マニュアルでサーキットを走りたい要望が多い
近年は何でもオートメーション化されているが、その昔は手動だった。クルマでいうならば、手で回さないと開閉できないクルクルウインドウがパワーウインドウになり、微調整をして温度管理したエアコンは、”AUTO”にしておけば最適な温度を保ってくれる時代だ。
街乗り時々サーキット、FF最速のDNAを持つ「ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー」日本上陸
変速機も同じこと。80年代になってオートマ(AT)車が急激に普及したことで、マニュアルトランスミッション(MT)のクルマは消滅。そんな2ペダル全盛の時代に、日本上陸を果たした「ルノーメガーヌR.S.トロフィー」にはEDC(2ペダル式自動変速機)の他に、MTが設定されていた。
日本自動車販売協会連合会によれば、2016年の乗用車新車販売の約98.4%がAT車などの2ペダル車。ひと昔前のオートマといえば、加速力が鈍くシフトショックが大きく、乗りにくいイメージだったが、技術の日進月歩で性能が高まり、2つのクラッチ機構を持つ”DCT”などは、MTでは実現できない素早い変速が可能となっている。
自らギアを選択して走るよりも、CPU制御に任せた方が燃費にも有利。これはスポーツ走行においても言えること。左足でクラッチを踏む動作がないため、前述のようにギアチェンジのタイムロスが極めて少ないのでラップタイムが向上するメリットもあるのだ。
すでにサーキット指向なピュアスポーツモデルが多いランボルギーニやフェラーリは、とうの昔にマニュアル・トランスミッションを廃止。そんななか、ルノーはスポーツモデルのメガーヌR.S.トロフィー(MTモデル)を日本市場へ導入したのだろうか。
この素朴な疑問にルノー・ジャポン マーケティング部 商品企画グループ チーフプロダクトマネージャーのブレン・フレデリックさんに聞いてみた。
「現在、カタログモデルにあるメガーヌR.S.との大きな違いは、R.S.トロフィーは街中でも楽しく、クローズドコースでも思う存分性能を発揮するクルマということです。サーキットでタイムを競うならギアの繋がりいいEDC(2ペダル式自動変速機)の方が速いのですが、まだまだマニュアル(MT)でサーキットを走りたいという日本のお客さまが多いのは事実。そんな貴重な意見を反映して導入を決めたのです」。
続けて「スポーツカーだからこそサーキットのようなステージではでクルマを手足のように操る楽しさを得たい、という方が多いからですね。HパターンのMT操作は、絶対的な速さにつながらなくても、エンジン音を聞いてギアを変えたり、クラッチが繋がる感覚やリズムなど五感で感じる要素があるからこそ、楽しむことができるからです。フランス本国でもAT車の比率が高いですが、それでも圧倒的にMT車の方が人気ですね」と語る。
便利になりすぎた時代。つまり、現代人が求めているのは、昔ながらの無駄な動作や浪漫なのかもしれない。実際にドイツ車からの乗り換えも多く、販売台数は好調だとブレンさんは言う。しかも、だ。EDCとMTの導入台数比率は7:3から6:4へ増えたというのだから多くの人が注目していることが頷ける。
速いクルマは数多く存在するが、実際にドライバーが運転をしているという意識を忘れてしまえるくらい夢中になって走れるクルマはそう多くない。確かに渋滞の場面では、左足をせわしなく動かす必要はあるものの、”面倒くささ=ドライビングの楽しさ”と捉えれば苦行も乗り越えられる、と思うわけだ。
ちなみに、フランス本国では1周約20kmのドイツ・ニュルブルクリンクでFF市販車最速を叩き出した、メガーヌR.S.トロフィーRという超ホットなモデルがデビューを果たしている。一体どんな味付けになっているのか、こちらの日本導入も楽しみだ。
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