ヒット作になると信じて
トヨタは車種の宝庫だ。昔から脈々と続く車名もあるが、新たな名称のクルマも次々と登場している。それがヒット作になると信じて企画、開発して、最高のマーケティングチームが後押しする。しかし、いいクルマだったのに残念ながら一代で終わってしまったトヨタ車たちも存在する。そんな不遇なクルマを紹介しよう。
【画像】一代限りで終わってしまった名車、トヨタiQとFJクルーザー 全19枚
トヨタ・プログレ(1998~2007年)
キャッチコピーは『小さな高級車』。当時の資料によればスリーサイズは全長4500×全幅1700×全高1435mm(後輪駆動)の5ナンバーサイズで、ホイールベースは2780mmとクラウン並みに大きく採られている。
グレードは2JZ-GE型3.0L直6エンジンを搭載した後輪駆動の『NC300』、2.5L直6を搭載した同じく後輪駆動の『NC250』、そしてNC250の4WD版である『NC250 Four』が基本構成。インテリアにウォールナットを使用した、『ウォールナットパッケージ』なども用意されていた。
プラットフォームは8代目マークII(1996~2000年)、足まわりは10代目クラウン(1995~1999年)のものを採用。サスペンションのセッティングは快適性を重視したもので、プログレの販売ターゲット層が高級車を乗り継いできたミドル層以上であったことが想像できる。
エクステリア、インテリアのデザインは保守的とも古典的ともとれるものだが、驚くのは『セルシオ品質』を狙ったという質感の高さ。
例えばボディの塗装は全色5層コートであり、オプションの本革シートやインストゥルメントパネルの質感、走行音の静かさなど、当時、取材で実際に見て乗ってみたが、『小さな高級車』のキャッチコピーに嘘偽りがないことが理解できる。
そんなプログレが一代で終わってしまったのは、価格の高さ(当時のクラウンとほぼ同じ)が一番の理由ではないだろうか。とても真面目に作られた日本の『もてなし』を感じる高級車だっただけに、残念でならない。
トヨタ・ブレビス(2001~2007年)
『小さな高級車』がキャッチコピーのプログレがマイナーチェンジしたタイミングで登場した姉妹車、それがブレビスである。ちなみにこちらのキャッチコピーは『アクティブ・エレガンス』とされ、当時販売されて間もなかった三代目セルシオに似たエクステリアデザインを採用して登場したことが話題になった。
ボディサイズはプログレよりも若干大きく、全長4550×全幅1720×全高1460mm(後輪駆動)、ホイールベース2780mmとなっており、従って3ナンバーサイズとなる。
メカニズムはプログレと共用する部分が多い。エンジンは2JZ-FSE型の3.0L直6直噴(220ps)と1JZ-FSE型の2.5L直6直噴の(200ps)の2系統で、プログレ同様2.5Lには4WD車が用意された。
サスペンションもプログレと同じ4輪ダブルウィッシュボーン式。タイヤサイズはプログレが15インチであるのに対して16、ないしは17インチとなる。当時試乗した印象は、プログレよりも若干固めの乗り味だった。
装備も充実しており、エレクトロマルチビジョン、高級オーディオ(5.1ch対応DVDシステム)、ディスチャージヘッドランプ、パワーアジャスタブルペダル(アクセレータ/ブレーキペダルの前後電動調整)など、至れり尽くせりである。また、プログレと異なる部分として、ブレビスのATはゲート式セレクターを採用していた。
ブレビスもまた、プログレ同様に2007年に販売を終了している。プログレよりも若々しさを感じさせるエクステリア、インテリアのデザインを採用していたが、乗ってみるとごく普通のセダンの乗り味であり、もう少し、FRならではのファントゥドライブを表現できていれば、二代目誕生の可能性があったかもしれない。
トヨタ・マークXジオ(2007~2013年)
車名にマークXが使われているものの、FR(後輪駆動車)ベースのマークX(セダン)とは異なり、FF用の新しいプラットフォームを使った(4WD車もある)ステーションワゴン型の乗用車である。
ステーションワゴン型だが、トヨタでは新コンセプトを謳う。2005年の東京モーターショーで発表されたコンセプトカー『FSC』(フレキシブル・サルーン・コンセプト)を市販化したものなのだ。確かにステーションワゴンにしては背が高いし、ミニバンにしては背が低く、全高の1550mm(FF車)は多くの立体駐車場への入庫を可能にすることを意味する。
また、室内は独立した4つのシートに3列目シートをプラスした『4+Free』コンセプトを採用しており、『セダンモード』、『ワゴンモード』、『ミニバンモード』の3つのアレンジを可能にした。ちなみに2列目が3人掛けの仕様も存在した。
メカニズムはオーリスやブレイドのものを多く使う。パワートレインは2.4L直4+CVTと3.5LV6+6速ATで、前者には4WDも用意された。
マークXジオのコンセプトは悪くなかったが、この時期のミニバン/ステーションワゴンの販売が低迷していたことや、3列目シートが小さすぎて大人が乗るには狭すぎた点が、一代で終わってしまった要因であろう。コンセプト自体はとても良いものだったので、これも非常に惜しい1台だ。
トヨタ・ヴェロッサ(2001~2004年)
ヴェロッサは9代目マークIIの姉妹車にあたる後輪駆動車(4WD車もあり)。チェイサーとクレスタの後継車としての意味合いも持つが、どことなくアルファ・ロメオを思わせるイタリアン(風?)デザインをエクステリアに採用した。
「サウンドまでチューニングした」と謳うなど、チェイサーともクレスタとも異なるコンセプトで誕生。事実、エンジンはマークIIと同じ直6(2.5L/2.0L)のラインナップだが、ヴェロッサ独自の排気系チューニングが施されていた。
注目したいのは2002年に販売した限定車『ヴェロッサ・スペチアーレ』のVR25グレード。これはヤマハがチューニングを施した300ps仕様の2.5Lエンジン(1JZ-GTE型)と、ヤマハ・チューンのサスペンションを奢ったモデルで、ヴェロッサのイメージリーダー的な存在だった。
もともとマークII、チェイサー、クレスタの3きょうだいは、販売チャネルごとに仕立てを変えていた。ヴェロッサは一部を除きビスタ店での専売となっており、そうした意味ではクレスタの後継車となる。
総販売台数は4年間で約2万4000台(編集部調べ)とセールス的には成功したとは言い難いが、個人的には、高級パーソナルセダンとして新たなコンセプトを提案した心意気を買いたい。
トヨタMR-S(1999~2007年)
「MR-SはMR2の後継ではない」とトヨタは主張する。
その理由は専用プラットフォームを使ったライトオープンスポーツカーであり、ターボ車の設定がないことも挙げる。確かに1995年にMR-Sの原型と思しきコンセプトカー(こちらは4人乗りだが)の『MR-J』を発表し、2年後の1997年の東京モーターショーでは「トヨタ・スポーツ800の再来」と銘打って展示したことからも、それは真実だと想像できる。
そんなMR-Sのメカニズムで特徴的なのは、二代目MR2(SW20型)同様にFF(前輪駆動)車のエンジンを後方に移動し、基本コンポーネントを流用することでミドシップ化したこと。コストを抑えて軽量化(車両重量960kg~)もしていることだ。
エンジンは1ZZ-FE型の1.8L直4(140ps)で、トランスミッションは5速MTと新開発の5速シーケンシャルトランスミッション『SMT』が用意された。SMTは2ペダルだが、トルクコンバータを使う通常のオートマチックと違い、ギヤシフトにダイレクト感があり、MTに馴染んだ手練れが乗っても不満のない走りが可能だった。ちなみにMT、SMTともに2002年に行われたマイナーチェンジで5速から6速になり戦闘力、楽しさともに向上した。
サスペンションは4輪ストラットだが、コーナリングでは意外なほど足がよく粘る。オープンカーでもボディ剛性は高く、サスペンションや吸排気系などの合法チューンナップの余地も十分残されている、実に愉しいクルマだ。
2007年に販売を中止するが、それによってトヨタのスポーツカーの流れは2012年に86が出るまで途切れてしまう。ちなみに当時、TRDがチューニングしたMR-Sに乗せて頂いたが、最高にご機嫌な1台だったことはどうしても書いておきたい。
トヨタiQ(2008~2016年)
ボディスタイリングから想像できるとおり、iQはトヨタのAセグメントのマイクロカーである。
スリーサイズは全長2985×全幅1680×全高1500mmというもので、ホイールベースは2000mm。ちなみに車両重量は890kgとなっている。
インテリアでは助手席のダッシュボード下部が大きく削られた形状をしており、助手席を前に出せば、後方のシートに大人が座れるというもの。乗車定員は最大4人だが、運転席後方の座席に大人が座るのは難しい。コンセプトは大人3人の子供ひとり、または大人3人と荷物の3+1シーターである。
iQは欧州でも販売されたが、日本仕様のエンジンはダイハツと共同開発した1L直3(68ps)のみ。組み合わされるトランスミッションはコンパクト設計のCVTである。2009年には同じくダイハツと共同開発した1.3L直4(100ps)エンジン搭載車が加わった。
小さなクルマであるが、安全装備は充実しており、ABSやブレーキアシスト、横滑り防止装置のS-VSC、合計9個のエアバッグなどが備わる。
試乗した印象は、ドッシリとした安定感と適度なキビキビ感を持ち、ボディサイズ以上の安心感のあるクルマであった。室内も大人3人が乗れることを確認した。
2009年、アストンマーティンがiQをベースにした『シグネット』というクルマを発売し話題になった。iQはマイクロカーとしての出来は良かっただけに、一代で販売を終了してしまったのが残念だ。
トヨタFJクルーザー(2006~2023年)
かつてのFJ40型ランドクルーザーを彷彿とさせるエクステリアデザインが特徴の、ミッドサイズSUV、それがFJクルーザーである。
2004年のデトロイト・ショーで『FJクルーザーコンセプト』を発表し、2006年から北米で販売が開始された。当初は北米市場専用であったが、逆輸入車が日本で大人気となったため、急遽日本仕様も開発されることとなり、2010年に日本での正規販売が開始された。その後、オセアニアや韓国市場でも販売された。
日本仕様のボディサイズは全長4635×全幅1905×全高1840mm、ホイールベースは2690mm。シャシーはランドクルーザー・プラドと同様にラダーフレームを採用。レトロなデザインながら本格的な悪路走破性を持ったSUVである。
エンジンは4.0LV6(276ps)で、トランスミッションは5速ATと6速MTから選べる。駆動方式は4WDと2WDが用意される。そのほか、ユニークなのが乗降用のドアだ。両サイドともセンターピラーの内観音開きを採用している。
10年以上の長きに渡り日本市場で販売されてきたFJクルーザーだが、2023年にひっそりと販売を終了した。
WiLL Vi(2000~2001年)
WiLL Viは1999年から2004年にかけて日本で行われた異業種による合同プロジェクト『WiLL』を冠する初めてのクルマ。もともと『トヨタにないカテゴリーの新コンセプトカー』として検討されていたモデルだった。
メカニズム的には初代ヴィッツのプラットフォームを使い、ボディパネルやインテリアは独自の設計で作られた。搭載されるエンジンは1.3L直4(88ps)で、トランスミッションは4速AT。駆動方式はFF(前輪駆動)車のみだ。
ボディサイズは全長3760×全幅1660×全高1600mmでホイールベースは2370mm。標準車とキャンバストップ仕様が発売された。エクステリアは昔の馬車を思わせる独特のシルエットを持つ。インテリアはリビングルームを意識したと言われ、和やかな雰囲気でイメージが統一されている。
日本国内のみの販売で、発売から1か月間の累計受注台数は、月間目標台数の3倍となる約4500台となった。2001年12月、発売開始からわずか2年弱で販売を終了したが、その理由についてはマーケティングの終了(成功)とのことだった。ちなみに購入者の半数は20歳代から30歳代の女性で、8割がトヨタ車を初めて購入したとのことだ。
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みんなのコメント
ハイメカツインカムで140psだけど200万円でSMTは通勤車として最適でした。
会社の帰りはオープンにしてドライブすれば仕事の不満も吹っ飛びましたね。
MR2が復活?という噂も聞きますが、1000万円越えなんて手が出ないですよ。
今はコペンに乗ってますけど、MRーSがお値打ち価格で復活するならまた乗りたい。
【普通=つまらない、平凡】ではないぞ