F2マシンベースにしたF1マシンが大活躍!マーチ製マシンのポテンシャルの高さを証明
F1マシンを製作するイギリスの新進コンストラクターの「マーチ」社。市販モデルのF2をベースに僅か9日間で製作したF1マシン『721G』は、その偉業に対してギネス記録が認定されるほどだった。ある意味、その場しのぎてきな製作のように見えるが成果を上げたこともあり、マーチのF2マシンのポテンシャルの高さを証明。同時にF2マシンをベースにF1マシンを作るという手法は、その後のモデル『741』と『761』にも引き継がれた。
1969年にイギリスで創業したレーシングカー・コンストラクター「マーチ社」は、70年のF1GPに向けて用意した市販レーシングマシン『マーチ701』が、デビュー戦の南アフリカGPでポールを奪い、参戦2戦目のスペインGPで優勝するなどジャッキー・スチュワートの活躍もあってコンストラクターズカップ3位(スチュワートはドライバーズランキング5位)と上々の結果を残した。 翌71年用の『マーチ711』も、優勝こそなかったものの若手のロニー・ピーターソンの活躍によりコンストラクターズカップで引き続き3位(ピーターソン自身もランキング2位)と好調さをキープ。しかし翌72年は、当初用意した『721』と、その改変モデルである『721X』が不調で失速してしまう。そこでF2用に市販されていた『722』をベースに『721』のコンポーネントを移植した『721G』を用意したところ、まずまずの成績を収めることになった。詳細についてはこちら。
これに味を占めた、ということではないかもしれないが、「マーチ社」は74年のF1GPにもF2用市販モデルの『742』をベースにしたコンバートマシンの『741G(上の写真)』を投入。 両サイドにガスバッグを抱え込んだモノコックにコスワースDFVエンジンをリジッドマウント。前後のサスペンションは、コンベンショナルなアウトボード式ダブルウィッシュボーンと基本パッケージは先代モデル『721G』と変わるところがない。 そして、何よりも特徴的だったのはインダクションポッド。74年当時は寸法の制限も緩かったから、幅はそれほど広くはなかったが背の高いものが採用された。また空力に対し様々なアプローチをトライしていたのである。
前後のサスペンションは、素っ気ないほどにシンプルなアウトボード式ダブルウィッシュボーン。唯一、インボードタイプとされたリアのブレーキユニットが斬新さを感じさせるが、結果的にリアセクションの密度は高まっている。
『741G』の外観で最も特徴的なポイントが、そびえ立ったインダクションポッド。後端を丸く絞ったサイドポンツーンと、後退角をつけてマウントされたラジエターの関係がよく分かる。この大きなインダクションポッドの上部側面にはマーチのエンブレムが埋め込まれるなど、商品性が高いことにも驚かされる。流石は市販の“工業製品”だ。
突然のF1参戦決定でF2マシンベースに開発
F2用市販モデルは、『742』から75年に『752』へとフルモデルチェンジ。当初はF1GPへの参戦を取りやめるといわれていたマーチだったが、イタリア人ドライバーのヴィットリオ・ブランビッラ(Beta)と女性ドライバーのレッラ・ロンバルディ(ラバッツァ・コーヒー)がスポンサーを持ち込むことになり、急遽参戦することが決定した。
そのような経緯から、ここでもF2ベースのF1モデルを生みだすことになる。それが『751』だ。F2マシンをベースにしたF1マシンで、スポーツカーノーズ+サイドラジエターとパッケージ的にも似たように映るが、ガスバックを内蔵したサイドポンツーンの後部を絞り、ハの字型にラジエターをマウントした『741』に対して、サイド面を(上方から見て)ストレートに成型、ラジエターもボディに平行にマウントした『751』では風貌が一新された。
戦績では74年は未勝利だったが、新型で臨んだ75年シーズンは、悪天候のためにレース距離が短縮されたオーストリアGP(オステルライヒリンク)でヴィットリオ・ブランビッラが初優勝。チェッカー直後にクラッシュしたエピソードはいかにも、“モンツァ・ゴリラ”のニックネームを持つ彼らしいと、今も語り草となっている。
空力についてはシーズン中にも様々なアプローチがトライされる。夏にシルバーストンでテスト走行した際にはリアウイングを後方の低い位置に移動し、その下部に大きなパネル状の構造物を追加。後にトレンドとなったアップスウィパーに繋がるアイデアとも思われるが、詳細は不明だ。 上の写真は75年のシルバーストン。記憶も曖昧になっているが、インダクションポッドがカラーリングされてないことから、どうやらレースではなくプライベートテストかと思われる。翼端板の位置からリアウイングが後退してマウントされているのが分かるだろう。
なお『751』が、『742』をベースにした『741』の改変モデルとの見方をする資料もある。だが、写真から判断する限り『751』は、フルモデルチェンジした『752』をベースとしており、メカニズム的には『741』との関連性は低いと考えられる。
76年シーズンのマーチは、シーズン終了後に6輪、ティレルのフロント2軸4輪ではなくリアの2軸4輪となる『761/240』を発表することで、一躍時代の寵児に名乗りを上げた格好となるのだが、もちろんレギュラーシーズンにも参戦していた。
上の写真のサイドポンツーンにマーチのロゴが映える6輪車はローマン・コレクションとして知られるオランダの国立自動車博物館で撮影。リアにもフロントと同サイズの小径タイヤを左右2輪ずつ装着。空気抵抗の低減を狙っており、ラジエターの背も低く設定されているのが分かる。 展示パネルにはMarch 240/771とあるから77年の参戦を狙っていたのかもしれないが、現実的にはレギュレーション(車両規則)が変更され、参戦は叶わなかった。
空力性能向上のために細部にエアロパーツを装着
76年シーズンの主戦マシン『マーチ761』は、2018年秋に三重県の鈴鹿サーキットで開催された「RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2018(SSOE)」にも登場。基本的には前年モデル『751』の正常進化系だが、特に空力/カウルワークに関しては毎戦のようにトライ&リメイクが繰り返されていた。興味深いのは、スポーツカーノーズ内部のエアフローなどにも注目するようになっていたこと。 例えば『741』と同様のアウトボード式ダブルウィッシュボーンのフロントサスペンションは、インナーピボットのある2枚のバルクヘッドの間をメタルパネルでカバー。空力的にはスポーツカーノーズ内部の整流に配慮すると同時にモノコックのフロント剛性も増している。 またバルクヘッド前の樹脂製のカバーにも注目してほしい。後にF2ではバルクヘッド自体をこの形状でキャスティングのパーツを成型していたことが思い出される。さらにフロントバルクヘッドの前方も整流目的と思われるカバーも装着されていた。
『751』と同様に、『761』はサイドポンツーンを(上方から見て)ストレートに成型。ラジエターもボディに平行にマウントした。背の低いサイドポンツーンから背の高いラジエターに向け段差処理のフェアリンクが装着されている点にも注目だ。
後年、F2マシンの『782』辺りからは、フロントバルクヘッドが、1枚モノのフラットパネルからキャスティングのパーツに置き換えられたが、『761』で使用されていたカバーのような形状を持っていたと思いだした。当時は気付かなかったが、あれも空力処理だったのである。
77年にレース活動を休止!元マーチメンバーが集まり復活する
1977年シーズンを限りにF1活動を休止したマーチ。F1GPチームはATS社(ドイツのホイールメーカーで77年からチームとしてF1GPに参戦)に売却され、マーチ・エンジニアリング(マーチ・グループの本体)はコンストラクターとして市販モデルの開発&製造販売に専念することになった。 そんなマーチの名がF1GPシーンに復活したのは81年のこと。ただし、77年まで活動していたマーチ・エンジニアリングとは全く関係のないマーチ・レーシングとしてのエントリーだった。ややこしい話になるが少しかいつまんで紹介しよう。
70年代半ばからレース活動を開始したイギリスのRAMレーシングが、80年の英国内F1選手権のタイトルを手土産に81年からF1GPにフル参戦。F1GPでは自前のマシンを用意する必要があり、マーチのデザイナーであるロビン・ハードに白羽の矢が立ち、RAMレーシングとハードはマーチ・グランプリ社を設立した。 さらに、マクラーレンやマーチ、スピリットなどで数々の傑作を手掛けたデザイナーとして活躍した後、フォーミュラの世界でベストセラーを連発したゴードン・コパック。多くのカテゴリーで事実上のワンメイク状態に持ち込んだレイナード社を創設するエイドリアン・レイナードなど、そうそうたるメンバーが加わっている。
こうして開発された“もうひとつの”マーチには、81年シーズン用の『811』と、翌シーズン用の『821』がある。マーチというネーミングからF2で大ヒット作となったマーチ『812』や『822』とイメージが被ることもある。 この黒いNo.71号車は、6月にチェコのアウトドローモ・モストで撮影した『マーチ811』。RAMレーシングが走らせていた個体で、当時のカラーリングのままだ。
ロスマンズカラーの18号車は、今回のSSOEに参加していた『マーチ821』。こちらもRAMレーシングが走らせたマシンで、当時のカラーリング。
「マーチであってマーチでない」と、まるで謎かけのようなのが『マーチ811』と『マーチ812』。ロビン・ハードが関わっているから出自としては77年までのマーチ製F1の後継と捉えることもできるし、80年にフルモデルチェンジしてウィングカーとなったF2、特に81年モデルの『812』とはノーズカウルのデザインも似たようなイメージがある。しかし『811』と『812』の間には、メカニズム的な関連は全くない。当時は「ウィリアムズのコピー」と揶揄されたようだ。
そして残念ながら、『812』がF2の世界でトップランカーとなったのに対して、『811』や『821』は、目立った活躍をすることもなく、F1GPの表舞台から消えることになった。その運命は、まさに好対照だったのである。
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