2001年生まれのオーナーが乗る1992年式初代「ロードスター」
世の中が「バブル」と呼ばれ、今からは想像もできない好景気に沸いていた1989年。ライバルと肩を並べたいマツダは販売系列店の増加を目指して、マツダ5チャンネル化を推進していた。その中で誕生した最高峰ブランド「ユーノス」から発売されたのが、「ロードスター」(初代NA型)だった。FR駆動によるライトウェイトスポーツのオープンカーは、世界的に大ヒットし、結果的に生産終了となる1998年までの10年間で、全世界で約42万台も販売されたのだ。この真紅の「ロードスター」のオーナーは、22歳のミレニアム世代。もちろん愛車が生まれた頃の時代は未体験だが、人生初めてのマイカーとして、いきなりこの愛車を手に入れたのだ。
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気づいたら憧れていたカタログの中の赤いクルマ
2001年生まれの吉村旭陽さんが、就職してお金を貯めて購入した初めての愛車が、この1992年式のマツダ「ロードスター」だ。愛車のテーマは「カタログに登場する赤いNA」。彼は、できるだけカタログの仕様に近づけるという方向性で、愛車生活を楽しんでいるそう。
「なぜ僕がこの初代ロードスターが好きになったのか、じつはその明確なきっかけが思い出せないんです。でも、高校生の頃にはすでに、赤いロードスターが欲しい! と思い始めていて、頭の中はそれしかありませんでした。だから、卒業後に就職してからは、愛車購入のための資金作りに専念し、ようやく2022年5月にこの車輌を手に入れたのです。このタイミングはすでに車両の価格も上がっていたので、早く手に入れようと頑張りました(笑)」
こうして手に入れた憧れの赤い「ロードスター」だったが、決して程度は良いものではなかった。しかし、「本当の意味でのカタログ仕様に近づけたい」という思いを胸に、少しずつ修理を開始。撮影させてもらった実車の美しさに感動するが、ここまで辿り着くまでには、やはり相応の資金力が求められたのは言うまでもない。
「テールランプのガスケットがボロボロになっていたことで、トランクに水たまりができたこともありました。またこの車種にはつきものの、幌のビニール窓の交換。ほかにもヘッドガスケットを交換するなど、自分が想像した以上に購入後の手直しはいろいろ経験しました」
できる限りノーマルへと戻すのが吉村さんのこだわり
「購入した時点で、外装関係は前オーナーがこの赤へと再塗装してくれていました。ホイールもこの純正でした。ありがたいことに外観は問題なかったので、最初に僕が手を入れたのは、カーナビとかETCといった不要な装備を外すことでした」
不要な装備? カーナビやETCが? インタビュー中、一瞬自分の耳を疑ったが、吉村さんによれば、
「便利グッズはいらない。それよりも、とにかくカタログに乗っているあの完全なノーマルのスタイルを追い求めたい」
とのこと。彼にとって、ノーマルこそが完成された究極の美しさ。そのため、この愛車が生まれたままの姿に留めることが正義であり、どれだけ便利で優れた装備でも、それらが非純正品であれば全て取り外しの対象になる、ということ。音楽などが聴けないのは不満なので、最終的にはオーディオのみブルートゥース対応のデッキへと変更しているが、そのルックスもできるだけノーマルの雰囲気を崩さないように注意したそうだ。
世代を超えて多くのクルマ好きに愛される初代ロードスターの魅力
ここまで徹底してノーマルのスタイルにこだわる吉村さんにとって、その魅力とは何なのだろう?
「クルマのデザインが、とてもシンプルだけど完成されていると思うんです。フェンダーからボディへの流れ方とか、丸いテールランプ。それとボディは曲線イメージなのに、ダッシュボードは真っ直ぐという対照的な感じとか。とにかく、この全体のスタイルが好きですね。僕にとっては、なんとも言えないバブル時代特有の雰囲気が感じられる純正の姿に、魅力を感じるのです。自分で経験したわけではないので、バブルに対してはイメージでしかわかりませんが。良い時代だったんだろうなという憧れもあります(笑)」
吉村さんが感じているユーノス ロードスターに対しての感想は、じつは彼特有の意見ではなく、世の中のクルマ好きの多くが、無意識に思い描いている姿なのかもしれない。旧き佳きあの時代のデザインがカッコイイということではなく、あの当時からカッコよかった。だからこそ、世界的な大ヒットにも繋がったのではないだろうか。
吉村さんがこの愛車で出かけると、知らない人から声をかけられることが多いそうだ。吉村さんいわく、「おじさんに好かれるクルマ(笑)」とのことだったが、ロードスターには、声をかけたくなる魅力と気軽さが詰まっているのだ。
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みんなのコメント
それでもマツダは新型のロードスターをリリースし続けて、ユーザーに応えてきました。
「たくさん売れなかったから生産終了」としなかったのはその車を購入したユーザーへの感謝やお礼であり、自動車メーカーとしてのその姿勢はこれから先も続いていくと信じています。