4月20~21日、GAZOO Racing 86/BRZレースの第2戦がシリーズ初の2ヒート大会として、富士スピードウェイで開催された。プロフェッショナルシリーズの第1ヒートを制したのは阪口良平(大阪トヨタ86 Racing)で、第2ヒートは服部尚貴(OTG DL 86)が優勝。クラブマンシリーズではEXPERTクラスを橋本洋平(カーウォッチBS86 REVO)が、OPENクラスを安藤正明(C名古屋86 Racing)が、ともに2ヒートとも優勝を飾った。
過去に独立した2レース開催はあった86/BRZレースだが、2ヒート制で争われるのは、今回が初めて。しかも、タイヤは予選から1セットしか使用できないとあって、「(タイヤが)最後まで保たない」、「残り溝が足りなくなって、再車検で失格になる」など、さまざまな噂が飛び交っていた。
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しかし結論から言えば、プロフェッショナルシリーズはドライバーがしっかりタイヤマネージメントを行っていたことで、ほとんど問題とはならなかった。一方で、クラブマンシリーズでは失格こそなかったものの、最後に厳しくなったケースも少なからず見受けられた。
また、第1ヒートでリタイアするとピットスタートとなり、第2ヒートでリタイアすると第1ヒートで入賞しても、そのポイントは与えられないなど、独自の規定も設けられていた。
プロフェッショナルシリーズでポールポジションを獲得したのは、クラブマンシリーズから移行2戦目の水谷大介(GR Tokyo Racing 86)。終了直前まで服部と菅波冬悟(OTG TN滋賀86)の師弟コンビが上位につけていたが、終盤に水谷と阪口が逆転し、菅波の前にも堤優威(ADVICSカバナBS 86)が割って入った。
「たまたまセットとコンディションと、自分のドライビングスタイルが今回の富士にマッチしたんじゃないかと。ただ、クルマはすごく良くて、自分はいつもお店にいるから、密にメカニックとコミュニケーションが取れる強みはあるかもしれませんね」と水谷。
決勝第1ヒートでも水谷は好スタートを切って、1コーナーにトップで飛び込んでいったが、百戦錬磨のプロたちが、そのまま逃してくれようはずがない。背後につけた阪口が、まず2周目の最終コーナーで水谷をパス。3周目の1コーナーで服部に抜かれたまでは良かったものの、その先で「気迫に負けた」と水谷は相次いで後続に襲い掛かられて、いったんは8番手まで後退を余儀なくされる。
トップに立ってからの阪口は3周目まで服部を背後に置いたが、やがて差を広げるようになって、最後は約2秒差での圧勝に。「タイヤもあんまり使っていないし、バトルも1回しかしていないから、第2ヒートも大丈夫」と阪口。第2ヒートを見据えたのか、上位に激しいバトルはなく、服部に次ぐ3位は堤で、中盤以降は唯一となった、久保凛太郎(CG ROBOT BRZ BS)とのバトルを制した菅波が4位を獲得した。
第2ヒートでは阪口がスタートで出遅れ、服部と堤の先行を許したばかりか、「セッティングの変更が裏目に出て、すごいアンダーステアになってしまった」ため、100Rでコースアウトし、大きく順位を落としてしまう。
代わって3番手に立ったのは菅波で、早々と3台によるトップグループが形成される。いつものように一瞬即発の状態でトップが競われ、堤には迂闊に手を出せないという状況は明らか。逆に勝負に出たのが菅波だった。後続は大きく離していたこともあり、最終ラップの1コーナーで仕掛けて前に出る。
その結果、服部が2017年の第7戦・富士以来の優勝を、菅波とのワンツーフィニッシュで飾ることとなった。3位の堤に続いたのは谷口信輝(KTMS 86)で、10番手からしっかり追い上げを果たしていた。5位は久保、そして水谷は6位でゴール。
「第1ヒートのスタートをやらかしているのよ、86で3年ぶりぐらいに。今までポジション落としたことないし、悪くてもキープだったのに。それがあったから、第2ヒートはタイヤもちゃんと温めて、クラッチも慎重につないで、スタートはうまくいきました。タイヤは自分もヘロヘロだったけど、後ろ(の菅波)もきつそうだったから、守るところは守って。集中力を切らしたら終了みたいな厳しいレースでしたが、チームとしてワン・ツーも取れたし良かったぁ!」と服部。
クラブマンシリーズは、OPENクラスで志賀俊方(C.S.I Racing1号86)が初のポールを獲得。しかし、第1ヒートのスタートで安藤に先行を許してしまう。トップに立ってからの安藤は、終始安定の走りを見せ、徐々に志賀を引き離していった。安藤のトップチェッカーは、これが初めて。
このふたりに続いてチョウ・ドンソブ(Family spec7-86)がゴールしたが、黄旗区間での追い越しがあり、23位に降格。第1戦のウィナー湯川祐太朗(C名古屋GRガレージ86)が繰り上がって3位に。
第2ヒートでは4番手から岡田整(AGICA MAXORIDO 86)が好スタートを切り、安藤のすぐ後ろに。その勢いのままダンロップコーナーでトップにまでおどり出る。
その後、岡田の背後で安藤と湯川がチームメイト同士、バトルを繰り返したため、そのまま逃げ切りなるかと思われたが、最終ラップの100Rでリヤがブレイク。「タイヤが本当にギリギリで」と岡田。その脇をギリギリのところですり抜けた安藤が2ヒートともに優勝を飾った。3位は湯川。
「最後のワンチャンスをうまく活かせました。当たっちゃわないか、ちょっと怖かったんですけど。今回はすごく落ち着いてレースできました。いつも何かしら、やらかしているので(苦笑)。第1ヒートを大差で勝てたので、それがすごく自信になったのかもしれません」と安藤。
EXPERTクラスでも松沢隆弘(Uグループ・ペトロナス86)が初ポール。神谷裕幸(ネッツ中部GRGミッドレス86)や橋本、大島和也(Team MDI/P京都WM 86)、水野大(GRガレージ新大阪86DL)といった優勝経験者を従えた。
第1ヒートでは橋下が絶妙のスタートを切り、1コーナーまでにトップに浮上。松沢、神谷の順で続くが、その直後の2コーナーで多重クラッシュが発生する。即座にセーフティカーが入って、リスタートは5周目に。
「SC(セーフティカー)でトップなんて初めてだから、どうしたらいいか戸惑った(笑)」と語る橋本ながら、リスタートのタイミングは完璧。松沢こそ食らいついてきたが、水野以降が出遅れる。
最後まで松沢を抑えた橋本が優勝し、水野を再逆転の神谷が3位となった。第2ヒートでも橋本が絶妙にスタートを決め、早々に独走態勢へ持ち込んでいった。
一方、松沢の後方には水野、神谷らが、ずらり一列状態に。3周目のコカコーラコーナーで前に出た水野もやがて単独走行となるが、松沢はなおも後続を振り切れず。そればかりか、9周目のダンロップコーナーで突然リヤがブレイクし、一気に順位を下げてしまう。神谷が3位を獲得した。
「うまくいきました! でも、同じ日に2ヒートは体力的にも精神的にも厳しいです。インターバルはドキドキしているし、終わった今はけっこうゲッソリ。この後の自宅に帰るまでの第3ヒートが心配です(笑)」と橋本。
「タイヤ的には第1ヒートでSC入った分、まったく問題なく使えて、最後ちょっとコントロールしていたぐらい。開幕戦を欠場したのが残念なんですけど、諦めずにチャンピオン目指してやっていきたいと思います」
なお、5月18~18日にスポーツランドSUGOで開催される第3戦も2ヒート大会ながら、第1ヒートは土曜日に、第2ヒートは日曜日に行われる見込みだ。
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