LEDヘッドランプの登場により、ヘッドランプの形状の自由度が増し、いろいろなタイプのヘッドランプ採用するクルマが百花繚乱。これにより非常に個性的なフロントマスク(顔)が登場し、個性を主張し合っている。
しかし、クルマのデザインで個性を主張するアイテムとして最強なのはいまだにドアだ。ドアの形状、開閉方法ひとつで、非日常感、タダ者じゃない感じが強調される。
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スペシャルな開き方をするドアは、昨今では超高額のスーパーカー、スーパースポーツカーの専売特許のようになっている。
しかしこれまでの自動車史を振り返ると、軽自動車や庶民的なクルマにもいろいろなタイプのドアが採用され、個性を主張するアイテムであるだけでなく実用性を高めてきた。
ここではクルマのドア研究を2回に分けて展開していく。
まずPART1では見た目が派手な開閉方法をするドアの最高峰に君臨するガルウイングドアと、そのガルウイングと間違われやすいドアを合わせて、「ガルウィングっぽいドア」百花繚乱をお届けしよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:Mercedes-Benz、Tesla、Ferrari、mclaren、Koenigsegg、newspress、平野学、ベストカー編集部
ガルウイングは実用性を確保するために生まれた!?
ガルウイングとは、ドアの開閉の様子がカモメが飛んでいる時の翼動きに似ている、開いた形状がカモメに似ていることから命名されたもので、ルーフ部分にヒンジが装着されていて、クルマに対して垂直にドアが開く。見た目のインパクトは絶大で非日常感満載。
デザイン最優先でガルウイングを採用、と考えてしまいがちだが、その見た目の派手さはどちらかと言えば副産物的。
というのも、量産車として初めてガルウイングを採用したメルセデスベンツ300SLは、軽量化と剛性確保のためにサイドシルが高くなりすぎ、通常の横開きドアでは乗り降りがしづらいという理由から苦肉の策でガルウイングを採用したのだ。
これは、軽自動車ながらガルウイングを採用したマツダAZ-1やも同じ理由で、ノーマルのドアでは存在し得なかったハズだ。
ガルウイングの最大のメリットは目立つこと。正直このくらいしかない。
このメリットを最大限に活かしたのが、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで活躍して人気となったデロリアンDMC-12。映画の中でも簡単に乗り降りしていて、見た目重視のガルウイング型の代表選手だとわかる。
いっぽうガルウイングのデメリットは、ドアが重い、ドアを支える油圧ダンパーが抜けてくるとドアが落ちてくる、座ったまま閉めるのが難しく慣れが必要になるなどがある。
また開閉する時に車両の左右、上方向のスペースともに必要となり、駐車場に停めたはいいが、乗り降りできない、ではカッコ悪すぎる。
21世紀になって登場したガルウイング車といえば、2010年から2014年まで日本で販売されたメルセデスベンツSLS AMGだ。300SLへのオマージュが盛り込まれたモデルゆえガルウイングを採用、つまりデロリアン同様見た目重視型だ。
ガルウイングドアではあるが、このクルマならサイドシルが高くないので、女性がエレガントに乗り降りすることも可能。
このSLS AMGで注目なのは、横転時にドアが開かなければいけないという法規を満たすため、ヒンジ部分に爆砕ボルトが使用されていて、いざという時はヒンジを破壊してドアを開けるというのはいかにもメルセデスといった感じで現代流。
ガルウイングドアは、実用性の乏しさゆえ、採用するクルマが少ない。採用しているのはもっぱら少量生産車だ。
では世界で最も量産されたガルウイングは?
マツダAZ-1とスズキキャラは合計で約5000台を販売して2位。栄えある1位は、メルセデスSLS AMG で累計販売台数は1万台オーバー! 2490万円からの価格を考えると凄い。
ガルウイングの可能性を示したファルコンウイングドア
ガルウイングドアの進化版がテスラモデルXのリアドアに採用されているファルコンウイングドア。ガルウイングがカモメだったのに対し、ファルコンウイングは隼の翼の意味。カモメよりも強そうでカッコいいイメージ。
このドアはルーフにヒンジが装着されていて、クルマに対して垂直にドアが開くのはガルウイングと同じだが、ヒンジの動きがまったく違う。
ファルコンウイングドアは、別々の動きをする2種類のヒンジが装着されているのがポイントで、まずドアが上方向にせり上がるため、横方向へのドアの張り出しが最小限に留められている。この効果は絶大で左右30cmあれば開閉可能で、古来のガルウイングの最大の泣きどころを克服している。
しかも、自動で開閉するので、ドアを閉じる時も座ったままでOK。開口部も広いので2列目、3列目の乗降性も抜群にいいという至れり尽くせりだ。
ガルウイングのようでガルウイングじゃないドア
ガルウイングのようでガルウイングじゃないドアは3種類ある。ここからは、それぞれの特徴などを個別に見ていこう。
■シザードア
ランボルギーニカウンタックが外側に開く普通のヒンジドアを採用していたら、ここまでの名声は得ていなかったのではないか、と指摘されるほど、カウンタックのドアの開き方は、見るものの度肝を抜いた。
ドアが跳ね上がり、ドアがバンザイしたような状態となる。これぞ非日常の極みといえる。
ドアの名称は、1個の支点を中心に動くその動きがハサミに似ているということからシザードアと呼ばれるケースが多い。日本語ではハサミドアと訳すのではなく、跳ね上げドアの名称が一般的に使われている。
またカウンタックの登場以来、ランボルギーニのV12搭載モデルのアイデンティティとなっているので、ランボルギーニドアとも称されることもある。
ガルウイングの支点がルーフ部分なのに対し、シザードアはAピラー付け根部分が支点となり、ドアが回転しながら跳ね上がる。
これにより、ガルウイングに比べると横方向のせり出しが小さいため横方向に余裕がなくても乗り降り可能だ。ただし、上方向はガルウイングよりもスペースが必要。
ランボルギーニ以外では、和製スーパーカーの童夢零、ブガッティEB110、スパイカーC8、ヴェクターW8などがシザードアを採用。
■バタフライドア
ガルウイングが垂直、シザードアが回転という動きをするのに対し、バタフライドアは、ドアは回転せずに前方斜め上に開き、ドアがフロントウィンドウをよりも前に出ていることが迫力を醸し出している。
ドアを開いた状態が蝶が羽を広げた姿に似ていることから命名(昆虫が羽を広げている姿にも見えるのでインセクトウイングドアの別名もあり)。マクラーレンはマクラーレンF1以来、バタフライドアを積極的に採用していて、マクラーレンではディヘドラルドアいう名称を使っている。
このバタフライドアは、ガルウイング、シザードアよりも意外なほど採用しているクルマが多い。エンツォフェラーリ、ラフェラーリ、BMW i8、マクラーレンF1、MP4-12C、720Sなどなど、最近のスーパースポーツのトレンドとなっている。
日本が誇るバタフライドアといえば1990年デビューのトヨタセラ。セラが凄いのは、ルーフ部分がドアと一体成型されていて、Tバー部分を残しガバッと開く点で、トヨタのアグレッシブさには今さらながら敬服するしかない。ぜひこのドアを現代のラインアップで復活させてほしい。
■ディヘドラル・シンクロ・へリックス・アクチュエーション・ドア
もの凄く長い名称のドア。さぞかし仰々しい開閉をするのでは、という想像を裏切らず、驚きの動きをする。
スウェーデンのスーパースポーツメーカー、ケーニグセグの専売特許で、ケーニグセグの礎ともいえるCCプロトタイプ以来、多くのモデルに採用することで、ランボドアに負けず劣らずケーニグセグのアイコンにもなっている。
ドアの前部分が下がり、それと同時にドアが上方に向けて回転して、垂直になった状態で止まる、というトランスフォーマー的な動きをする(現在は電動)。
上方に大きく跳ね上がるガルウイング、シザードア、バタフライドアのような派手なアクションではないが、タダ者じゃない感に溢れていて、ランボのシザードアに見慣れてきた今では超個性的なドアといえそうだ。唯一無二の存在というのもいい。
カモメ、隼、蝶(昆虫)など、生き物に例えられる名称が与えられているドアだが、ディヘドラル・シンクロ・へリックス・アクチュエーション・ドアも例外ではなく、猛禽類の翼にちなみラプタードアと呼ばれることもある。
残念なのは、日本でも正規販売されているもののなかなか街中で目にする機会がないことだろう。ちなみにこの書いている担当も、生で見たことはない。
★ ★ ★
ガルウイングっぽいドアについて見てきたが、『百花繚乱、千紫万紅 クルマの進化はドアの歴史!! 時代の闇に消えた変わり種ドア 9選』も展開するのでお楽しみに。
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