まもなくティザーの第2弾が公開される新登場のホンダZR-V。シビックのシャシーベースにSUV化した、日本市場ではヴェゼルの上位モデルといえる存在になりそうだ。
だが、筆者によると販売は失敗するらしい。どうして失敗するのかについて語ってもらった!
なんだって!? ホンダの新型SUV、ZR-V投入で予見される失敗
文/小沢コージ
写真/ホンダ
■毎度毎度の価格戦略ミス!!
6月7日にアメリカでネット発表、年内には国内発売ともいわれる新作SUV、ホンダZR-V。一部海外でいうHR-V(日本版ヴェゼル)よりひと回り大きい、シビックベースのミディアム(コンパクト)SUVだが、小沢の見立てでは普通にやれば絶対に売れる。ただし、いつもの価格戦略を繰り返さなければ……だ。
しかし、残念なことに現在間違える可能性が90%以上はある。しかも原因はハッキリしている。
今や世界はSUV時代。すでに約10年前には北米や中国市場のSUV比率は4割を超え、今や北米では6割、中国で5割、欧州で4割超えともいわれる。アメリカではセダンの代わり、欧州ではハッチバックの代わりにSUVが売れており、結果、世界の自動車メーカーはSUVフルライン戦略を取るに至っている。
具体的にVWなら上からトゥアレグ、ティグアン、T-ROC、T-CROSSの4車種。メルセデスならGクラス、GLS、GLE、GLC、GLB、GLAの6車種、BMWならX7、X6、X5、X4、X3、X2、X1の7車種。まさに絨毯爆撃。隙間ないSUV戦略はフルラインメーカーのマストだ。
それに比べてホンダはどうだ。たとえばトヨタだとランクル、プラド、ハリアー、RAV4、カローラクロス、C-HR、ヤリスクロス、ライズと揃ってる。対してホンダは国内ではCR-Vとヴェゼルしかない。
これだけでも個人的には信じられないし、オマケにCR-Vは撤退目前でつまりヴェゼル一本。どう見てもオカシイし、最近のホンダ全体の不調のキモは一連の商品戦略にあると思う。
■ZR-Vは世界市場で売れる、売れなければいけないクルマ
そこで生まれる待望の新作がZR-Vであり、北米でいうHR-V。ベースはシビック、世界で1番売れるジャンル&サイズであり、売れる要素は揃っている。単純に考えるとトヨタのカローラクロスのホンダ版なのだ。
世界の中心たるCセグメントSUVであり、カロクロがカローラベースならZR-Vはシビックベース。日本はもちろん、北米から中国、ASEANから欧州までカバーする最もオールマイティなクラスで、ふつうに考れば売れないわけがない。というか、ホンダは世界でこれを売らなければならないはずだ。
国によってHR-Vとも呼ばれるZR-V。更に、タイでは日本のヴェゼルがHR-Vとして販売されてたりと複雑だ。なおZR-Vの日本仕様は、全幅が1800mmまで細くなっているという情報も
アメリカで発表されたアウトラインからカローラクロスとガチで比べてみよう。ZR-Vのボディサイズは全長4567mm、全幅1839mm、全高1610mmでホイールベース2700mm。かたやカロクロは全長4490、全幅1825、全高1620mmでホイールベースは2640mm。
正直思ったよりサイズは大きめ。ただし、全長は4.6m以下だし、日本で多少ネックなのは全幅くらいだが、それでも1m85cmを切る。事実上ほぼ問題にならない。
パワートレーンはシビックやステップワゴン同様、1.5Lターボと2Lシリーズハイブリッドのe:HEVの2本立てだろう。前者は182ps&240Nmで、後者は加速に関わるモーターが184ps&315Nm。前者はカロクロの1.8Lガソリンよりパワフルで、後者にいたってはシステム出力からトルクまでトヨタを凌いでおり、しかもe:HEVは透き通った加速のシリーズハイブリッド。走り味は間違いなくカロクロより上質かつ滑らか。
燃費はカロクロハイブリッドがWLTCモードで26.2km/Lのところを、ベースのシビックハイブリッドが24.2km/L。しかもSUV化で重くなるから多少悪化する。ただしそれでも22km/Lレベルだから現実的にはまったく問題がない。
■デザインは日本人向けではないと思う
一方懸念点は、少し丸すぎるデザインではないだろうか。日本では角張ったデザインのほうが受けるし、ヴェゼルの水平基調ともちと風合いが違う。だが、マッチョ感はあるし、カロクロにわりと似てるし、個人的にはグリルの大型ハニカムをシャープにするだけでもだいぶ日本人向けになると思う。
とはいえ、インテリアクォリティ、リアシートは完全にカロクロを凌ぐ。そもそも格下のヴェゼルからして質感はカロクロを上回っていたし、写真を見てもチェック柄に赤ステッチのシートは質感が高いし、樹脂クォリティも間違いなくいい。
リアシートは全長からしてヴェゼル以上の広さは間違いなく、ラゲッジはなんと690L。カロクロの487Lより段違いで広い。
小沢は断言しよう。カロクロに燃費では負けるだろう。ただし、加速の透明感、インテリアの上質感、リアシートの広さ、ラゲッジの使い勝手ではZR-Vだ。価格設定を大間違いしなければ勝つか、ナイス勝負には絶対持ち込める。
■予見されるカローラクロスとの価格差プラス150万円
しかし……ここからが予見される繰り返される可能性のあるホンダの失敗だ。ホンダは恐らく値付けを間違える。それも10万円や20万円じゃない。100万円オーバー単位で間違えるだろう。
最初に考えて欲しいのが、現在好調に売れているカローラクロスの価格設定だ。確かにトヨタらしくコスパに優れ、ハイブリッドFFが259万円、ガソリン1.8Lに至っては199万円とすごく安い。まあ、ここまでホンダはやらなくていい。ZR-Vの1.5Lターボが230万円スタート、e:HEVが280万円スタートでもいいと思う。そう、ヴェゼルよりも10数万円高いくらい。
ただし、そうはならない……というかできないはずだ。なぜなら現状でベースのシビックがすでに高いからだ。そもそもここから間違っていると思うのだが、シビックはガソリン車が319万円、ハイブリッドが394万円から。
特にハイブリッド。一般的にはライバルと目されるプリウスが259万円、カローラセダンハイブリッドが240万円だからどれだけ高いかわかるだろう。実に150万円も高いのだ。
従ってシビックSUVたる新型ZR-Vはおそらくガソリンが330万円、ハイブリッドが400万円を超える。ガチライバル、カロクロのガソリンが199万円、ハイブリが259万円なのに! これまた130万円から150万円高い。ほとんど同じクラス、同じカテゴリーのクルマが! 同じクラスのクルマがいくら質感がいいからって100万円以上高くて誰が買のだろうか!!
■ジャッジするのは消費者
正直、この条件でZR-Vの勝利はあり得ないと思う。だがもしや一部ホンダのお偉いさんは「ZR-Vとカロクロさんはクラスが違いますから」とでも言うのだろうか。
確かにサイズであり、パワーなどは微妙に違う。質感も違う。しかし私は、カロクロとZR-Vはガチライバルだと思う。ほとんど井上尚弥と亀田和毅くらいのサイズ差。どうみても両者は同クラスだ!
ホンダはこれまで同様の失敗を何度も繰り広げている。
たとえば世界ではガチライバルのトヨタRAV4とホンダCR-V、国内のスタート価格は277万円対336万円だ。同じ失敗を繰り返しすのだろうか? それも今回、価格差が広がるのではないか。
筆者の予測通りに値付けが高いのであれば、相応の付加価値が必要になってくる。ユーザーが買ってもいいなと納得できる魅力があるのかが焦点となってきそうだ
CR-Vも、クルマ自体はよかったんで余計悲しかった。価格は商品の最大の性能だ。ほかがいいのに、最大の性能の価格設定を間違えてどーすんの!!
マジメに小沢はまだまだ繰り返されるであろう、ホンダの価格戦略の大失敗が悲しい。ってか俺以上に販売現場が悲しいはず。「ああ……またですか……」と。
クルマは間違いなくいい。でもライバルより150万円高いクルマ、誰が買うんですか? ホンダ首脳陣様、胸に手を当てて考えてみてください。アナタ、ホントに買いますか?? 消費者の立場になって。
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