この記事をまとめると
■スーパー耐久には新型Zをベースに開発された「Nissan Z Racing Concept」が参戦している
新型フェアレディZの型式は「Z34」のまま! フルモデルチェンジでも型式が変わらない「謎」に隠れた「日産の良心」
■Nissan Z Racing ConceptについてNISMOで車両開発を統括する石川裕造氏を直撃
■ステアリングを握るドライバーにもインプレッションを聞いた
新型Zが量産車そのままでレースに参戦
スーパー耐久のST-Qクラスは「他のクラスに該当しない、STOが認めた開発車両」ということもあって、数多くの自動車メーカーが次世代を担うコンセプトモデルを投入。
ORC ROOKIE RACINGが水素エンジンを搭載した32号車「GR Corolla H2 concept」やカーボンニュートラル燃料を使用した28号車「GR86 CNF Concept」を投入するほか、スバルを主体としたTeam SDA Engineeringが61号車「BRZ CNF Concept」、マツダを主体としたMAZDA SPILIT RACINGがバイオディーゼル燃料を使用した55号車「MAZDA2 Bio concept」を投入。
さらにブレーキメーカーのエンドレスのワークスチーム、ENDLESS SPORTがメルセデスAMG GT4に自社開発のブレーキユニットをインストールした3号車「ENDLESS AMG GT4」を投入するなど、まさに未発売の開発モデルが参戦しているが、そのなかでもっとも注目を集めているマシンが新型Zをベースに開発された「Nissan Z Racing Concept」だと言えるだろう。
同マシンのデビュー戦は第2戦の富士24時間レースで、NISMOがカーボンニュートラル燃料を使用した230号車を投入したほか、Max Racingがガソリンを使用した244号車を投入。残念ながらNISMOの230号車は富士24時間レースのみの参戦だったが、Max Racing の244号車はその後もスーパー耐久への参戦を継続しており、レースを通じてアップデートが行われているようだ。
というわけで7月30日~31日に開催された第4戦のオートポリスにてMax RacingおよびNISMOを直撃。Nissan Z Racing Conceptとはどんなクルマなのか、まずはNISMOで車両開発を統括する石川裕造氏に話を伺った。
──スーパーGTの開幕戦の岡山でNISMOの松村基宏さんにGT500の「Z GT500」について話を聞いたんですけど、あのクルマはほとんど市販モデルの新型Zとは別物ですよね。スーパー耐久に参戦するNissan Z Racing Conceptは市販モデルに近いクルマなんでしょうか?
石川氏:確かにスーパーGTのGT500のマシンは車両規定に合わせて作られていますからね。エンジンを含めて中身は違いますが、このスーパー耐久に参戦するNissan Z Racing Conceptは量産車をそのまま使っています。もちろん、軽量化のために不要なものは取り外していますし、ロールケージなどレースを走るために必要な装備をつけていますが、富士24時間レースの際はエアロパーツを含めてほぼノーマルの状態で走っていました。
──たしかに富士24時間レースの時は、フロントバンパーもさっぱりしていましたよね。でも、しばらく見ない間にエアロパーツがちょっと派手な感じになりました。
石川氏:フロントのスプリッターやウイングなどをつけて、どのように変化をするのかを見ています。それこそ、富士24時間レースに始まってSUGO、そして今回のオートポリスを含めてラウンドごとに違う状態です。ST-3クラスに今もZが参戦していますが、今後、モータースポーツで使用するために、どのようなエアロパーツがいいのか、レースを通じてテストをしている状態です。
モータースポーツの経験を生かしてアフターパーツを開発
──エンジンもほぼノーマルですか?
石川氏:制御はモータースポーツ用ですが、エンジンもほぼノーマルです。このスーパー耐久に参戦するZはレーシングカーといえども量産車両の良さを活かしながら開発しています。
──開発の目的はあくまでもモータースポーツユースなんでしょうか?
石川氏:もちろん、モータースポーツもありますが、当社はモータースポーツの経験を生かしてアフターパーツの開発および販売をしておりますので、そういった部品についても合わせて検討しています。
──なるほど。新型Z用のアフターパーツもNISMOからラインアップされるんですね。
石川氏:ようやくニッサンから新型Zが登場しましたからね。NISMOとしてもモータースポーツで使ってもらいたいし、レースに出場しないにしても走りが好きな方にいいパーツを提供していきたいと思っています。
──確かにホイールをみても、ST-Xクラスに参戦するニッサンGT-R nismo GT3のセンターロックと違って、ST-QクラスのNissan Z Racing Conceptのホイールは5穴だったりと身近な存在ですよね。
石川氏:まだ具体的にどういったパーツが製品化されるか決まっていませんが、たしかにホイールなんかはレースで使われているモデルがやがて市販化されたり、ウイングなんかも付けられる範囲であれば市販化できますよね。そういった目的もあってST-Qクラスに参戦しています。
──そういった意味ではやはりスーパー耐久のST-QクラスはNISMOにとっても開発の舞台になっているんですね。
石川氏:ST-Qクラスはいろいろと試せるので、ちょうどいいクラスなんですよね。他のクラスは規則が決まっていますが、ST-Qはとくに決まっていない。量産車をベースにいろんな開発ができるのでいいですね。それに富士24時間レースでは2台のNissan Z Racing Conceptが参戦したんですけど、まだ走り始めてすぐのクルマなので230号車にトラブルが出てしまった。そういったトラブルおよびトラブルの対処もすごく役に立つので、いい経験になっています。
──Nissan Z Racing Conceptで相性の良いサーキットはどこですか?
石川氏:どこですかね。それを含めて試しているのが、2022年の活動です。富士はハイスピードコースなのでそんなにエアロパーツをつけずに参戦していましたが、オートポリスはテクニカルなのでリヤウイングをつけて持ってきたりしているので、それを含めて試していますが、コーナリングのいいクルマに仕上げたいですね。
──ちなみにMax Racingが投入している244号車はNISMOの持ち物なんでしょうか?
石川氏:そうですね。NISMOのクルマで、Max Racingにレースへ参戦していただいて、そこにNISMOも参加して、4人から5人のエンジニアがチームに帯同しながら、いろいろと試している状態です。
──なるほど。ちなみに新型Zはカッコいいスタイリングですが、NISMOから見てもZらしさを感じたりするんでしょうか?
石川氏:以前からZが好きだった人にも受け入れられてもらっているし、新しさもあるので、スタイリング的にはいいバランスになっていますよね。エンジンは初めてターボが装着され、MTもあればATもあるので、ちょっと上品な部分もあるし、走りも楽しめる。Zにはやんちゃなイメージもあれば、プレミアムなイメージもあると思いますが、新型Zもその系譜を継いでいると思いますので、NISMOもそれに合うようにパーツ開発を行っていきたいと思います。
Nissan Z Racing Conceptは市販モデルの延長にある
このようにNissan Z Racing Conceptは、市販モデルをベースとしながら、レーシングカーおよびアフターパーツの開発が行われているが、実際のフィーリングはどうなのか? というわけで、244号車のステアリングを握る田中哲也選手/田中徹選手/三宅淳詞選手にインプレッションして頂いた。
──Nissan Z Racing Conceptはどんなクルマですか?
田中哲也:まず見た目がカッコいいですよね。じつはまだ量産モデルに乗ったことがないので比較はできないんですけど、レーシングカーとしては十分にZらしさがありますね。僕は旧型を含めて、ずっとZでレースをやってきましたけど、ハンドリングやトラクション性能などすべてを含めてZらしさはあると思う。Nissan Z Racing Conceptは市販モデルの延長線にあるので、そのあたりは同じだと思います。
──デビュー戦の富士は探りながらのドライビングだったと思いますが、3戦目を経てドライビングとセッティングは固まってきたんでしょうか?
田中徹:まだ探りながらのドライビングです(笑)。でも、セッティングをいろいろと変えることによって乗りやすくなってきたな、というイメージはありますね。
──スーパー耐久ではひとりのドライバーの運転時間が長いと思いますが、Nissan Z Racing Conceptは快適性といいますか、疲労感みたいなのはいかがですか?
田中哲也:エアコン付きのクルマなので大丈夫ですよ。
──Nissan Z Racing Conceptはどのコースが速いと思いますか?
三宅淳詞:まだ全部走っていないので分からない……というのが正直なところです。
田中哲也:毎回、エアロパーツを変えたりといろんなことをやっているので、正直、「このサーキットが速い」とは言えないんですけど、ST-3クラスに参戦するZはオートポリスやSUGOが速かったですからね。新型Zもコーナリングはいいし、エンジンのフィーリングもいいので今後は楽しみです。
──なるほど。Nissan Z Racing Conceptは楽しそうなマシンですね。
田中哲也:スーパーGTのGT500マシンと違ってスーパー耐久のST-Qに参戦するNissan Z Racing Conceptは市販車に近いですからね。新型Zを買うオーナーさんには「こんなエアロがいいなぁ」とか「このホイールがいい」とか、そういった見方もできると思います。
このようにスーパー耐久のST-Qクラスに参戦するMax Racingの244号車「Nissan Z Racing Concept」は、まさに市販モデルの延長にあるレーシングマシン。ストリートにもっとも近い存在となっているだけに、ニッサンおよびZのファンにとっては無視できないマシンと言えるだろう。
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