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レースの勘所を取り戻したクビアト、限界点を手さぐりで探す新人アルボン【トロロッソ・ホンダのF1開幕戦】

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レースの勘所を取り戻したクビアト、限界点を手さぐりで探す新人アルボン【トロロッソ・ホンダのF1開幕戦】

 開幕戦オーストラリアGPの予選で、トロロッソ・ホンダの2台は中団トップの6番手・7番手をターゲットに据えていたという。

 ハースの速さを見ればその予想はやや楽観的すぎたきらいもあるが、バルセロナ合同テストでの手応え、そしてQ1の走りからすれば、トロロッソ・ホンダの2台が中団グループのトップに限りなく近い位置にいたこともまた確かだった。

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 ダニール・クビアトはQ2でタイムアップが果たせず15番手に終わったが、Q3進出が可能な速さは充分にあったと語った。

「マシンには速さがあったと思う。僕らはQ1のタイム(をQ2でも記録できていれば)ですでにQ3に進めていたんだ。だけどQ2に向けて採ったマシン変更の方向性が正しくなかったんだろう。ものすごくタイトな争いだったから、コンマ数秒の差が大きな順位の差になってしまった。だけどマシンの純粋なパフォーマンスが高いのは確認できたし、落ち込む必要はないよ」

 Q1で予想以上に路面グリップが向上したことと、午後5時を過ぎて路面温度が下がっていくことを想定し、トロロッソはQ2に向けてアグレッシブにセッティング変更を加えた。それが裏目に出てしまったのだ。アタック前にトラフィックに引っかかってしまったことも多少は影響した。

 1年半ぶりにレース復帰を果たしたクビアトだったが、開幕前のテストで大きなトラブルなく充分に走り込んでしっかりと準備ができたことが大きかったという。

 レース週末を前に1年間のフェラーリでの経験で自分がどれだけ変わったのか、精神的にどう成長したのかという質問を何百回となく受けたが、それらをそつなく受け流す術も身に着けた。物腰だけでなく考え方も、以前よりもずっと大人になったというのがクビアトの印象だ。

「人間は常に成長できるものだし、僕は今でも常に周りの人たちと協力しながら成長しようと努力しているよ。だけど今ここで何を言っても仕方がないとも思う。F1はコース上での結果だけがモノを言う世界だからね。僕はずっと『走るまで待って』と言い続けてきたけど、コース上での結果はウソをつかない。僕が言ってきたことの意味は、今週末になれば分かると思うよ」

 そのクビアトは、2年前のシーズンに比べてトロロッソのチーム内の変化も敏感に感じ取っていた。

「いくつか以前とは違うところがあるけど、一番はホンダとタッグを組んだことでチーム全体がモチベーションに満ちているということだ。以前よりもチーム全体がポジティブな雰囲気になっていると感じるよ。これはとても重要なことだ」

 そのクビアトは金曜にしっかりと走り込み、午前午後ともにスピンを喫してノーズを壊す場面さえあった新人アレクサンダー・アルボンの穴をしっかりと埋めてチームをサポートした。

 アルボンは「シリアスなことは何もないよ」と語ってはいたが、実は予選までフルに自信を持ってマシンをドライブすることができる状況ではなかった。


 フリー走行1回目で追い風の突風に煽られて突如スピンを喫しマシンの不安定な部分に気付き、マージンを残すためにそれ以上プッシュすることができなくなってしまったからだ。


「FP1でスピンするまでは気持ち良く走れていたんだ。そのせいでオーバードライブしてしまっていたのかもしれないし、それにも気付かなかった。そこでスピンを喫して初めて、『OK、ここまで攻めたらダメなんだ』と分かって、そこからは(バンプや突風の影響で)マシンが予想外の動きをすることもあるんだと気付いた。そこからマシンを修正する必要があったんだ」

 それでも予選までに改善のステップを踏むことができ、自信を持って快適にドライブするマシンに仕上げることができた。それが決勝での安定した走りに繋がった。初日は高速コーナーではかなりマージンを残して走っていたというが、予選ではしっかりとプッシュすることができたという。

 レース前には思った以上に緊張もせずリラックスしている自分に驚いたくらいだというアルボンだが、それも開幕前テストで予選やグリッド手順など全てを含めたレース週末シミュレーションを遂行していたからに他ならない。

 それでもF1マシンをドライブしたことのなかったアルボンがたった4日間のテストでここまでしっかりとF1に適応してきたのは、彼自身の素質とチーム力の高まりを表わしていると言える。

「初日からずっとダニー(・クビアト)に遅れを取っていたのは事実で、このサーキットは入口の縁石の使い方から出口の縁石や人工芝の使い方までライン取りはそれこそ何千通りもあるんだ」

「その点はバルセロナとは違うし、僕はこのサーキットでの経験が圧倒的に少ないから、それは仕方のないことだ。そういうことを差し引けば、自分自身のパフォーマンスにはとても満足しているよ。決勝も(アントニオ・)ジョビナッツィに引っかかってロスをして不運だったけど、レース全体には満足だ」


 一方でクビアトはレースの勘所をしっかりと理解しており、ピットアウト直後のピエール・ガスリー(レッドブル・ホンダ)をしっかりと抜き去り、オーバーカットを許さなかった。今年からリヤタイヤのタイヤウォーマー温度が100度から80度に下げられたことで、決勝のアウトラップはグリップがやや厳しいこともしっかりと分かった上でのアタックだった。


「(純粋なペースでは)彼の方が速いのは間違いなかったし、特に彼はソフトタイヤを履いていたからね。彼がピットアウトしてきた瞬間、ここで抜かなきゃと思ってアタックしたんだ。彼がターン3に向けて右側にブロックラインを取ったから僕はアウト側から並びかけて抜いていった」

「そこからの何周かは何度もドアを閉じてブロックしたよ。そして自分のクルマが発する乱れた風を使って5mとか10mくらいのギャップをキープしていったんだ。ミスは一切許されなかったし、何とか彼を抑え切ることができたのは最高だったよ」

 トロロッソ・ホンダ全体として見れば、予選で本来の力を出し切っていればもう少し上位のグリッドからスタートしてハース勢と中団グループのトップを争うことも可能だったのかもしれない。

 予選・決勝の随所で見せたとおり、トロロッソSTR14は最高速が抜群に伸び、なおかつ高速コーナーの速度もハースほどではないにせよ中団上位の速さを誇っている。レッドブルRB14をベースに、自分たちが集中すべきところに特化して効率よく作りあげたSTR14のマシンパッケージの進歩は明らかだ。

 だからこそ予選でのセットアップ変更の精度向上などチーム総合力の底上げが期待される。

 クビアト自身、1年半ぶりのレースは「とてもタフだった」と語ったが、それでも最もタフだったのは開幕前のバルセロナで行なったレースシミュレーションだと言い、それだけ着実に1年半のブランクを埋めつつあるということだ。そしてアルボンも新たな経験を積むことで着実に成長している。

 そこにチームの総合力アップが加われば、トロロッソ・ホンダは間違いなく次戦バーレーンGPで好走を見せることができるだろう。

「タラレバになってしまうけど予選で上手くいっていれば展開は違っただろうし、上手く行かなかった理由をきちんと分析して理解すれば次に繋がる。予選での0.1秒や0.2秒のゲインはものすごく大きな意味を持つことになる。今週の教訓からしっかりと学んで次にはさらに力強くなって挑むことができる。今回の経験は僕にとってとても良いプラスになったし、それを手にして臨む次のバーレーンではさらに良いレースができるはずだよ」

 昨年4位の快走を見せたバーレーンで、新生トロロッソ・ホンダがどんな走りを見せるのか期待が高まる。

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