人気、知名度、ともに群を抜く旧車界の王様
依然衰えぬ旧車人気。なかでも高嶺の花となっているのが通称「ハコスカ」、3代目スカイラインのC10系だ。もう少し正確に言えば人気の争点はGC10系、つまり2000GTシリーズで、程度が良ければ500~600万円、内容の良いチューニングカーなら1000万円を超すケースも珍しくない。
「ハコスカGT-R(PGC10)」はライバル不在の高性能セダンだった
しかし今から50年ほど前のクルマがなぜここまで高値なのか? クルマの歴史を振り返りながら、その理由を考えてみたい。
スカイラインのイメージを決定付けた3代目のC1O系
3代目C10系スカイラインのデビューは1968年。プリンスが企画した2代目スカイラインのS50系から、日産となっての初のスカイラインシリーズだった。製品開発を取りまとめたのは、いまや伝説の人物、櫻井真一郎氏その人である。
スカイラインはグロリアの下に位置する4ドアセダンとして企画されたが、プリンス・スカイライン2000GTを登場させ、モータースポーツでの活躍が大きなイメージ戦略となり、他社の4ドアセダンとは少しばかり違う、ワケ知りが選ぶスポーツセダンとして「スカイライン党」を形成するような状態だった。
それでも2代目S50系は硬派なイメージが強く、一般受けするモデルではなかったが、3代目のC10系に発展するにあたり、スマートでカッコいいクルマを目指したことで、一般ユーザーから注目される存在に変貌を遂げていた。 シリーズ構成は1500、1800、2000GTシリーズの3体系だったが、2000GTは6気筒エンジンを搭載することで長いボンネットフードが特徴だった。いわゆる「ロングノーズ」で、これが4気筒系とは異なる性能の象徴となり、スカイラインファンの憧れとなっていた。
2000GT系の搭載エンジンは2タイプ。いわゆる標準仕様の2000GTはL20型シングルキャブによる115ps仕様の「GT」、装備を豪華にしてSUツインキャブによる130psの高出力仕様とした「GT-X」がリリースされた。
なお、2000GTシリーズにはもう1タイプ、レース参戦を前提にした高性能仕様車「GT-R」も用意され、こちらはグループ6プロトタイプのR380が積む直列6気筒4バルブDOHC、GR8型を基に開発された160ps仕様のS20型エンジンを搭載した。
その気になって手を加えれば200psを楽に超す超高性能エンジンだったが、車両価格も標準型2000GTが2台近く買えるほど高額だった。
このC10型スカイラインシリーズは、GT-Rがサーキットレースで52勝を挙げ、途中2ドアハードトップも追加されたことで、見た目のカッコよさに加え、走りの実力も第一級という高性能イメージを見事、市場に植え付けることに成功した。
振り返ればこの1960年代終盤の時期は、日本のモータリゼーションが飛躍的に発展した時期で、スマートなボディデザイン、高性能エンジンの登場と、自動車の魅力が一足飛びに増した時期でもあった。スカイラインシリーズは、C10型のリリースによって、現代まで続く高性能でスタイリッシュな車両イメージ作りに成功したといえるだろう。
「ハコスカ」の愛称は現代になってから
さて、このC10型スカイラインが再びスポットライトを浴びるのは、旧車が注目され始めてからだった。スカイラインシリーズは、その後C110系、C210系、R30系~R34系と発展を遂げていくが、いずれのモデルもスポーツ色が強く、カッコいいセダンとしてしてのイメージは引き継がれた。
しかしC10型はGT-Rの作った車両イメージが強烈で、フォルムがシャープ、先鋭的なデザインだったことも大きな魅力となり、歴代スカイライン群のなかでも飛び抜けた存在として注目されるようになっていた。現在、旧車市場で断トツの人気、高値となっているのはこうした事情によるものである。
ちなみに「ハコスカ」の名称は、旧車が注目され始めてから固着した呼び名で、C110の「ケンとメリー、通称ケンメリ」やC210の「スカイライン・ジャパン、通称ジャパン」のように、現役モデルの時から愛称があったわけではない。それにしてもツーリングカーを彷彿とせる「ハコ」の表現と、スカイラインを組み合わせて「ハコスカ」と呼んだのは、じつに上手い言い方だった。まさに「名は体を表す」を地でいくモデルである。
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