「課題が見えたレースでしたね」
11月6~7日にツインリンクもてぎで開催されたスーパーGT第7戦『MOTEGI GT 300km RACE』の決勝終了直後、ポールポジションから2位でチェッカーを受けたTGR TEAM WedsSport BANDOHの坂東正敬監督はそう語り始めた。
2台の一騎打ちは劇的な幕切れ。ファイナルラップで首位カルソニックがスローダウンし、ARTAが逆転優勝【第7戦GT500決勝レポート】
公式予選で2021年シーズン2度目のポールポジションを獲得した19号車WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/宮田莉朋)は決勝序盤からレースをリードし、2016年の第7戦タイ以来となる5年ぶりのポール・トゥ・ウイン獲得へ向け快調な走り出しを見せた。しかし、11周目、そして15周目に導入された2度のフルコースイエロー(FCY)が戦局を一変することになった。
「20周目くらいまでいい感じで走れていたのですが、FCYが入りタイヤが冷えて、なおかつピックアップ(タイヤカスがタイヤ表面に付着してグリップダウンを招く現象)も……。あれがなければあの後もコンスタントに走れていたと思うのですが」
2度目のFCYが解除された16周目、トップのWedsSport ADVAN GR Supra国本と2番手の12号車カルソニック IMPUL GT-R松下信治のギャップは0.4秒まで接近。2台はテール・トゥ・ノーズの戦いを繰り広げるなか、WedsSport国本はFCY導入中に冷えたタイヤへの熱入れ、そしてピックアップを除去するべくウイービングを繰り返す。しかし、21周目の第2コーナーでカルソニック松下がインからノーズを差し込むと、2台は並走しながら第3コーナーへ。首位を守るべくイン側をキープした国本だったが、ブレーキングで松下が先行し、2番手にポジションを下げてしまう。
その後も背後に迫るARTA NSX-GT福住仁嶺からの猛追を抑えつつ、25周目にピットイン。WedsSport ADVAN GR Supraはステアリングを宮田莉朋に代わり、ピット作業も36.1秒という素早い静止時間でコースに復帰するも、コールドタイヤでは1周早くピットを終えていたARTA野尻智紀を抑えることは叶わず、3番手にポジションを落としてしまった。
「FCYの導入は、しかたがないことだと思います。ですので、ああいう状況でも幅広く対応できるタイヤにしていかないと、という課題が見えたという感じです」
「硬めのタイヤでのスタートから国本が12号車を抑え続けたのは本当に素晴らしいと思います。後半を担当した(宮田)莉朋も40周近く、前と後ろのクルマのタイムを聞きながらペースをコントロールして。ライバル勢のペースが下がってきたときにチャンスがあるかないかを見極めようという感じだったので、そういう彼の引き出しも素晴らしかったと思います」
「そしてテストで開発してきた、1分41~43秒というペースからドロップしないタイヤの成果も大きかったですね」
中盤以降、3番手にポジションを下げたWedsSport ADVAN GR Supra宮田は、背後に迫る4番手Astemo NSX-GT塚越広大を抑えてファイナルラップに突入した。そんななか、トップのカルソニック IMPUL GT-Rにガス欠症状が発生。WedsSport ADVAN GR Supra宮田は、スローダウンし2番手にポジションを下げたカルソニック IMPUL GT-Rをチェッカーライン直前でかわすと、今季最高位タイとなる2位でチェッカーを受けた。
「正直、ポール・トゥ・ウインを狙っていたので、言い方は悪いですが、FCYがなければ勝っていただろうと思っています。だけど……そればかりは言ってもしかたがないことです」
「最後、後ろから17号車(Astemo NSX-GT)が来ていて、こっちとしては『3位で頼むぞ! 表彰台に上がるぞ!」というなかで、2位になれたというラッキーな部分もありますし……微妙ですよね」と、公式練習の不調からポール獲得、そしてチェッカー直前で2位浮上という浮き沈みの多かった週末を振り返る。
「ただ、年間8レースしかないスーパーGTで2度ポールを獲り、2度の2位表彰台に上がれたのは、チーム力がついているからだと思います。だから今回も、『ヨコハマ勢は落ちてくるだろう』と思った方もいるかもしれませんが、強いところは強いんだということはしっかりと見せることができたかなと。そういう部分では、ヨコハマタイヤとともにチャレンジャーとして、他メーカーと戦ってポール、そして2位という結果を出すことができたのはひとつの大きな成果だと思います」
「ただ……前回も2位だったので『また2位かよ!』というのはすごくありますよ。でも、それ(2位)は最低限になっているので」と、シーズン2度目のポールポジション、そして2度目の2位獲得でチーム力が上がっていることへの嬉しさと、2016年の第7戦タイ以来の勝利を手にすることができなかった悔しさが入り混じる複雑な思いを語った坂東監督。
11月27~28日に控える2021年シーズンの最終戦『FUJIMAKI GROUP FUJI GT 300km RACE』は、WedsSport ADVAN GR Supraが第2戦でポールを獲得した富士スピードウェイが舞台となるが、「TGR勢のなかで最終的にシリーズ何位になれるのかという戦いもあります。1ポイントでも多く取ってシーズンを終えたいですね」と坂東監督は控えめな展望を語った。
ドライバーズランキングで9位、チームランキングで7位につけるWedsSport ADVAN GR Supraは、36号車au TOM’S GR Supra(関口雄飛/坪井翔)、14号車ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)に続くトヨタ/TGR勢3番手で最終戦を迎える。また、2016年シーズンに記録したシリーズ4位という成績を越える可能性もまだ残されている状況だ。
今回のもてぎで明らかになったように、これからの季節は今まで以上にタイヤのウォームアップ性能の重要度が増すことから、最終戦はスタート直後やピットアウト時、そしてFCY解除後の走りがますます注目されることになる。そして、WedsSport ADVAN GR Supraとしては得意のもてぎやタイ以外での好結果を残したいところだ。最終戦富士では、第2戦で見せたポールポジションの再現はなるか、そして5年ぶりの勝利に挑むことになる。
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