現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > キドニーグリルの巨大化は何を意味するのか? BMW4シリーズ・クーペが担うもの

ここから本文です

キドニーグリルの巨大化は何を意味するのか? BMW4シリーズ・クーペが担うもの

掲載 更新 5
キドニーグリルの巨大化は何を意味するのか? BMW4シリーズ・クーペが担うもの

BMWの通称「キドニーグリル」の巨大化が進む。はたしてその真意は? 最新の4シリーズ・クーペをもとに田中誠司が考えた。

一種の“劇場”

モータースポーツは色褪せない!──ふたりの監督が話す“今”と“未来”

2020年10月に日本市場でも発売されたBMW「4シリーズ・クーペ」のフロントグリルのデザインをめぐる議論が、いまだに鎮火していない。

左右に分かれた「キドニー・グリル」を従来型にくらべて縦に拡大したデザインが賛否両論、というより、国内外のウェブでの反応から判断すると、ネガティブに受け止めるほうが多数派であるようだ。

筆者は、これはBMWが仕組んだ一種の“劇場”であると考えている。彼らの目的は4シリーズ・クーペに最良のデザインを与えることではなく、あたらしいフロントエンド・デザインを発表する場として、これまでもっとも優等生的と思われてきたモデルの“顔”を利用したのだ、と。

これまで多くの記事で述べられているとおり、新型4シリーズ・クーペは、走らせてみれば理想的なBMWそのものである。

今回試乗した「M440iクーペ」は、トップエンドの7000rpmまでシャープな快音を響かせる最高出力387psの3リッター・ストレート6を搭載。電子制御ダンパーが19インチ・タイヤの上下動を巧妙に吸収してくれて、路面を観察しやすいため、速度の上昇を不安に感じないままドライビングに集中できる。

兄弟分である3シリーズにも共通することであるが、ボディが極端におおきいわけではないのに、とても分厚いプラットフォームのうえに乗って移動しているような重厚感があり、それでいながら4WDであることを感じさせない操舵の軽快さも備えている。

最小回転半径(5.7m)が大きく小まわりがきかないこと、幅広タイヤゆえロードノイズが目立つこと、さらには、価格が1000万円の大台を超えてしまい、これならいっそ「M4クーペ」(1348万円~)にしたほうがいいのでは、というような指摘もあるが、総合力はきわめて高い。

フロントにばかり目が奪われてしまう

しかし今回はデザインの議論をしたい。

実車をあらためて眺めてみると、クーペモデルらしいプロファイルのプロポーションといい、張り出したリアフェンダーを通じてテールライトやエグゾースト・パイプへと連なるマッシブな曲線や、天地に薄めのグリーンハウスと上品なキャラクターラインなどのディテールといい、非常に現代的で美しい。

それを、やはりフロントグリルが台無しにしている。

むろん筆者も、「やはりあれはカッコいいのではないか」「デザインをわかっている人は、実はカッコいいと称賛するのが普通なのではないか」と、みずからを疑ってもみた。

同様に縦長のフロントグリルを備えるBMW「2000CS」(1965~1969年製造)は、リビングにミニカーを飾っているほど好みだ。

しかし3月17日にBMWグループの年次記者会見で初披露された電気自動車「i4」量産モデルの姿を見て、自分が感じていたことは正しかったと思った。

i4は4シリーズ・クーペと共通のフロントグリルやヘッドライト・デザインを備えつつ、ドアを4枚とした“グランクーペ”とされている。こちらのほうがボディ側方にデザイン要素が多いため、巨大キドニー・グリルを用いたときの相性がいい。

ひるがえって4シリーズ・クーペを見てみると、4座2ドア・クーペはドアが長く、車体の中央が間延びすることもあり、たとえばいわゆる「7:3」の比率で眺めたとき、どうしても視覚的な重心が前のほうに集まり、“顔”にばかり注目が行ってしまうのだ。

巨大キドニー・グリル脇のエアインレットの形状も、この傾向を助長している。この部分がシンプルなデザインのi4やM4クーペと比べ、4シリーズ・クーペでは歯を食いしばったように大きな開口部が左右に設けられたため、よりいっそうフロントにばかり目が奪われ、バランスが損なわれている。

あたらしいデザイン・アイコンを必要とするBMW

どうしてこんなことになってしまったのか? BMWの公式見解ではないが、筆者の推察はこうだ。

BMWはスポーツセダンを作ることで世界から認められた会社である。そして彼らが“SAV”と呼ぶSUVの走りにおいても、スポーティであることを重視してきた。

量産セグメントで勝ち抜くために、スポーツセダンやSUVへの注目を集められる、あたらしいデザイン・アイコンをBMWは必要としていた。この巨大キドニー・グリルが、それなのである。

では、この新デザイン・アイコンを、まずはどのモデルに与えるべきか?

年に数十万台を売る3シリーズ・セダンに与えるのでは、不評だったときのリスクが大きすぎる。4シリーズ・クーペを追って巨大キドニー・グリルを備えて発売されたM4クーペやi4、あるいは電気駆動SUVの「iX」をその初披露の場とした場合、タイミング的にこのデザインが「M」や「i」をあらたに象徴するものとして受け取られる恐れもなきにしもあらず、だ。

いっぽう、4シリーズ・クーペは玄人受けする非常に優れた物理的バランスを昔から備えていて、BMWを知る誰からも尊敬を集めている。そして2ドア・クーペは限られた大人の乗り物なので、新アイコンがあってもなくても販売台数がそれによって大きく左右されることはないだろう。と、こうしたロジックのもとに、BMWでもっともバランスの取れたモデルである4シリーズ・クーペに、「未来のキドニー・グリル」をまずは与え、それをいわば観測気球としたのではないだろうか、と筆者は考える。

BMWジャパンのウェブサイトでは、4シリーズ・クーペのデザインをこんな表現で語っている。「エッジーで挑発的、そして、何にも似ていない。BMW 4シリーズ クーペの反逆的なスタイルは、その独創的なエクステリア・デザインによって体現されています」

これまで述べたシナリオを踏まえてなお、新型4シリーズ・クーペを手にしたいと願うひとは、たしかに“反逆者”なのかもしれない。

2000CSがそうであるように、多くのひとが思い描くのと異なるデザインは、時を経るにつれて魅力に変わることも多々ある。筆者なら、取材したコミュニケーション・カラーのアークティック・グレーレース・ブルーとは異なり、上下の視覚的バランスが整う、明るめのボディカラー、たとえばミネラル・ホワイトを選ぶだろう。

文・田中誠司 写真・安井宏充(Weekend.)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

突如裏切る日本の路面。「あちこちでスライド」「一体どこでパンクしたのか」/ラリージャパン デイ2コメント
突如裏切る日本の路面。「あちこちでスライド」「一体どこでパンクしたのか」/ラリージャパン デイ2コメント
AUTOSPORT web
勝田貴元、3度目のWRCラリージャパンは総合4位。トヨタのメーカータイトルに安堵も「来年は表彰台の一番上で」
勝田貴元、3度目のWRCラリージャパンは総合4位。トヨタのメーカータイトルに安堵も「来年は表彰台の一番上で」
motorsport.com 日本版
災害時&過疎地の新ヒーロー? 「移動ATM車」をご存じか
災害時&過疎地の新ヒーロー? 「移動ATM車」をご存じか
Merkmal
[Pro Shop インストール・レビュー]メルセデスベンツ GLC(根本俊哉さん)by イングラフ 後編
[Pro Shop インストール・レビュー]メルセデスベンツ GLC(根本俊哉さん)by イングラフ 後編
レスポンス
F1ラスベガスGP決勝速報|フェルスタッペンがドライバーズタイトル4連覇! 優勝は盤石ラッセルでメルセデス1-2。角田は9位入賞
F1ラスベガスGP決勝速報|フェルスタッペンがドライバーズタイトル4連覇! 優勝は盤石ラッセルでメルセデス1-2。角田は9位入賞
motorsport.com 日本版
東北道「浦和ICの大改造」ついに“最後のランプ”建設へ 並行ランプを通行止め 側道利用者は注意!
東北道「浦和ICの大改造」ついに“最後のランプ”建設へ 並行ランプを通行止め 側道利用者は注意!
乗りものニュース
トヨタWRCマニュファクチャラーズ王者に豊田章男会が破顔「苦労して獲ったタイトル」ライバルのヌービル初王者にも祝意
トヨタWRCマニュファクチャラーズ王者に豊田章男会が破顔「苦労して獲ったタイトル」ライバルのヌービル初王者にも祝意
motorsport.com 日本版
波乱だらけのラリージャパン! ニッポンの勝田が意地をみせSS連続ステージ優勝で総合4位につける
波乱だらけのラリージャパン! ニッポンの勝田が意地をみせSS連続ステージ優勝で総合4位につける
WEB CARTOP
最新「サファリ」がスゴイ! 「ハリアー」と兄弟車で登場! 「3列7人乗り」&英国風の“超精悍顔”がカッコイイ! 便利機能モリモリのタタ「最上級SUV」とは?
最新「サファリ」がスゴイ! 「ハリアー」と兄弟車で登場! 「3列7人乗り」&英国風の“超精悍顔”がカッコイイ! 便利機能モリモリのタタ「最上級SUV」とは?
くるまのニュース
1000万円以下で買えるV12搭載ランボルギーニ!…世界に4台しかない「ハラマ 400GTS」のAT仕様の出来は当時どうだった?
1000万円以下で買えるV12搭載ランボルギーニ!…世界に4台しかない「ハラマ 400GTS」のAT仕様の出来は当時どうだった?
Auto Messe Web
【この190SLなんぼ?】走行距離わずか4,753kmでこの値段!なんで?このメルセデス300 SLの弟分190SLは掘り出し物?
【この190SLなんぼ?】走行距離わずか4,753kmでこの値段!なんで?このメルセデス300 SLの弟分190SLは掘り出し物?
AutoBild Japan
ソニー損保、自動車保険満足度調査で2部門1位を獲得…事故対応に高評価
ソニー損保、自動車保険満足度調査で2部門1位を獲得…事故対応に高評価
レスポンス
最後までもつれ込んだメーカー対決はトヨタに軍配! 僅差でヒョンデ逃す。総合優勝エバンス|WRCラリージャパンDAY4午後
最後までもつれ込んだメーカー対決はトヨタに軍配! 僅差でヒョンデ逃す。総合優勝エバンス|WRCラリージャパンDAY4午後
motorsport.com 日本版
スズキ 新型「スポーツクロスオーバー」登場! 斬新デザインの“尖った”スタイリング!? 軽量な車体を活かした軽快な走り! 「Vストローム250SX」何が変わった?
スズキ 新型「スポーツクロスオーバー」登場! 斬新デザインの“尖った”スタイリング!? 軽量な車体を活かした軽快な走り! 「Vストローム250SX」何が変わった?
くるまのニュース
勝田貴元が限界ギリギリの力走。トヨタ勢が猛追も、SS12は安全確保を理由にキャンセル/ラリージャパン デイ3午前
勝田貴元が限界ギリギリの力走。トヨタ勢が猛追も、SS12は安全確保を理由にキャンセル/ラリージャパン デイ3午前
AUTOSPORT web
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
くるまのニュース
市川團十郎がF1日本GPの公式アンバサダーに! F1文化に“新たな風”を吹き込むことを目指す
市川團十郎がF1日本GPの公式アンバサダーに! F1文化に“新たな風”を吹き込むことを目指す
motorsport.com 日本版
[かわいい]見た目して超[ホット]!! スズキ[アルトラパンSS]今買うのアリ説
[かわいい]見た目して超[ホット]!! スズキ[アルトラパンSS]今買うのアリ説
ベストカーWeb

みんなのコメント

5件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

694.01106.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

88.9757.0万円

中古車を検索
4シリーズ クーペの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

694.01106.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

88.9757.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村