとはいえないようだ。日曜日のフェルスタッペンは落ち着いてレースをしており、セーフティカーでの不運がなければ首位をキープしていた可能性が高い。ただ、タイヤマネジメントがペレスほどうまくやれていなかったので、終盤にチームメイトにアタックされていたかもしれない。
ランド・ノリス(マクラーレン)はそれほど目立たなかったけれど、週末を通して、中団をリードしていた。予選では7番手、スプリント・シュートアウトではQ3で使用しなければならないソフトタイヤが残っていなかったため、トップ10に入ったにもかかわらず、走ることができなかった。スプリントではソフトタイヤを装着したが、そのギャンブルは奏功せず。日曜決勝では、ストロールとラッセルに抜かれた後、アンダーカットを試みたものの、セーフティカーで台無しに。その後、ハードタイヤでスタートしたエステバン・オコンとニコ・ヒュルケンベルグを抜けないまま40周も走り続けながら、冷静さを失わなかった。終盤にヒュルケンベルグを抜き、オコンがピットに入った後、9番手に上がった。フィニッシュした時点で10位の角田裕毅に3.5秒の差をつけていたことからも、ノリスが他の中団勢より圧倒的に速かったことが分かる。
角田裕毅(アルファタウリ)はバクーでも、その成長ぶりと成熟ぶりをはっきりと示し、チームメイトを完全に凌駕した。予選は見事なラップで8番手を獲得。土曜のスプリントデーはうまくいかず、スプリント・シュートアウトでは赤旗の影響をうけてQ1で敗退、スプリントではスタート直後、ニック・デ・フリースとの接触によりフロントウイングが破損し、その影響でリタイアした。日曜決勝では、オコンが先頭のDRSトレインのなかを走り続けたが、ハードタイヤで走り続けたヒュルケンベルグを抜き、オコンがピットインしたことで角田は10位、奮闘が報われてポイントをつかんだ。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は、予選、スプリント・シュートアウト、スプリント、決勝で全般的に優れた結果を出し、ルーキーのなかで唯一、ウォールにクラッシュしなかった。それだけでも高い評価に値するが、驚くべきことに、この結果を体調不良で弱っていた状態で成し遂げた。胃腸炎の症状がひどかったため、チームは土曜日は完全に休ませることを検討していた。そんな状態でピアストリは、どちらのレースも、入賞まであと一歩という位置で完走した。
■評価 7/10:スプリントデーで輝いたラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選11番手/スプリント・シュートアウト4番手/スプリント4番手/決勝8位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選13番手/スプリント・シュートアウト7番手/スプリント9番手/決勝12位
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選12番手/スプリント・シュートアウト13番手/スプリント18番手/決勝15位
ジョージ・ラッセル(メルセデス)にとって週末のハイライトは、土曜のスプリントデーだった。スプリント・シュートアウトでもスプリントでも4番手を獲得した。一方で、金曜と日曜はあまりうまくいかなかった。金曜予選ではQ2で敗退、日曜決勝ではハミルトン、ストロールとのバトルに敗れ、8位にとどまった。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、トップスピードが重要なトラックで有利に戦い、ポイントを狙いたいと考えていた。しかしスプリント・シュートアウトで見事に7番手を獲得した後、スプリントではアストンマーティン勢に対抗できず9番手に後退。決勝では1周目にピアストリとの接触でマシンのフロント部分にダメージを負い、全力を尽くしてディフェンスしたものの、12位が精いっぱいだった。
エステバン・オコン(アルピーヌ)が、チームメイトとは異なり、冷静に戦い続けたことを評価すべきだろう。ギヤボックスのトラブルでフリープラクティスでは十分に走れず。大規模なアップグレードが導入されたが、適切なセットアップがなされていないマシンで、予選12番手を獲得。サスペンションセッティングを変更するというギャンブルをしたことで、ふたつのレースをピットレーンからスタートすることになり、スプリントをテストとして扱い、日曜の決勝に賭けた。終盤までセーフティカーを待ったが、チャンスは訪れず、オコンは15位にとどまった。
■評価 6/10:不調のサインツがダメージリミテーション
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選9番手/スプリント・シュートアウト9番手/スプリント8番手/決勝7位
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選4番手/スプリント・シュートアウト5番手/スプリント5番手/決勝5位
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選19番手/スプリント・シュートアウト19番手/スプリント13番手/決勝14位
周冠宇(アルファロメオ):予選16番手/スプリント・シュートアウト16番手/スプリント12番手/決勝リタイア
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選18番手/スプリント・シュートアウト14番手/スプリント11番手/決勝13位
ランス・ストロール(アストンマーティン)は、両レースでポイントを獲得したものの、週末を通してアロンソにはかなわなかった。スプリント・シュートアウトではQ3に進出するためにアロンソからトウをもらう必要があった。土曜のQ3でアロンソとの差が非常に小さかったのは、アロンソのDRSが動かなかったからだった。ストロールは日曜には、リスタートでラッセルに勝って、最終的に7位を獲得した。
カルロス・サインツ(フェラーリ)の週末も、ストロールと似たようなストーリーだった。サインツは、自分で認めていたように、マシンに自信を持って乗ることができず、バクーの狭いコースを、ルクレールのようなスピードで攻めることができなかった。チームメイトほどの速さがなかったことは残念だったが、自分が苦しんでいることを正直に認め、自分の限界を超えてウォールにヒットするようなことがなかったのは立派だった。そうして5位を2回獲得し、困難な週末においてダメージを最小限にとどめることができた。
ピエール・ガスリー(アルピーヌ)はレースでは悪くなく、スプリントを17番グリッドからスタートし、13番手まで挽回した。ただ、予選でのミスはいただけなかった。プラクティスでトラブルに見舞われた後、メカニックが直したマシンでQ1で早々にクラッシュしたのだ。今回マシンにアップグレードが入っていたため、周回を重ねてこれについて学ぶことが重要であり、経験豊富なドライバーとしては、許されるミスではない。スプリント・シュートアウトでもテクニカルトラブルが発生、Q1で敗退することに。しかしスプリントでも日曜決勝でもしっかり順位を上げてフィニッシュした。
周冠宇(アルファロメオ)にとって、今回最良の日は土曜のスプリントデーだった。スプリント・シュートアウトでは、Q1敗退とはいえ、チームメイトのバルテリ・ボッタスに勝ち、そしてスプリントでは12番手に浮上。しかし日曜日には、セーフティカー出動中のピットストップに時間がかかり、ポイント圏外を走り続けた後に、マシンのオーバーヒートの問題で、リタイアしなければならなくなった。
ハースにとっては良い週末ではなかった。ケビン・マグヌッセン(ハース)は、フリープラクティスでパワーユニット(PU)トラブルのために貴重な走行時間を失った後、金曜予選でQ1敗退、スプリント・シュートアウトではQ2に進み、スプリントで11番手となった。日曜決勝では、ターン2でボッタスと接触、フロントウイングに小さなダメージを負ったが、アグレッシブな動きによりポジションを上げた。しかしトップスピードが劣っていることでアルボンを追い抜くことができず、13位でフィニッシュした。
■評価 5/10:ヒュルケンベルグ、ロングスティントの戦略実らず
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選17番手/スプリント・シュートアウト12番手/スプリント15番手/決勝17位
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選14番手/スプリント・シュートアウト17番手/スプリント16番手/決勝18位
ローガン・サージェント(ウイリアムズ):予選15番手/スプリント・シュートアウト15番手/スプリント出走せず/決勝16位
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)は、スプリントで高いタイヤデグラデーションに悩まされたため、メインレースに向けてセットアップ変更を行い、ピットレーンスタートとなった。オコンと同じく、ヒュルケンベルグはハードタイヤで終盤まで走り続け、セーフティカーを待ったが、望む展開にはならず、残り2周の段階でピットに入り、17位に沈んだ。
バクーで優勝経験のあるバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は、金曜予選ではQ2に進出し14番手に。しかしスプリントでのソフトタイヤのギャンブルは裏目に出て、ポジションを落とす結果になった。日曜決勝では、1周目にピアストリにターン2でヒットされ、アンチストールが作動したことでマグヌッセンに追突されて、ディフューザーがダメージを負った。その結果、ボッタスにとって、残りの50周は長く苦痛なレースになってしまった。
ローガン・サージェント(ウイリアムズ)は、今回も、見事なパフォーマンスを見せる一方で、ミスを犯した。予選Q1で11番手、Q2で15番手と速さを見せたものの、スプリント・シュートアウトのQ1後半にクラッシュ。マシンが破損したため、スプリントを欠場しなければならなかった。日曜決勝は慎重に走ったが、後方の16位でレースを終えた。
■評価 1/10:忘れてしまいたい週末を送ったデ・フリース
ニック・デ・フリース(アルファタウリ):予選-番手/スプリント・シュートアウト20番手/スプリント14番手/決勝リタイア
ニック・デ・フリース(アルファタウリ)にとって忘れたい週末になった。FP1では驚きの6番手を獲得したが、予選序盤に愚かなクラッシュをし、最後尾グリッドに。土曜以降も物事はうまくいかず、スプリント・シュートアウトでは最下位、スプリントでは1周目に角田に接触、日曜のメインレースでは9周目に再びクラッシュしてリタイアした。
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ツノダー? 知らない子ですね