2021年4月23日、ホンダは新型『VEZEL(ヴェゼル)』の発売開始することを発表した。ついに、ホンダのコンパクトSUVの大本命が、激戦状態の国内コンパクトSUV市場へと舞い降りることとなる。販売計画台数は5000台/月だ。
新型ヴェゼルのコンセプトは「AMP UP YOUR LIFE(生活の楽しさを倍増しよう)」。アクティブで、新しいものにオープンな人々に向け、実用性だけでなくプラスアルファの体験価値を提供したい、という意味が込められており、先代ヴェゼルが備えてきた使い勝手のよさを元に美しいデザインを加え、さらに爽快なドライビングフィールを与えたという。
なんじゃこりゃ!? ホンダの四輪バギーがすげぇ!!! 日本で走れるの??
ご存じのとおり、先代の初代ヴェゼルは、デビュー直後から大人気で、2014年から2019年まで、販売台数ランキングで常に15位以内にランクインしつづけた人気車だ。そのため、新型への期待も非常に高い。本稿では、注目の新型ヴェゼルの詳細スペックを確認しつつ、ヴェゼルは今回の新型でも、先代と同じように成功することができるのか、考察していく。
文/吉川賢一
写真/奥隅圭之、HONDA、吉川賢一
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■25mmも全高を下げ、スタイリングを一新させた
新型ヴェゼルのボディサイズは4330(±0)×1790(+20)×1580(-25)(全長×全幅×全高)mm、ホイールベースは2610(±0)mmだ(カッコ内は同車前型との差分)。全幅がやや広がり、背が低くなっている。ただし、前型ヴェゼルのRSやツーリングとは全幅は同じだ。大きくなったように見えるのは、デザインが大きく様変わりしたことが影響していると思われる。
車両重量は、e:HEV 2WDが1350kg(4WDは1430kg)、ガソリン2WDが1250kg(4WDは1330kg)と、先代よりも80kg近く増えている(先代はハイブリッド1270kg、ガソリン1180kg)。先進安全技術や、質感向上のための車体対策などを織り込んでいった結果というが、スリムな外観に反し、ややメタボにも思えてくる。となると、先代ヴェゼルが持っていた「軽快なハンドリング感」が、どれほど維持されているかは、おおいに気になるところだ。(参考:キックス2WD(1350kg)、ヤリスクロスHV 2WD(1190kg)、CX-30 2WD(1380kg)
新型ヴェゼルがいよいよ発売となる。先代と比べて、サイズは若干ロー&ワイドになった感じだがより大きく見えるのは流れるようなデザインとなったおかげだろうか?
なお、前型にあった17インチホイール(215/55R17)の仕様は廃止となり、16インチ(215/60R16)と18インチ(225/50R18)の2パターンとなった。最小回転半径は変わらず、16インチ仕様が5.3m、18インチ仕様が5.5mとなる。国産コンパクトSUVとしてはやや大きめであり、狭いところでの小回りがいいとは言えない。(参考:キックス5.1m(17インチ)、ヤリスクロス5.3m(18インチ)、CX-30 5.3m(18インチ)
ちなみにタイヤは、18インチがミシュラン「プライマシー」(前型のツーリングと同タイヤ)。16インチがハンコック「KINERGYエコ2」だ。ホンダの開発担当者によると、ハンコックの16インチタイヤは、燃費や乗り心地、操安性能、コスパと、バランスの取れたタイヤだそうだ。
16インチ仕様は、ハンコック製KINERGYエコ2を標準装着する サイズは215/60R16。今までコスパで注目されてきたアジアンタイヤだが、ハンコックは、性能でも日系タイヤと肩を並べるようになってきた
■1.5Lガソリンとe:HEVの2本立て、ターボは廃止に
パワートレーンは、新開発の1.5Lガソリンエンジンと、1.5Lエンジン+2モーターハイブリッドシステムの「e-HEV」、2つの仕様となり、先代にあったVTECターボは廃止となった。
新開発となる1.5L i-VTECガソリンエンジンは、先代よりも出力は下げながらも(129ps/15.6kgfmから118ps/14.5kgfmへとダウン)、先代の素早く元気のあった特性から、リニアで扱いやすい特性へとセッティングを変更、『フィット』で採用された新開発のCVTのギアレシオも、フィットに対してローレシオ化(4.992から5.436)している。
また、ベアリングのフリクション低下や電動油圧ポンプの出力拡大などで燃費を改善、さらには、コーナーで横Gを検知するとエンジン回転を高く保ち、立ち上がりでのスムーズな加速を狙った「ブレーキ操作ステップダウンシフト」など、新型ヴェゼルのキャラクターに合わせて、最適化を図っている。なお、WLTCモード燃費は17.0km/Lを達成する。
●新型ヴェゼル1.5Lガソリンエンジンスペック
・最高出力87kW(118ps)/6600rpm
・最大トルク142(14.5)/4300rpm
・2WDのWLTCモード燃費17.0km/L(市街地12.8、郊外17.7、高速19.2)
e:HEVも、新型ヴェゼルに合わせたチューニングが施されている。モーターのトルクアップのため、バッテリーセル数を増やし(48→60セル化)、IPU(バッテリーと制御装置が一体になったパーツ)を刷新、効率的なレイアウトへと修正している。これによって、フィットのe:HEVに対してモーター出力が向上(109ps/253Nm→131ps/253Nm)、発進時から高速まで、伸びのある加速感が楽しめる。
「ヴェゼル」の売れ筋となるであろう、e:HEV仕様。現行「フィット」と同形式ながら、ヴェゼル専用チューニングによりモーターの出力が向上。キレのある走りが期待できる!
なお、WLTCモード燃費は25.0km/Lを達成、このカテゴリではTOPクラスだ。(参考:キックス(21.6km/L)、ヤリスクロスHV 2WD(27.8km/L)、CX-30 ディーゼル(19.2km/L))
●新型ヴェゼルe:HEVスペック
・エンジン最高出力78kW(106ps)/6000~6500rpm
・最大トルク127(13.0)/4500~5000rpm
・モーター最高出力96kW(131ps)/4000~8000rpm
・最大トルク253Nm(25.8kgfm)/0~3500rpm
・e:HEV X(2WD)のWLTCモード燃費25.0km/L(市街地24.7、郊外27.1、高速23.9)
また、e:HEVに設定された4WDには、4輪へ最適な駆動力配分を行う「リアルタイムAWD」システムを採用した。後輪用のモーターを積むのではなく、オーソドックスなプロペラシャフトを通して後輪へと動力を伝えており、後輪デフ位置に内蔵したクラッチで、2WDと4WDを切り変えるという。後輪へダイレクトに駆動を伝えることで、優れた走破性を狙ったそうだ。
e:HEV仕様には、「リアルタイムAWD」仕様も設定される。電動四駆ではなく、リアデフが存在し、確実に駆動力が伝わる。悪路走破性も向上した模様だ
実際に、簡易モーグル路を試乗させてもらったが、1輪が完全に浮いてしまっても、空転したタイヤのブレーキを制御することで、駆動がすっぽ抜けることはなく、安心感のある乗り味だった。
■エクステリアの細部には空力機能がたくさん
エクステリアで大きく変わったのが、フロントおよびサイドからのシルエットだ。フロントは、初代ヴェゼルのなだらかに傾斜するフェイスから、切り立ったフロントノーズへと変わり、薄目で存在感のあるヘッドラライト、ボディと同色のグリルなど、旧型ヴェゼルとは明らかにコンセプトを変更してきた。サイドシルエットは、フロントフェンダーからテールランプまでつながるラインによって、清潔感のあるデザインとなっている。
ルーフ後端から大胆にカットし、大きく寝かせたバックドアによって、トヨタ『ハリアー』やマツダ『MX-30』のようなクーペライクなSUVへと大変身させてきた。全長は変更していないそうだが、伸びているように見えるデザインだ。リアは、左右連結タイプのテールランプが特徴的。そのテールランプは、小さなチップが集まったような模様を織り込んだデザインが新鮮だ。
全長は先代と同一ながら、よりクーペ感の強調されたスタイルに変貌し印象が変わった。バックドアが寝かされたデザインにより、伸びやかなフォルムとなっている
設計担当エンジニアによると、エアロダイナミクスには相当こだわったという。例えば、フロントグリルサイドにあるインテークから取り入れた気流を、フロントタイヤの前側から出し、フロントタイヤが巻き起こす空気の乱れを整える、エアスクリーンとして機能させているという。欧州車やスポーツカーが採用している流行の技術だ。また、サイドシルの後端にある形状も工夫し、リアタイヤ付近の気流を整えているという。
さらには、ボディ表面を流れてきた空気が剥がれる際に起こる「空気の渦」を、できるだけ車両後方に飛ばすための、工夫も織り込まれている。ルーフ後端や、テールランプに付いた段差が、その役割を担っているそうだ。「神は細部に宿る」と言われるように、新型ヴェゼルには、見せない部分へも技術のこだわりが、ふんだんに織り込まれている。こうした積み重ねが、WLTC燃費25.0km/Lの達成に貢献しているのは間違いないだろう。
予約クローズ機能付のハンズフリーパワーテールゲート。キーを持ったユーザーがクルマから1m以上離れると、自動でゲートが閉じてロックをする設定だという
■欧州の香りがするインテリア リアウィンドウには「隠しヴェゼル」も!?
インテリアは、部分的にソフトパッド化されたインパネやダッシュボードの質感が増し、ワンランク上のクオリティを感じさせる。ステアリングホイールやメーターデザインも、一時期のホンダのインテリアに多かった青々としたド派手なものから脱皮して、欧州車のような雰囲気だ。9インチのナビゲーションモニターも、もっとも見やすい位置に鎮座しており、非常に操作しやすい。
エアコン吹き出し口のセレクター。前席乗員に当たらないように、サイドウィンドウに沿って空気が後席に届く 空気の膜を作るイメージだという
上級グレード「PLaY」に採用されたパノラマルーフ。「Low-E」という熱を放射する層が入れ込まれており、真夏の強烈な日差しでも、車内は熱くなりにくい
PLaYの後席側ルーフには、はめ込み式のカバーが付いている。カバーを外すという仕様が受け入れられるか・・・。ちなみにフロント側は巻取り型のシェードとなる
エンジニアの遊び心も、デザインには織り込まれている。同社の「Nシリーズ」のN-WGNなどには、某テーマパークの「隠れ○ッキー」のように、クルマのどこかに「N」という文字が隠れているが、この新型ヴェゼルにも「隠しマーク」が仕込まれている。ひとつは、リアウィンドウの下側に、コンセプトである「AMPマーク」と「ヴェゼルのシルエット」があった。さらに、PLaYグレードにはもう一カ所ある。そこはぜひとも実車を見て探してみてほしい。
リアウィンドウの下側に、コンセプトである「AMPマーク」と「ヴェゼルのシルエット」の隠しロゴを見つけた
なお、コネクティッド機能も新世代に進化、「HONDA Total Care プレミアム」として登場した。いくつかの機能があるが、我々がお世話になる頻度が高いのは、自動地図更新サービス、車内Wi-Fi、緊急サポートセンター、といったところだろう。ただし、有料のサブスクリプションになるという。自身の使い方を考え、課金する価値があるのか、その必要性を考えてみるのがいいだろう。
■上級移行したヴェゼル、新しいエントリーSUVを期待!!
グレード構成は、「ガソリンG(2WD/4WD)」、「e:HEV X(2WD/4WD)」、「e:HEV Z(2WD/4WD)」、そして最上級の「e:HEV PLaY(2WDのみ)」の7グレード。税込みの車両本体価格は、ガソリン車が約227万円~、e:HEVが265万円~となる。先代だと、ガソリン車が約211万円~、ハイブリッドは約250万円~であったことから、およそ15万円は価格アップしている。
このベース価格のアップによって、新型ヴェゼルには、魅力的な新アイテムが多々装備されることとなり、先代ヴェゼルのユーザーにとっては、とても魅力的に映るだろう。新型ヴェゼルが、再び成功を収める可能性は高いと思われる。
フィットから始まったクリーンで明るいインテリアをヴェゼルも踏襲。ヴェゼルとしてのこだわりの装備も満載で、ホンダがこのクルマに込める思いと期待を感じる出来だ
だが、新型が明らかに上級移行したことで、先代が担っていた、気軽に乗れて、使い勝手がめちゃくちゃいい「ホンダのエントリーSUV」としての立ち位置がやや薄れてしまった。ここはぜひ、ホンダのエントリーSUVとなる新たな「プチSUV」も見せていただきたい!!
新型ヴェゼル 価格表。先代より総じて15万円アップの価格。価格のみでは語れないが、BセグとCセグSUVの中間狙い・・両方の顧客層をターゲットにした価格設定といったところか
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みんなのコメント
ホンダも落ちぶれたな
オレの感覚が古いのか
最近のホンダ車のフロントグリルは
どうしても馴染めない
このヴェゼルに至っては
もはや好き嫌いではなく
乗るのが恥ずかしいぐらい