トヨタの“お膝元”富士スピードウェイで行なわれた世界耐久選手権(WEC)第6戦富士6時間耐久レース。日曜日の決勝では、スタート直後のターン1で6号車ポルシェ963を駆るローレンス・ヴァントールがポールシッターの7号車トヨタGR010ハイブリッドのインを突き、一気に首位に躍り出た。
最終的に6号車ポルシェはトヨタ勢に交わされ3位フィニッシュとなったが、ヴァントールは真っ向勝負ではトヨタ勢に「対抗できるとは思っていなかった」と振り返っている。
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ヴァントールはスタート直後、ターン1のブレーキングで豪快に攻め、インに飛び込んだ。ただ彼は減速しきれずにランオフエリアへとオーバーラン。これにより、7号車トヨタを含め多くのハイパーカークラスのマシンがコース外へはじき出される形になった。この混乱によりトヨタの2台はフェラーリ勢の後ろまで順位を落とした一方、ヴァントールの6号車ポルシェは首位に立ち、その後のレースをリードすることになった。
トヨタ勢はレース序盤、ペースで劣るフェラーリ499Pの2台に引っかかったことでタイムをロス。その間に6号車ポルシェは逃げに逃げ、一時16秒ほどのリードを築いた。しかしフェラーリを攻略したトヨタは持ち前の優れたレースペースを発揮し、ポルシェとの差を縮めた。
6号車ポルシェで中盤のスティントを担当したケビン・エストレは、追いついてきたトヨタ勢を相手に必死の防戦を繰り広げるも、レーススタートから4時間が経過しようとする頃に首位陥落。結果、終盤のドライブを担当したアンドレ・ロッテラーは、優勝したトヨタ7号車から47秒差、2位のトヨタ8号車から8.6秒差の3位でチェッカーを受けた。
ヴァントールはスタートでの出来事を振り返り、善戦するためにはスタートでポジションを上げる他なかったと説明。そして、ポルシェがレースの約3分の2をリードし、3位表彰台を獲得したことを喜んだ。
「今年はずっとスタートを担当しているし、僕は好きなんだ。予選の後、ケビンやアンドレと、トヨタを動揺させるような動きを(ターン1で)しようと冗談を言っていたんだ。彼らと真っ向勝負で戦うことはできないからね」
ヴァントールはmotorsport.comにそう語った。
「スタートでは良い走りができたけど、『やばい、約束を守らなきゃ!』と思ったよ。かなりギリギリだったね。ターン1できちんとエイペックスを回れたクルマは1台もいなかったね……でもそのおかげで良いポジションにつけることができた」
「引き離すことができたのも驚いたよ。フェラーリ勢が攻めてくるんじゃないかと思っていたし、僕がタイヤを使いすぎているんじゃないかとも思った。ただ、あの時点で僕らは良いペースで走れていた」
「最終的にトヨタ勢に抜かれてしまったけど、レースの半分以上をリードできたし、これはかなり期待できることだね」
一時は後続に16秒差までリードを広げた時、優勝の可能性を感じていたか? とヴァントールに尋ねると彼はこう答えた。
「最初の30分は『タイヤを使いすぎているかな?』『みんなはもっとコンサバなのかな?』と思っていたよ」
「でも僕は目標の範囲内だったし、ギャップはどんどん広がっていった。勝機が僕らに向いているように見えた。でも第2スティントでは、トヨタ勢が追い上げてきた」
「あそこまで戦えたのは予想以上だった」
また、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツでマネージングディレクターを務めるジョナサン・ディウグイドは、4月のポルティマオ戦で表彰台を獲得して以来、厳しいレースが続いていた6号車がレースをリードしたことに「とても満足している」と語った。
「夏休みの間、チームがいくつかのステップを踏んできたということを示せた」とディウグイドは言う。
「マシンのメカニカルな面はもちろん、ソフトウェアやタイヤへの理解も進んだと思う」
「特に最初の2スティントでは、それがパフォーマンスに大きく影響していたと思う」
レース序盤のタイヤ選択においても、他陣営に比べて正しい選択ができたという。そのためにリードを広げることができたが、各陣営が使うタイヤが揃ってくるとそのアドバンテージが減ることになり、ポジションを明け渡してしまうことになった。
「我々のエンジニアリンググループは正しいタイヤ選択をした」
そうディウグイドは言う。
「みんながそれに気づいてからはマシン本来のペースが発揮されるようになったが、我々が首位にとどまる上でこれが役立ったと思う」
ディウグイドはまた、6号車ポルシェが早期に1回目のピットストップを行なったことついても説明。曰くスタート時に燃料を満タンにしていなかったためだったという。
「これは手続き上のことで、我々側で解決する必要がある」とディウグイドは言う。
「でも、レース結果に大きな影響はなかったと思う」
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