2000年代にヒートアップした、ショップデモカー同士のワンラップバトル『筑波スーパーラップ』。今回紹介するランエボ8も、その戦線に投入された1台だ。HKSの叡智を結集して作り上げたそのメイキングは、今見ても凄まじいものがある。(OPTION誌2004年3月号より抜粋)
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「筑波の頂点を極めた『HKS TRB-02』という怪物」エンジン搭載位置を40mmアップ!?【OPTION back number】
パーツメーカーとしての技術と威信の結晶
チューニングカー初の筑波54秒入りを果たしたHKS TRB-02
時は2004年。当時、国内シーンを席巻していた筑波スーパーラップを攻略するべく、日本最大のチューニングパーツメーカーであるHKSが文字通り全霊を賭けて創出した戦闘機、それが“HKS TRB-02(Tsukuba Record Breaker)”である。
まず取り組んだのがジオメトリーの改善だ。旋回性能を求めて理想的な車高まで下げると、サスペンションアームとドライブシャフトの角度が大きく”バンザイ状態”となってしまう。
そこでHKSが取った手段が「エンジン位置を40mm上げる」というものだった。これにより車高は落としながらも、サスペンションアームとドライブシャフトはノーマルと同じ角度を実現。ボンネットには高まったエンジン高を物語るバルジが設けられている。
エンジン本体は自社パーツをフル投入した4G63改2.3L仕様で、最大ブースト圧1.6キロで550ps/65kgmという出力を誇る。
タービンはコーナーを立ち上がる4500rpm辺りの領域でフルブーストに達して、高回転域まで使えるGT3037Sをチョイス。中間域から太いトルクを発生させるパワー特性で、高回転域ではトルクもブーストもややタレていく傾向になっている。
インタークーラーはラジエターへの風当たりや、重量も考え、コアの薄いSタイプを装着。エンジン、ミッション、デフは全てリジットマウントとし、リヤデフも40mm高い位置に搭載されている。
サスペンションはハイパーマックスの試作品。形状や基本機構は市販品とほぼ同一だが、全長調整式ながらベースバルブを持ち、ブラケットがアルミになっている。減衰力は30段調整式だ。アッパーマウントの取り付け位置はノーマルと同じ。取り付け部は全てピロボール化している。
ブレーキは前後ともエンドレス製でフロントが6ポット、リヤが4ポットという組み合わせ。また、タイヤハウスはストロークアップのために作り直し、足を動かしてグリップさせる方向のセッティングとされている。
トレッドはスペーサーとホイールのオフセットで片側37mm拡大。タイヤは18インチも検討されたが、A048の18インチにはG/Sコンパウンドがないため17インチとなった。
ダッシュボード上に単体のタコメーターは無く、コンソールに埋め込んだモニターにCAMPを接続して、タコメーター機能を利用。ちなみにミッションはラリーアート製の5速ドグミッションだ。
助手席の位置に電子パーツのユニットが整然と設置されている。F-CON Vプロの上にあるのがACDのコントロールユニットだ。これによってロック率を手動でプラスマイナス5段階調整できる他、ステアリングのスイッチやブレーキと連動させてフルロック状態にするなど、様々なコントロールを試している。
ACDのボリュームスイッチや他の電気系統のスイッチ、ヒューズ類は運転席上のロールケージ部分に搭載されたパネルに収められる。
ボディ補強はサスペンションの取付部付近を中心に行われている。ただし、重量増を最小限に抑えるべく、乗員の安全性は考慮しながらもロールケージの点数は少なめ。
運転席は後ろに大きく後退させ、レーシングカー用のオルガンペダルをセット。ブレーキマスターシリンダーは前後輪で別々に設置し、そのレバー比による調整と、Pバルブによる調整との2系統で前後バランスを調整できるようにされている。
ランサーの雰囲気を残しつつ、GTマシンっぽさもイメージしたというエクステリア。ノーマルボディが露出しているのはピラーやルーフくらいなもので、それ以外の外板パネルは全てドライカーボン製とされている。
フロントにはアンダーパネルやカナードも備えており、ダウンフォースを稼ぐ。
フロントフェンダーの後部にはタイヤハウス内の空気を逃がすために大きなスリットが設けられている。
リヤウイングは後端のガーニーフラップごと一体成形されたワンオフ品だ。
ドアの内側までカーボンで成形するほどの徹底した軽量化により、車重はおよそ1100kgまで抑えられている。
あくまでも”チューニングカー”という枠組みに拘って製作されたTRB-02。そのルールの通り、純正のモノコックフレームを構造体として使用している他、基本的には市販パーツや市販前提のパーツ、あるいはショップレベルでも十分対応可能なワンオフパーツで組み上げられている。
それでいて、開発途中の段階の12月18日には55秒000を記録し、チューニングカー最速タイムをマーク。最終的に54秒739まで記録を伸ばしたこのランエボ8は、チューニングカーの歴史的な指標とも言えるレジェンドだ。
●取材協力:エッチ・ケー・エス 静岡県富士宮市北山7181 TEL:0544-29-1235
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みんなのコメント
40cmと40mm程度も分からないのは酷い