ほぼ見た目だけが違うクルマの場合ディーラーの距離で選ぶ
クルマには、販売チャネル分け、あるいは協業によって生まれた兄弟車(OEM車)がある。たとえばトヨタのルーミー/タンクとダイハツのトールがそうだ。このクルマたちは、ダイハツが企画、開発、生産を担う、両側スライドドアを備えた背高容量系コンパクト。最大の売りはダイハツ軽自動車造りのノウハウを生かしたパッケージングとラゲッジの使い勝手だ。トヨタ版とダイハツ版は基本パッケージ、パワートレイン、基本装備などは一緒。しかし、エクステリアデザイン、微細の装備展開、ボディカラーにそれぞれ特徴を持たしている程度の違いである。
同様に、日産セレナとスズキ・ランディの関係もそんな感じだ。
こうしたクルマの場合、トヨタ派、ダイハツ派、日産派、スズキ派……というのもあるだろうが、ディーラーが近いところで買うのもひとつの方法だ。のちのち、メンテナンス時などで利便性が効いてくる。自宅からトヨタのディーラーは果てしなく遠いが、ダイハツのお店はすぐ近くにある、なんていう場合である。
しかし、兄弟車とはいえ、キャラクター、装備にけっこうな違いがあるクルマもある。まずは日産と三菱の共同開発車である、新しい日産デイズと三菱ekワゴンだ(新型は日産が開発。生産が三菱)。
プラットフォーム、パワートレイン、先進安全装備(日産はプロパイロット、三菱はMI-パイロット)に違いはないものの、日産デイズにある、日産コネクトナビの装備で可能になる、あおり運転などの緊急時に役立つオペレーターサービスやSOSコールは、三菱側には用意されない。個人的な感想として、より魅力的なツートーンのボディーカラーが揃うのもデイズのほうではないだろうか。
さらに、標準車同士ならともかく、カスタム系のデイズ・ハイウェイスターとekクロスになると、違いはより鮮明になる。デイズはセレナとセレナ・ハイウェイスターのように、標準車とエアロ系の違いでしかないのに対して、ekワゴンとekクロスは完全に別キャラ。ekクロスは三菱らしいクロスオーバーモデルとして独自の存在感を放っているではないか(最低地上高に違いはない)。
ゆえに、カスタム系を狙うなら、好みが完全に別れるはず。スタイリッシュ系が好みならデイズ・ハイウェイスター、4WDを選び(2WDとはリアサスが違い、乗り心地がいきなり硬くなるが)、クロスオーバーの雰囲気を楽しみたいならekクロスで決まりである。
ちなみに、同機能を持つ高速道路同一車線運転支援技術のプロパイロットとMI-パイロットだが、デイズはハイウェイスターのプロパイロットエデイションのみの設定(つまり、標準車に設定なし)。が、ekワゴン(標準車)/ekクロス(カスタム系)ではどちらにも設定グレード(ekワゴンG、ekクロスG/T)があるのが大きな違い。「カスタム系は肌に合わない、しかし、高速道路同一車線運転支援技術は欲しい」となれば、現時点ではekワゴンの選択になる。一方、オペレーターサービスやSOSコールに安心を求めるのであれば、デイズが買いである。
そのほかにも、ダイハツ・ウェイクとトヨタ・ピクシスメガ、ダイハツ・キャストとトヨタ・ピクシスジョイ、ダイハツ・ブーンとトヨタ・パッソ、トヨタ・カムリとダイハツ・アルティス、スズキ・ソリオと三菱デリカD:2……など、じつは、バッジ違いで中身ほぼいっしょの兄弟車(OEM車)は各自動車メーカーで数えきれないほどあったりする。
装備がほぼ同じでも走りの「味」が違うモデルも存在
ここまでの兄弟車間では、走行性能や燃費性能に関しては変わらない、変わりようがない、と言っていい。が、兄弟車でも、走りに独自性を持たせているクルマがある。その代表例がトヨタとスバルが共同開発したトヨタ86とスバルBRZだ。そう、スバルの水平対向エンジンを積み、スバルの工場で生産される、ある意味、ライバルともなる2台である。
もちろん、パッケージ、パワートレインに違いはない。が、走行性能の考え方はけっこう違う。それを象徴するのが足まわりとパワーステアリングの設定(制御)で、初期モデルの86はキビキビ感と曲がりやすさ、ドリフトやテールスライドのしやすさが命。しかしBRZはより万人向けの、スバルらしいより落ち着いた操縦性、リヤが一段とふんばる、限界点の高い安定志向の特性に振っていた、という違いがあったのである。
ただし、最新モデルを比較すると、両車の距離は縮まっている。つまり、年次改良による両車の乗り心地の向上に加え、とくに86は依然、スポーティな走りの楽しさを持ちつつ、初期型とは異なる、BRZに近い落ち着いた操縦性を合わせ持つように改良、進化しているのだ。
ハチロクファン、スバリストならともかく、どちらにしようか悩んでいる86とBRZの選択に関しては、ぜひ、両車をしっかり試乗し比べてから購入すべきだろう(ディーラーの近い、遠いは、この際、無視すべき)。ソロドライブ中心で、サーキット走行もしたい、というなら86、普段使い中心で、オールマイティーにスポーツカーを乗りこなしたいならBRZがいいかも、である。
そうそう、共同開発車にして別物の2台としてデビューしたのが、新型トヨタ・スープラとBMW Z4だ。プラットフォームやパワートレーンは同じでも、スープラはピュアスポーツカー、オープンモデのZ4はグランツアラーというキャラクターだ。
トヨタ・スープラとBMW Z4が共同開発車であることなど、詳しい事情を知らなければ、デザインを含め、まずわからない日独の2台である。
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