ランボルギーニの新型「レヴエルト」に、小川フミオが公道で試乗した。新時代スーパーカーの魅力に迫る。
EV走行可!
ついに! という感じで、ランボルギーニの新型レヴエルトを公道でドライブできた。2023年6月に日本で公開され、24年に発売。同社初のHPEVモデルだ。おみごと! な、出来のスーパーカーだった。
ランボルギーニが謳うHPEVとは、“ハイパフォーマンス・プラグインハイブリッドEV”のこと。新開発の6498cc12気筒エンジンに、3台の高密度電気モーターを組み合わせ、あわせて747kW(1015ps)の最高出力と807Nmの最大トルクを誇る。後輪はエンジンで、前輪は左右を別のモーターで駆動し、エンジンにはトルク増強用のモーターがそなわる。
何がいいって、まず、デザインであることは間違いない。低い車体、タイヤの存在感、外から見えるエンジン、太い排気管、そしてスピード感を表現したボディ……。
撮影中、小学生達から、観光客であろう60代とおぼしき外国人の一団まで、様々な人たちが横を通りかかり、例外なく立ち止まり、車体の周囲をぐるぐる回って観察していた。
その様子を見ていて、ランボルギーニは人を幸せにするクルマであると、私は再認識。希少なクルマなので、セレンディピティといったほうがいいだろうか……思いもよらなかった偶然がもたらす幸運、という意味では、際立つ存在感をはなつレヴエルトとの出合いはまさにそれ、なのだ。
ドライバーにとっては、それ以上。最高の部類に入る。
私が最初にレヴエルトに乗ったのは、24年7月の富士スピードウェイだ。雨模様でのサーキット試乗だったが、とにかく速い、そして運転しやすい。この2つのバランスのよさが印象的だった。
富士スピードウェイのグランドスタンド前ストレートでは300km/hをやすやすと超えるような性能ぶりを示し、いっぽうEVモードでほぼ無音でコーナリングが楽しめてしまう(最大6kmぐらいEV走行可能)。大パワーも、自制心さえあれば、コントロールできる。
想像以上に運転しやすいもうひとつの、運転のしやすさについては、10月初旬に東京の市街地をドライブして、マヌーバビリティの高さにも感心した。走り出すとすぐに、自分の身体も慣れて、クルマとの一体感が強くなる。よくできたスーパーカーである。
運転しやすさの最大の理由は、モーターも使った太いトルク、ダイレクト感が強いけれど神経質でないステアリングフィール、トラベル(踏み込み量)がそれなりにあるアクセルペダル、繊細なタッチで効くブレーキと、基本がしっかりできているところにある。
ドライブモードは多様で、「チッタ」(市街地)、「ストラーダ」(ハイウェイかな)、「スポーツ」それに「コルサ」(レース)という具合。加えて、駆動用バッテリー残量があればEVモードが使える。充電は、車内のボタンでエンジンからも行えるので、EVモードを待機させておくことも可能だ。
EVモードは、駆動用バッテリーに残量がそれなりにあって、上記「チッタ」(英語だとシティ)モードを選んだときに使える。ステアリングホイールのスポーク部にある切り替え用ダイヤルで、たとえばひとつ上の「ストラーダ」モードを選ぶと、一瞬の”咆哮”とともにV12エンジンに火が入る。
この轟音的な素晴らしい始動サウンドが聞きたくて、何度もチッタからストラーダにダイヤルを……という人がいても私には不思議ではない。
レヴエルトの加速は、厳密にコントロールされているという感じで、ストラーダモードまでは、アクセルペダルのトラベルをたっぷりとっている。つまり、ゆっくり踏んでいくと、徐々にトルクが積み増されて、速度が上がっていく。使い勝手のよさがしっかり考慮されているのだ。
スポーツモード以上は、周囲の交通状況を鑑みてという感じか。市街地ではなかなか真価を味わえないのが残念だ。ただ、クルマのキャラクターは、絶対速度でなく、加速していくときに決まるという意見もあるので、スポーツとかコルサで、レヴエルトの瞬発力を体感するのは一興かもしれない。
車内に後方確認用のミラーがついているけれど、鏡の面積の多くを12気筒のヘッドカバーが占めており(!)、後ろのクルマの存在はわかるが視界は広くない。
ドアマウントされているミラーに映し出される範囲は広いので、他のスポーツカーを運転するときと同様に、まめに後方チェックをしていれば、車線変更などで焦ることはなかった。よく“1回前方、2回後方”なんて、後方の交通を確認することが安全運転につながるというけれど、まさにそうやってドライブしていれば、レヴエルトにビビる心配はない。
ランボルギーニでは、1台当たりのCO2排出量について、2030年までに40%削減する目標を、24年1月に発表。 レヴエルトと、同様に4.0リッターV8を使ったプラグイン・ハイブリッドの「ウルスSE」を発売している。この先、ピュアEVの発売計画もある、としている。
モーターもフルに使って全輪駆動で走行したときのレヴエルトもたいへんすばらしい体験を提供してくれる。なので、今後、多気筒エンジンの将来が気にならなくもないが、新しいパワートレインでもランボルギーニは、独自の楽しさを提供してくれるんじゃないか? と、つい、先のことまで思いを馳せることになったレヴエルトである。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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