この記事をまとめると
■走行性能面ではメリットが大きい4WDだが市販車レベルでは特別なモデルと思われている
背高でも凄い! レーシングドライバーが納得する「走り」をもつ現行SUV5選
■すでに500馬力以上のスーパースポーツのカテゴリーでは4WDが一般的になりつつある
■電動化が進み4輪駆動力制御が高度化すれば4WDがいま以上に当たり前になるだろう
最初は4WDの悪路走破性に注目された
自動車の走行性能面で4WDがあらゆる面でメリットが大きいことは常識となった。しかし、市販車(とくに乗用車)レベルでは、まだまだ特別な仕様とされていたり、設定すらされていなかったりする。雪国向けの寒冷地仕様などと同じように、4WDモデルは滑りやすい路面状況にのみ効果が得られる装置だと認識している面が、メーカー側にもユーザー側にも根付いてしまっているようだ。
もちろん、4WDが誕生した理由は、悪路での走破性が2WDより優れているからで、誕生初期は特別な駆動方式だった。前後のアクスルにデファレンシャル装置を備え、その間を大きなプロペラシャフトが結ぶ。前後アクスルを直結してしまうと前後車軸間の内輪差を吸収できず、旋回時にブレーキング現象が発生してしまう。そのため、普段は2輪駆動で走り、悪路を走る時だけトランスファーを操作して4WDとするような仕組みのものが多かった。この手間と舗装路での小まわり性の悪さなどが、悪路専用装備として4WDシステムを位置付けてしまったのだろう。
しかし、1980年にアウディ・クワトロがセンターデファレンシャルを装備するフルタイム4WDの「クワトロシステム」を登場させると、自体は一変する。常時4WDとすることで切り替え操作の手間をなくし、またセンターデフが装備されて旋回時のブレーキング現象も解消されたのだ。その結果、アウディ・クワトロは世界ラリー選手権(WRC)で大活躍し、4WDでなければ勝てないという時代を切り開く。現在もWRCを闘うトップカテゴリーは4WD車だ。
クワトロシステムが証明した4WDの優位性に世界中の各社が注目し、その後多くのスポーツモデルが4WDを採用することになる。
いまや舗装路でも4WDの優位性が認められている
500~600馬力といったハイパワーが当たり前となった現代のスーパーカーも、その多くは4WDシステムを採用している。ランボルギーニは全モデルで4WDをメインに車種展開しており、またフェラーリも4WD化を進めている。メルセデスAMGも4WDが主流となっているし、ポルシェも同様の傾向にある。4WD化することでトラクション性能が2WDの2倍となり、ハイパワー化した現在の動力性能を担保するには4WD化は不可避となっているのだ。
ただ、サーキットでのレースを闘うモータースポーツのカテゴリーでは、4WDは余りに高性能過ぎて禁止されてしまっている。そのため、スーパーカーメーカーもレース車のベースモデルとして2WDを残している。
では、より一般ユーザーにとって身近な乗用車ではどうだろう。やはり4WDの効果は大きく、多くのモデルが採用している。しかし、非降雪地域の乗用車としては2WDが主に選択されている。完走舗装路の操縦安定性、ウエット路面での安定性、緊急回避などの操縦性などあらゆる場面で4WDは優れた走行特性を示すことがわかっているが、それでも2WDを好むユーザーが実際は多い。
コンパクトカークラスでもFFの2WDモデルを4WD化すればプロペラシャフトやリヤデファレンシャルの追加装備が必要だ。加えてセンターデフやトランスファーシステムも必要。さらに電子制御のプログラムの適合など大きな手間がかかってくる。重量にすればヤリスHV(ハイブリッド)で90kgの増加。価格も20万円ほど高くなる。軽自動車のホンダN-BOXでも60kgの重量増加と15万円程度の価格上昇を伴ってしまう。それでも寒冷地、降雪地域では生活必需品として、また安全安心の保険として4WDが積極的に求められている。
重量が重くなることで、燃費数値が悪化することはあるが、実用的に問題となるレベルとは言えない。駆動力が有効に発揮されることを考えれば、通年レベルでの燃費はむしろ向上しているかもしれない。また、重量増加は運動性能にも影響を与えるが、その増加分は主に車体フロア下で低重心化に貢献する。発進・旋回加速場面では4WDがより有利である。総合的に考えれば4WDが標準化される意義は十分にあると言えるのだ。
実際、電動化が進み、より低速トルクが高まり、4輪駆動力制御が高度化すれば4WDが当たり前になってくるだろう。今は、そうした面でも過渡期にあるといえるのだ。
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みんなのコメント
加速だけに意識が行きがちだが
減速時もエンジンブレーキが全輪にかかるから
加減速にメリハリが効いて面白いんだなぁ