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メルセデス・ベンツCLSは2代目で自らが創り出したスタイルをブラッシュアップして登場【10年ひと昔の新車】

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メルセデス・ベンツCLSは2代目で自らが創り出したスタイルをブラッシュアップして登場【10年ひと昔の新車】

2011年2月、メルセデス・ベンツCLSがフルモデルチェンジされ、2代目となって日本に上陸した。大ヒット作となった初代から一転、4ドアクーぺ路線を引き継ぎながらも、また新しい境地へと大きくアップデートされていた。その内容はどういうものだったのか。ここでは軽井沢で開催された国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年7月号より)

2代目はモア・アグレッシブ&モア・ダイナミック
国産車好きのなかには、スタイリッシュな4ドアクーペカテゴリーの元祖を日本車に求める向きもある。確かにバブル前夜のカリーナEDなど、その手のクルマが流行った。けれども、今にして思えばアレは単に背が低いだけのセダンで、決して「クーペ」と称していいものではなかった。それを言うならジャガーのサルーンの方がずっと先だったろう、という話になる。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

近年の「背が低い」4ドアスポーツサルーンのムーブメントは、ただ低いだけでなくフォルムとして流れるようなクーペスタイルを採っており、その始祖がメルセデスの初代CLSクラスであったことは間違いない。

衝撃のデビューだったと記憶している。あのメルセデスが、機能性を何よりも優先するベンツが、なんと4ドアセダンの機能性を犠牲にしてデザインを優先させるなんて……。もちろん過去のメルセデス・ベンツにも美しいモデルはたくさんあったが、戦後の歴史を紐解けば、それはすべて機能美であったはず。あくまでもカテゴリーごとに与えられた使命を妥協なく遂行した結果としての美しさ。それが、メルセデスというクルマの美だと解釈されてきた。

人にたとえるならば、母として成熟の極みに達した女性美を信奉していた男が急に、ラテン系の早熟系ダイナミックボディに取り憑かれたようなもので、端で見ていてその宗旨替え(といっても、同時進行の愛だったわけだが)に驚くなという方がおかしい。

そして、その驚きはモデルライフで17万台という大成功を生み、メルセデスのパッセンジャーカーフィールドに新たな境地を拓いたのみならず、他ブランドの戦略にも多大な影響を与えた。CLS後の新企画モデルを見れば、一目瞭然。いまだ人気の衰えないクロスオーバーSUVに並んで、スタイリッシュなクーペフォルムをまとう4ドアサルーンの多いこと……。

とくに、3ボックススタイルが急速に勢いをなくしつつあるプレミアムカーセグメントにおいて、セダンスペシャリティとしての4ドアクーペは、市場を刺激する格好のアイテムとなったのだ。フォルクスワーゲン パサートCCから、アウディA5&A7のスポーツバック、果てはポルシェ パナメーラやアストンマーティン ラピードまで。雨後の筍とはまさにこのことだ。

一作目の大ヒット、そして続々登場したライバル。CLSクラスのフルモデルチェンジは、さぞかし難題であったと推察される。

言わば、自ら耕したマーケットである。収穫はこれから。だから4ドアクーペスタイルの継承、というキープコンセプト路線はハナから決まっていたはずだ。中身(=パフォーマンス)の進化の方はといえば、それこそメルセデス流に粛々と推進すればいいわけで、そこに別段、心配はない。

となれば、アイコンであるデザインを頑張るほかないではないか。後追いの4ドアクーペたち(ほとんどすべてが女性的な柔らかさを有している)を再びリードするべく採った方向性が、モア・アグレッシブ&モア・ダイナミック。結果、生まれたのが、初代の女性的なシンプルラインから一転、極めて男性的で躍動感あふれる二代目CLSクラスのスタイリングだった。

高効率と高性能を両立したブルーダイレクトエンジン
改めて、新型CLSクラスの概要をおさらいしておこう。日本上陸を果たしたのは、まず350ブルーエフィシェンシーと63AMGの2機種で、550の導入は生産の関係で少しズレ込むという。

初代CLSクラスもそうだったが、日本市場ではどうしても新世代の直噴V8ツインターボ+7速AMGスピードシステムMCT(S63&CL63に搭載済み)を積む後者にばかり注目が集まってしまう(たしかにスーパーカー顔負けの性能だ)が、語るべき要素が多いのはむしろ前者、350である。

何と言っても、新しいパワートレーンだ。メルセデスのミッドレンジ以上において次世代を担う乗用車用ガソリンエンジンを積んだ、第三世代の直噴システムを採用する「ブルーダイレクト」エンジンである。

効率化と快適性の実現のため、V8とのモジューラー化を捨てて、バンク角を60度とした。このV6には、最大圧力200barの最新ピエゾインジェクターとスプレーガイド式燃焼システム、マルチスパークイグニッション制御を組み合わせた最新の直噴システムが積まれており、リーンバーン燃焼と均質燃焼、さらにはストイキ燃焼と均質燃焼といった燃焼モードを自動かつ効果的に制御するという優れもの。これにアイドリングストップシステムと、従来のCモードに代わってEモードを通常モードとする7Gトロニック・プラスを組み合わせたことにより、高性能と高効率の両立を図っている。

また、電動ダイレクトステアリングもついに採用。これはプレミアムクラス初の試みで、ドライバビリティとエフィシェンシーの両立を図った進化として注目しておきたい。

そのほか、旧型に比べてのボディ&シャシや安全装備の進化はEクラスに準じるもの。すなわち、現代の乗用車界においてほとんど最高レベルのスタンダードが備わったと言っていい。

昨年の秋、フィレンツェ郊外で試乗済みだが、改めて日本仕様を新緑の奥軽井沢で試す。フィレンツェで気になったいくつかのポイントが日本仕様で改善されているかどうかも要チェックポイントだった。

試乗車にはオプションのAMGスポーツパッケージが施されており、見た目の変化はもちろん、エアマチックサスペンション+19インチタイヤを装備するなど、中身も違う。結論から言うと、このパッケージはオススメ、大プッシュのオプションだ。

なにしろ、そのライドフィールはEクラスをより洗練にスポーティに仕立てたもので、フラット感がかなり増し、街中から高速道路まで、上質な弾みに満ちた、信頼と安心に応える走りに終始する。個人的には、アシの応答性に自然な早さが備わっているぶん、Eクラスよりも気に入った。スポーツ/ノーマル、いずれのモードでも乗り心地よく、快適なのは、このところ熟成の進んだエアマチックサスならでは。

それに比べると、金属バネのノーマル仕様には、スポーティさが顔を覗かせたぶんだけ、走りの質感に粗が出る。バタつく、とまでは言わないが、エアサス仕様に比べて確実にクルマの密度が緩い。一体感で劣っている。

新しいV6エンジンのフィーリングには好感をもった。滑らかによく回り気持ちいい。高回転域までよどみなく回る。特に実用域の力の応答性と、積極的にアクセルペダルを踏み込んだときの澱み・雑味のなさも特筆できる。微速域でのマネージメントも、昨秋のイタリアに比べると上手になった。

秀逸だったのは、アイドリングストップ。停止/再始動とも、早さはもちろんのこと、フィールが素晴らしい。いかにもエンジンを掛け直しました、という音や振動がない。これこそ高級車のアイドルストップで、Sクラスハイブリッドのそれを凌いでいる。 

もうひとつ、フィレンツェで気になっていたEモードにおけるかったるさも、随分と改善されたように思う。乗った瞬間から、まるで「昔のベンツ」に戻ったような動きの鈍さがなくなり、少なくとも「進まない!」という感じはしない。上り坂ではそういう印象になるが、フィレンツェでは全域でスタート時にはそう思えたから、恐らく、そのあたりの制御(走りとエコのバランス)が煮詰まったのだと思う。

気になったままのポイントも、もちろんあった。それは電動化なったダイレクトステアリングの功罪だ。キレ味鋭い微速域と超安定志向の高速域などはダイレクトステアの魅力だが、電動化によって日本の常用域、つまり50km/h前後ではステアリングフィールに違和感を覚えるというもの。とくに、切ったあとの味付け、ハンドルが戻っていくときのおしつけがましさが不快である。他ブランドでもよくあることで、それ以外の速度域では何とも感じなかったから、この速度域あたりに電動パワステのちょっとした制御困難域が潜んでいるのかも知れない。

クルマとしての進化は、なるほどメルセデス流。そこに心配はほとんどない。興味深いのは、女性から男性へと変わったかのようなスタイリングを、世の好事家がどう思うか……。想像だが、先代とは少し様相が違って、メルセデスシンパによりウケが良さそうな気が、しないでもない。(文:西川 淳/写真:村西一海)

メルセデス・ベンツ CLS350 BlueEFFICIENCY 主要諸元
●全長×全幅×全高:4940×1880×1415mm
●ホイールベース:2875mm 
●車両重量:1750kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:225kW(306ps)/6500rpm
●最大トルク:370Nm(37.7kgm)/3500-5250rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR 
●車両価格:930万円(2011年当時)

メルセデス・ベンツ CLS63AMG 主要諸元
●全長×全幅×全高:4995×1880×1410mm
●ホイールベース:2875mm 
●車両重量:1900kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:5461cc
●最高出力:386kW(524ps)/5250-5750rpm
●最大トルク:700Nm(71.3kgm)/1750-5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR 
●車両価格:1645万円(2011年当時)

[ アルバム : 2代目メルセデス・ベンツ CLS はオリジナルサイトでご覧ください ]

文:Webモーターマガジン Webモーターマガジン編集部
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みんなのコメント

5件
  • fuu
    やはり初代かな。
    革新的で偉大すぎた
  • livecam
    初代CLSのインパクトは凄かった。
    あんなデザインをよく生み出したものだ。
    リヤシートに座る人は悲惨でしたけど。
    初代CLSは故障が多くて困りましたね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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