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2psの小さな英国製EV ファイアフライ・スポーツへ(息子が)試乗 クルマへの興味の入口

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2psの小さな英国製EV ファイアフライ・スポーツへ(息子が)試乗 クルマへの興味の入口

英国で設計・製造される子ども向けEV

必ずしもそうとは限らないが、子どもはいずれ親元を離れる。大学生や社会人になれば、自らクルマを運転する日もやってくる。そんな近未来を想像すると、複雑な気持ちになるという読者は多いだろう。

【画像】2psの小さな英国製BEV ファイアフライ・スポーツ 比較:出揃い始めた日本のBEV 全125枚

待ち遠しくもあるが、筆者の場合は12年も先の話。息子のアーチーは、まだ大学生にもなっていない。

それでも真っ赤なスポーツカーのステアリングホイールを握り、フォトグラファーのピアス・ワードが身体を乗り出した、シトロエン・ベルランゴを追走していく。このバッテリーEV(BEV)に彼が初めて座ったのは10分前だが、既に乗りこなしている。

息子は誇らしげだ。筆者も不安心が半分ながら誇らしい。クルマを運転するという技術で息子に並ばれたような気がして、少しむず痒い。試乗車にもベルランゴにも、擦り傷1つ残さず撮影を終了させてほしいところ。

アーチーが生まれて初めて運転したクルマは、ファイアフライ・スポーツという子ども向けのバッテリーEV(BEV)。英国で展開される、17歳以下が対象のヤングドライバー・モーターカーズ・プログラムのために開発されたそうだ。

子どもたちが道路へ出る前にクルマへ興味を持ち、慣れてもらうことを目的とした活動で、開発にはアストン マーティンやジャガー、ランドローバーなどで働いてきた技術者が関わっている。その仕上がりは通車並みに上質だ。

アストンやジャガーの元技術者が開発

ファイアフライは英国で設計・製造されており、シャシーは完全にオリジナル。全体の98%が国産だという。駆動用バッテリーも。輸入部品はライトとシートだが、プログラム・ディレクターのイアン・ムリンガニ氏は、これも英国製にしたいと考えている。

シャシーはアルミニウム製のスペースフレームで、モジュール化されている。ムリンガニがオフロード・モデルも必要だと考えたら、全長を長くし、車高を高くすることも難しくない。実際に検討中らしい。

サスペンションは調整可能な独立懸架式。ステアリングラックにはラック&ピニオン式を採用し、乗り心地や操舵感は実際のクルマへ近づけてある。

リア側に2基搭載される駆動用モーターは、グレートブリテン島の南部、ボーンマスという街で製造されている。駆動用バッテリーもシートの後ろにある。

アストン マーティンの技術者だったというスティーブ・ローソン氏によれば、このレイアウトで前後の重量配分を最適化できるという。また、セル単体で別れた駆動用バッテリーのメンテナンスも容易になるとのこと。

子どもが乗ることを前提に、最高出力を2ps以下に調整するパワーアジャスターと、リモートで操作できるキルスイッチも付いている。もしアーチーが運転を間違っても、後ろを走るローソンがファイアフライを止めてくれる。

運転の感覚を身につけるプログラム

技術的にも品質的にも、電動ライドカーとは比べ物にならず、コストは低くない。もしファイアフライを1台購入する場合、英国では1万1500ポンド(約190万円)が請求される。公道は走れないから、子どもが楽しめるのは私道だけになる。

ムリンガニによれば、北米や中東から問い合わせが入っているそうだ。子どものおもちゃに、この金額を支払うのだろうか。

英国に住む多くの人にとっては、筆者にとっても、ヤングドライバー・モーターカーズ・プログラムのトレーニング・セッションへ参加することの方が現実的なはず。1セッションが20分で、20ポンド(約3300円)で受けられる。

今回のファイアフライは試作車で、ステアリングラックの調整はできず、ペダルはアクセルのみ。回生ブレーキが強く効き、ワンペダルドライブできる。完成版にはブレーキペダルも付く予定だ。

本物のクルマらしく運転できるよう、セッション内容は考えられている。危険と隣り合わせの公道へ出る前に、子どもが運転の楽しさや感覚を身につける、価値のあるプログラムだと筆者は思う。

ファイアフライに乗るのは、4歳から10歳までが対象。三角コーンの並んだコースで、ステアリングホイールやペダルの基本的な操作を身に着けていく。

それ以降は、ヴォグゾール(オペル)・コルサの実車へステップアップ。クラッチペダルの操作や交通ルールなど、複雑な内容を学ぶ。

運転やクルマに関心を示す若い層を増やす

英国の若いドライバーが交通事故を起こす確率は、平均で20%程度。だがムリンガニの統計によると、プログラムの卒業生では3.8%へ減るという。賢明な支出は、将来の損失を減らすことにつながるのだ。

話が難しい方向になってしまったが、ファイアフライを運転するアーチーは楽しそう。筆者を助手席に座らせて、笑顔でステアリングホイールを握っている。ダッシュボード上にあったバック用のスイッチも、使いこなしていた。

彼は試乗を終えると、ローソンにボディカラーはブラックが良いと印象を話す。まるで自動車評論家のように。休憩時間には、しっかりビスケットも摘んでいた。子どもは親の背中を見て育つようだ。

むやみに子どもの恐怖心を煽らず、過信させることなく、クルマの機能や特性の基礎を学ぶことは大切だと思う。幼い頃から正しく身につけることで、マナーの良いドライバーが増えるに違いない。運転やクルマに関心を示す子どもも増えるだろう。

英国でも、若者のクルマ離れが進んでいる。経済を支える大きな産業が激動の時代に生き残るうえで、非常に重要な取り組みだと感じた。誕生日のプレゼントに、ファイアフライはねだられたくないけれど。

ファイアフライ・スポーツ(英国仕様)のスペック

英国価格:1万1500ポンド(約190万円)
全長:2100mm
全幅:−
全高:−
最高速度:24km/h
0-10km/h加速:1.9秒
航続距離:34km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:210kg
パワートレイン:ツイン電気モーター
バッテリー:110Ah
急速充電能力:−
最高出力:2ps
最大トルク:15.3kg-m
ギアボックス:シングルスピード

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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