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残り23分での逆転劇。中升 ROOKIE、DAISHIN MPRacingの監督が語る富士24時間の分岐点

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残り23分での逆転劇。中升 ROOKIE、DAISHIN MPRacingの監督が語る富士24時間の分岐点

 5月26~28日に静岡県の富士スピードウェイで開催されたENEOS スーパー耐久シリーズ2023第2戦『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』。今年でスーパー耐久シリーズの一戦として6回目を迎えたこのレースでは、総合トップを争う2台が同一周回でレース残り1時間を迎えるという、これまでにない僅差の展開になった。

 26日15時スタートが切られた決勝レースでは、翌27日早朝にトップを奪ったDAISHIN MPRacing GT-R GT3(JOE SHINDO/藤波清斗/青木孝行/大八木信行/坂口夏月)がレース後半で優位に立っていたが、残り2時間を切ったところで中升 ROOKIE AMG GT3(鵜飼龍太/蒲生尚弥/平良響/片岡龍也)がペースを上げて追い上げを開始。残り23分のところで逆転を果たし、そのままチーム初の総合優勝を果たした。一方で惜しくも2位となったDAISHIN MPRacing GT-Rも、トップから46.928秒差でフィニッシュした。

2023年の富士24時間はレース終盤にドラマ。中升 ROOKIE AMGが大逆転でチーム初の総合優勝を飾る

 サーキット会場でも大いに盛り上がった富士24時間レース終盤の逆転劇だが、中升 ROOKIE RacingとGTNET MotorSports、両チームの戦略や各ドライバーのスティント振り分けの判断が、大きな分かれ目となった。

■赤旗中断が誤算に働いたDAISHIN MPRacing GT-R GT3
 2023年から全クラスでAドライバー規定が導入されたほか、各ドライバーの最低・最大乗車時間のルールも変更になったスーパー耐久。今回の富士24時間レースで、ジェントルマンドライバーが原則として登録されることになっているAドライバーは、合計で最低3時間36分以上乗ることが義務付けられている。

 近年の傾向をみると、各チームともAドライバーにスティントを任せるタイミングは決勝スタート後の2スティント目(土曜日の夕方)、日曜日の早朝、午前からお昼すぎにかけたタイミングが主流となっている。しかし、今回のトップ争いでは、特に終盤の担当スティント割に差が出た。

 レース中盤にトップを奪ったDAISHIN MPRacing GT-Rは藤波、青木、坂口らがリードを築き、レース終盤にAドライバーのJOE SHINDOが最低乗車時間をクリアするところまで走るという戦略を立てていた。

 DAISHIN MPRacing GT-Rはレース途中まで予定どおりに作戦プランが進行していたが、日曜日未明に起きたST-4クラスのTOM'S SPIRIT GR86のクラッシュにより、約1時間25分に渡って赤旗中断となった。これがGTNET MotorSports陣営にとって誤算の始まりだった。

「(赤旗で)夜間の走行時間が減ったのが誤算だったのかなと思います」と語るのは、GTNET MotorSportsの尾本直史監督。もともと予定されていた24時間のレース時間から、赤旗中断中の約1時間30分が間引かれてしまったことで、稼げるはずだったリードを稼ぐ時間が失われてしまった。

「夜の(気温が)冷えているときに(ギャップを)稼ぎたいという戦略でした。その時間が1時間くらいなくなってしまったので、いろいろなものにずれ込んでいった感じでした」

 28日午前のパートではBドライバーの藤波が渾身の走りをみせ、中升 ROOKIE AMGに2周近い差をつけたのだが、赤旗によって走行スケジュールがずれ込んでしまったことで、決勝レースの最終スティントはAドライバーのJOE SHINDOが担当することになった。

「(Aドライバーを最後に持ってくることになったのは)想定外でした」と尾本監督。2番手の中升 ROOKIE AMGとのギャップに余裕がないなか、ジェントルマンドライバーを最終スティントに持っていくのは避けたかった。だが、藤波からJOE SHINDOに交代した時点で、Aドライバーの最低乗車時間が105分ほども残っていたのだ。

「ずれ込んだものが、ずっとずれ込んでしまって……帳尻を合わせられなかったです。貯金を貯めきれないまま、最後はJOE SHINDO選手にお願いしなければいけない状況になってしまいました。そこは運もあるのでなんとも言えませんが、そのあたりは力不足でした」と肩を落とす尾本監督。

 DAISHIN MPRacing GT-Rはレース終盤に総合トップにはいるものの、状況的に良くないことはチーム全体も把握しており、藤波も猛烈にプッシュをしてギャップを築こうとしたが、結果的に十分な量を稼ぐことができなかった。

 それでも、藤波のプッシュをはじめ、各ドライバーやチームスタッフの頑張りを尾本監督は讃える。

「本当にみんなよく頑張ってくれました。藤波もたくさん乗ってくれましたし、他のドライバーもミスなく走ってくれました。そういった意味では、みんなで『ああだこうだ』と、ときには文句も言いながらでしたが、ひとつの目標に向かって頑張れたかなと思いますし、やることはやったと思います。次回以降は、なんとか勝ちたいですね」と次戦に向けて前を向こうとしていた。

■一貫してブレなかった中升 ROOKIE「Aドライバーの最終スティントはできる限り後ろに」
 一方、レース終盤に怒涛の追い上げをみせて逆転優勝を飾った中升 ROOKIE AMG GT3。今回は監督兼ドライバーとして24時間レースを戦った片岡は、Aドライバーの起用方法について“スタンダードなもの”を意識したという。

「基本的には明るい時間帯で皮剥きしたタイヤを使うということは決めていて、あとは本人の努力次第だと思っていました」と片岡監督。

「たまたまFCY(フルコースイエロー)が導入されているときにずっと乗ってもらえたりすれば話は別ですけど、それは狙ってできるものでもないです。単純に僕たちはスタンダードに、鵜飼さんが一番うまく走れるようするための環境を作ろうとしました。トリッキーなことはしなかったです」と振り返った。

 実際に中升 ROOKIE AMGのスティント割を見ると、序盤の2スティント目と日曜早朝、そして残り3時間を迎える部分のパートを鵜飼に任せていた。特に終盤の起用どころについては、できる限り得ができるようにしつつ、鵜飼の負担にならないタイミングだけは意識していたという。

「(ドライブするタイミングが)後ろに絡めば絡むほど最低乗車時間が減っていきます。先に全部を消化をしてしまうと(赤旗などで)レースが短くなったときに損をしてしまうので、(鵜飼選手の)最後のスティントを後に引っ張りながらいきました」と片岡。

 スーパー耐久のAドライバー最低乗車時間については、レース途中に赤旗中断などがあった場合、その中断中に走行していない時間を引いたもので再度計算が行われ最低乗車時間が決められる。実際に今回も、当初は『3時間36分』だったAドライバー最低乗車時間が、赤旗中断後に『3時間23分24秒』に変更された。中升 ROOKIE AMG陣営はこれを狙っていたのだ。そのうえで、鵜飼が全体のアンカーにならないように配慮していた。

「全体のラスト2スティントを鵜飼さんにしてしまうと、ガチンコの争いをジェントルマンドライバーに任せてしまうことになります。それだとしんどいですし、おそらく本人も嫌だと思います。ですので、最後から3つ目のスティントに乗ってもらいました」

「そういったスケジュールでしたが、もちろんFCY、SC、赤旗で状況が変わっていくなかで、イメージとしては最後から間引いていった感じです。その間引いていくなかで、鵜飼さんが最後に乗る時間帯を少し遅めにしないといけないという感じでした」と片岡は説明した。

 2023年の富士24時間は僅差での決着だった分、戦略の差が顕著に現れた感のあったレースだが、両陣営とも総合優勝をかけて全力を振り絞って競り合った。過去の24時間レースとは少し違う結末となったことは間違いないだろう。

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