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なぜ日産はフォーミュラEに参戦するのか?──キーマンに大谷達也が直撃!

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なぜ日産はフォーミュラEに参戦するのか?──キーマンに大谷達也が直撃!

「これって何かのつじつま合わせじゃないの?」

フォーミュラEに関するルノーと日産の発表を聞いた私は、そんな疑念を拭いきれずにいた。

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専用の電動フォーミュラカーで全世界を転戦する未来派モータースポーツのフォーミュラE。ルノーは、2014年から2015年にかけて開催されたシーズン1からフォーミュラEに参戦し、これまで4シーズン中3度タイトルを勝ち取った名門中の名門である。

そんな彼らが、先日閉幕したシーズン4限りでフォーミュラEから撤退。そのあとを引き継ぐような形で、日産がシーズン5からフォーミュラEに参戦する。日産の元会長であるカルロス・ゴーン逮捕のニュースが相変わらず世間を賑わせているが、フォーミュラEにまつわる決定も「ゴーン元会長らによる日産の不当な締め付け」を象徴する動きのひとつと捉えるのは、うがった見方というものだろうか?

2018年11月30日、日産のショールームである銀座クロッシングでフォーミュラE参戦記者会見が催され、そこで私は同社の常務執行役員でモータースポーツ活動を統括する立場にあるルー・ドゥ・ブリース氏らにインタビューする機会を得た。千載一遇のチャンスとはまさにこのこと。私はドゥ・ブリース氏に自分が抱く疑問を正直にぶつけてみた。すると彼は次のように答えたのである。

「私たちがフォーミュラEの参戦について議論したのは日産のエグゼクティブ・コミッティー(経営会議)においてでした。ここでルノーとは関係なく、私たち独自の判断でフォーミュラEへの参戦を決定しました。私たちがルノーと議論を始めたのは、そのあとです。ルノーは私たちのアライアンス・パートナーであり、フォーミュラEで大きな成功を収めているので、彼らに参戦形態などについて相談するのは当然のことでしょう。そこで議論を重ねるなかで、ルノーもまた独自の判断でフォーミュラEからの撤退を検討しているのが明らかになったのです。そうしたなかで、私たちの参戦体制が固まっていったのです」

この話が真実かどうかは別にして、フォーミュラEに参戦しようとする日産にとって、ルノーの撤退は都合のいいことでもあった。なぜなら、ルノーはフランスの名門レーシングチームである「DAMS」の傘下にある「e.dams」と協力しフォーミュラEに参戦していたが、ルノーの撤退によってe.damsはパートナーを失う格好になる。日産はその後釜に収まったばかりか、チームの株式まで購入。創設者のジャン-ポール・ドリオと共同でe.damsを所有するに至ったのだ。

「これは日産が、フォーミュラEに長期的に取り組んでいく姿勢のあらわれといえます」 そう語るのは、日産のグローバル・モータースポーツ・ディレクターであるマイケル・カルカモ氏だ。

「おかげで、私たちは『e.dams』と興味深い関係を築くことができました。日産は彼らとともにレースを戦うだけでなく、その組織作りにも関与しました。たとえばチームのリザーブドライバーに日本人の高星明誠選手を起用し、シミュレーション・ドライバーに日産と縁の深いヤン・マーデンボロー選手を起用しました」

では、どうして日産はフォーミュラEへの参戦を決めたのか? 再びドゥ・ブリース氏が答えてくれた。

「私たちのもとには、世界中のファンから『いつになったら日産は、グローバルなレースシーンに帰ってくるんだ?』との問い合わせが何年にもわたって届けられてきました。そんなファンの皆さんの期待に応えることが、フォーミュラEに参戦する理由のひとつです。いっぽうで、EVに対する関心を高めるのも理由のひとつです。EVはAからBに移動する便利で環境に優しい乗り物だけではありません。私たちにとって、EVは未来のテクノロジーであり、クルマをよりエキサイティングな乗り物にするのに役立つと考えています。そういったことを理解していただくのに、フォーミュラEはまたとないプラットフォームだといえます」

ドゥ・ブリース氏が言いたいことはよくわかるが、フォーミュラEがいくら世界12カ国を転戦するグローバルなレースシリーズだとしても、日本での認知度はまだまだ低いのが実情ではないか? そう問いかけると、今度はカルカモ氏が語り始めた。

「もしもアナタの質問が『日産は日本でフォーミュラEを開催したいと思っているのか?』といった意味であるなら、その答えは“イエス”です。フォーミュラEの開催は、日本にとってもフォーミュラEにとっても重要であると私たちは考えています。難しい問題が色々とあるのは承知しています。けれども、信じてください。私たちはオープンに思考し、議論を進めることをお約束します」

フォーミュラEの一般的な認知度が高くないのはドゥ・ブリース氏も認識しているという。

「たとえば野球やサッカーのスポンサーになったほうが、自分たちのブランドを広く露出するには有利でしょう。しかし、私たちがなぜ野球チームのスポンサーになるのか? なぜ私たちがサッカー・チームのスポンサーになるのか?を、ファンの方々に理解してもらうのは簡単ではありません。いっぽう、フォーミュラEに参戦しても、野球やサッカーに比べて露出の機会は少ないかもしれませんが、日産のストーリーとしてははるかに理解していただきやすいものになります。つまり、私たちの企業活動とフォーミュラEはダイレクトに結びついているのです。とりわけ、私たちが掲げる“インテリジェント・モビリティ”のビジョンとフォーミュラEは深く結びついています。各国のディーラー、ウェブサイト、さまざまなイベントを通じ、世界中にその活動を発信できます。だからこそ、私たちはフォーミュラEを選んだのです」

最後に、フォーミュラEの初年度にかける意気込みをドゥ・ブリース氏に訊いた。

「もちろん、勝ちたいと思っていますが、レースの世界で確実なものはなにひとつありません。ただし、コンペティティブな戦いであって欲しいとは願っています。そして見応えのあるエキサイティングなレースにして、私たちのモータースポーツに対する情熱を世界中の皆さんに示したい。そのうえでファンの方々に喜んでいただけたら、これほど嬉しいことはありません」

フォーミュラEのシーズン5開幕戦はサウジアラビアのリヤドで12月15日に開催される。日産の活躍に注目だ。

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