高速道路の路面などでよく見かけるブラックマークは、急ブレーキを掛けた際などにできるタイヤ痕だが、高速道路やサーキット以外にも、このブラックマークが頻繁に現われる場所がある。それが空港である。
自動車とは比べ物にならない重量の航空機がタッチダウンを繰り返す滑走路の路面は、このタイヤ痕だらけ。安全上もきれいに除去しなければならないが、時間的な制約もある。
今から125年前に誕生した世界初のトラックも 見どころ満載の「メルセデス・ベンツ・ミュージアム」を訪ねて
そこで登場したのが、高圧水による路面洗浄清掃をするトラック「KAMTEC RWC1500」だ。その機能を確認すべく富士スピードウェイで行なわれたデモンストレーションの模様をご紹介しよう。
*2019年3月発売トラックマガジン「フルロード」第32号より
*文・写真/フルロード編集部
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■ベースシャシーはボルボFHとFMのニコイチ?
通常は路面まで下げて使用するサーフェスクリーナーを上げた状態で作動し、超高圧水がどのように噴射されるかを確認した
高圧洗浄清掃車「RWC1500」のベース車両は、500馬力のD13K500型エンジンを搭載したボルボFH(トラクタ)のシャシー部分を、ボルボFMのカーゴトラック仕様に準じてフレームを強化延長した変わり種。フレームの中央に「サーフェスクリーナーユニット」と称する路面洗浄清掃装置を吊り下げている。
また、フレーム上部には、超高圧力のプランジャーポンプを配置し、清水6000リッター、廃水7000リッターが入る2つのタンクを装備したコンテナを架装している。
心臓部ともいえる超高圧プランジャーポンプ
ちなみにこの車両の心臓部ともいえる超高圧プランジャーポンプはドイツのKAMAT社製で、架装はドイツのシュミット製だ。
また、この車両を日本市場に導入したのは、KAMAT社の高圧ポンプの輸入販売元である(株)カムテックで、ユーザーは成田国際空港で空港のメンテナンスを行なっている(株)ナリコーである。
■滑走路のタッチダウンゾーンはゴムタイヤ痕がいっぱい
滑走路に航空機が着陸するタッチダウンゾーンには航空機のゴムタイヤ痕が黒々と付着しているが、このゴム汚れは滑りやすく、スリップ事故を誘発するおそれもあるという。
滑走路の路面は、航空機の安全な離着陸を確保するために摩擦係数が定められており、滑走路のゴム除去は空港のメンテナンス作業において重要なポイントになっているそうだ。
ただ、このゴム汚れは路面に頑固に付着しており、滑走路の路面には、遠目にはわからないが、グルービングと呼ばれる細かい溝が筋状に掘られている。したがって、このゴム汚れの除去はなかなか厄介なのだ。しかも空港の滑走路ゆえ作業時間も限られている。
■1台3役以上の高圧洗浄清掃車
これまでゴム汚れの除去作業の現場には、一般的にクリーナーをはじめ、ポンプ車、バキューム車、清水・汚水タンク車など3台以上の車両と多くの人員が必要とされていた。RWC1500は、それらの作業を1台で行なえる多機能性が最大のセールスポイントだ。
洗浄清掃作業に際しては、エンジンPTОによって油圧ポンプを駆動するのだが、この油圧を多方面に活用。まず洗浄清掃作業時は、油圧を利用して後輪を駆動し、走行する。これによって作業時の微低速の走行速度を一定に保ち、作業の精度を高めることに貢献するという。
またPTОにより発生した油圧によって心臓部のKAMATの超高圧ポンプを駆動させるとともに、サーフェスクリーナーユニットも稼働させるというから、洗浄清掃作業時は油圧がすべてのパワーの源なのだ。
超高圧ポンプは最大吐出圧力2500barを発生し、超高圧水の吐出量は毎分29リッターに達する。
洗浄用水は、車載の6000リッタータンクに蓄えられ、100ミクロンと25ミクロンの二重のフィルターによってろ過され、給水昇圧ポンプに導かれる。さらに給水昇圧ポンプから10ミクロンのフィルターによってろ過され、超高圧ポンプに給水される。
これほどまで綿密にろ過するのは、水の中に含まれる細かい錆やゴミが高圧ポンプのバルブに傷つけないよう、さらに洗浄クリーナーの先端のノズル径が0.15mmと小さいため、目詰まりしないようにするためだ。
■スグレモノのサーフェスクリーナーユニット
750mm幅のサーフェスクリーナーが外側と内側に交互に配置され、計1500mm幅の路面を施工する
2基のサーフェスクリーナーユニットは、作業現場への移動などの通常走行時には路面から高い位置に格納される。
作業時には降下し、作業位置に750mmずつ合わせて1500mmの作業幅でノズルから高圧水を路面に噴射。路面に付着したゴム成分などの汚れを剥離するとともに、舗装表面から深部に潜り込んだ砂や埃などを浮き上がらせる。
同時にクリーナー後部に装着された強力バキュームによって吸い上げられ、廃水タンクに送り込まれる。
コンテナはダンプアップでき、これによって廃水タンク内の堆積物も容易に排出できる
清水タンク、廃水タンクを搭載したコンテナは油圧による傾斜昇降が可能で、これによって排水したのち、後部ハッチを開いて廃水タンク内に堆積したゴム成分、土砂などの排出を容易にしている。
操作はリモコンだ。なおナリコーでは、この車両をARC1500と呼称している(RWCと同等機種)
また、作業走行速度の設定、高圧水圧力設定、高圧水水量設定など全ての作業は、タブレットタイプのディスプレイにタッチすることで行なうことができる。さらに作業中はライブカメラによって状況確認もでき、作業に関するほとんどの情報がディスプレイに表示されるのだ。
運転席からライブカメラによるモニタリングも可能だ
RWC1500には追加オプションも多数用意されているが、中でもハンドサーフェスクリーナーは、車両本体に接続して使用できる作業幅250mmの小型サーフェスクリーナーで、ラインの消去など車両から離れた狭小部分に適している。
■滑走路のゴム除去作業を1分で完了
路面洗浄後の境目を見ればその差は一目瞭然。洗浄前の写真右にあるタイヤ痕も写真左の境目でキレイに消えている
デモンストレーションの試験施工を行なったナリコーの萩原克彦常務執行役員によると、
「滑走路のゴム除去作業は、これまでは4台~5台くらいの車両で現場に行って、機械と機械をホースで繋いだりして結構手間が掛かっていましたが、これは1台ですべて業務を行なえるので大きな戦力になっています。
現場に行ってすぐに作業を始められるし、約1分で撤収できますから、緊急着陸などの際にも迅速に滑走路から出ることができます。また、サーフェスクリーナーのノズルの径がごく小さいので、超高圧の水を噴射しても舗装を傷めず、ゴムだけ取れるのでとてもいいと思います」。
ちなみに成田空港の場合、この滑走路のゴム除去の作業は年に3回ほど行なっているという。
「ゴム除去作業のほか、滑走路に描かれた標識を消すのに時々使用していますが、ただ、それでも稼働率はそう高くない。そこで他の空港にもお声掛けさせてもらっています。先日は新千歳空港でゴム除去を行ないました」。
■サーキットや高速道路、福島での放射能の除染も視野に
また、この車両を輸入したカムテックの進藤一浩代表取締役は、
「今回デモンストレーションさせてもらった富士スピードウェイそうですが、たとえば、NEXCОさんのように高速道路を管理している会社さんなど、空港以外の場所でも高圧水による路面の洗浄清掃のニーズはあると思いますので、広く働きかけていきたと思っています。
それともう1つは、福島での放射能の除染作業です。GPSによる自動運転で洗浄清掃できれば、このクルマもお役に立てるのではないか、そんなことを思い描いています。
このクルマを日本に導入するのに、かれこれ8年間くらい掛かりましたが、デモンストレーションを見ていただければおわかりの通り、非常に多機能で効率的な洗浄清掃作業を行なう車両ですので、活躍の場をどんどん拡げていきたいと思っています」とのこと。
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