現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 技術者の夢がかなった!! パンクしない夢の「エアレスタイヤ」がついに海外で市販車へ採用

ここから本文です

技術者の夢がかなった!! パンクしない夢の「エアレスタイヤ」がついに海外で市販車へ採用

掲載 67
技術者の夢がかなった!! パンクしない夢の「エアレスタイヤ」がついに海外で市販車へ採用

 近年、タイヤメーカー各社が注力している「エアレスタイヤ」。2023年に入り、シンガポールでミシュランが世界的な輸送物流会社「DHL Express」と連携して、エアレスタイヤを装着した車両の運行を始めたことは、大きな話題となりました。

 一般的な空気入りタイヤとは違い、パンクの心配がないエアレスタイヤ。今後乗用車への本格的な普及はあるのか!?? その可能性について考察します。

技術者の夢がかなった!! パンクしない夢の「エアレスタイヤ」がついに海外で市販車へ採用

文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:MICHELIN、Adobe Stock

「エアレスタイヤ」は夢のタイヤ!!

 空気入りタイヤの始まりは、1888年に、B.J.ダンロップが息子の自転車用に空気入りタイヤを考案したこと。その後1895年にミシュラン兄弟が初めて空気入りタイヤをプジョーに装着して、パリ~ボルドー間のレースに参加し(当時の酷い路面環境によってパンクが頻発したことで、レース結果は振るいませんでしたが)、他車を圧倒する走りを発揮したことで、空気入りタイヤの普及が一気に始まりました。

 その後いまに至るまで、タイヤはクルマの足元を支える重要部品として進化し続けていますが、空気を封入することで衝撃を吸収するという基本的な構成は変わらず、結果として現在もパンクという課題は解消されていません。そのため、空気を使わずパンクせず長持ちする「エアレスタイヤ」は、夢のタイヤと位置づけられ、タイヤメーカーは永遠のテーマとして研究開発を続けてきました。

空気が入るタイヤは、パンクのリスクから逃れられない。エアレスタイヤはパンクのリスクがない「夢のタイヤ」(PHOTO:Adobe Stock_Carbondale)

パンクしないだけじゃない!! 多くのメリットがあるエアレスタイヤ

 すでにほとんどの主要なタイヤメーカーから、エアレスタイヤが提案され、実証試験が行われています。その構造はメーカーによって多少の違いはありますが、通常の空気入りタイヤのサイドウォールがなく、衝撃を吸収する樹脂やゴムのなどの複合材料で構成された多数のスポークの外周にトレッドゴムを張り付けた構造となっており、空気の代わりとなるスポークが、エアレスタイヤの性能や快適性、耐久性などを決定するキー技術となっています。

 エアレスタイヤは、パンクやバーストが発生しないばかりか、空気圧の管理も不要であるためメンテナンス負荷が軽減され、釘のような鋭利な異物を踏んだ場合も、走行不能になることを回避することが可能。メンテナンスフリーかつ長持ちといったメリットがあるエアレスタイヤは、レンタカーやカーシェアリング、自動運転(パンクのリスクなく目的地までたどり着けるため)にとっても大きな追い風になります。さらに、デザインの自由度が増し、リサイクルも容易なので、環境にも優しいタイヤといえるでしょう。

ミシュランは、公道での走行を開始して実用化の第一歩を踏み出した

 乗用車用のエアレスタイヤとしては、ミシュランの「Uptis(アプティス)」、トーヨータイヤの「noair(ノアイア)」、ブリヂストン「エアフリーコンセプト」、住友ゴム「GYROBLADE(ジャイロブレイド)」などが、すでに実証段階に入っています。

 先行しているのが、ミシュランのアプティスです。ミシュランは数年前から、GMと共同でボルトEVなどを使って走行試験を行っていましたが、冒頭で触れたように、ついに今年1月、DHL Expressと提携して、シンガポールでアプティスを装着したDHLのライトバン配送車の運行を開始しました。いよいよ、エアレスタイヤが実用化の第一歩を踏み出したのです。

 日本メーカーであるトーヨータイヤのノアイアは、ゴルフ用カートをメインに2021年から一部のゴルフ場で運用を始めています。

ミシュランが2019年に公開した、「ミシュラン アプティス・プロトタイプ」。アプティス(UPTIS)は「Unique Puncture-proof Tire System」の頭字語だそう

ただ、当面は限定的な活用にとどまる見込み

 多くのメリットがあるエアレスタイヤですが、日本の保安基準では、タイヤは空気入りタイヤが前提であるため、現状のままでは乗用車に採用することはできません。ただ海外で乗用車用エアレスタイヤが実用化されれば、日本がそのクルマの輸入を拒否することはできないため、保安基準を変更せざるを得ないでしょう。そのためこの法規上の問題は大きな障壁になることはなく、最大の課題はコストだと考えられます。

 市場のほぼ100%のシェアを獲得している空気入りタイヤに対して、材料の異なる新規開発のエアレスタイヤのコストが同等になるのは至難の業。また、これまで長い歴史の中で技術が熟成されてきている空気入りタイヤよりもタイヤ本来の性能や快適性、耐久性において勝ることを実現・実証するのには時間もかかります。

 ただ、採用しやすいゴルフカートでの展開から法整備が進めば、用途の限定された超小型モビリティバッテリーEV、そして低速の短距離走行が中心の小型バッテリーEVでの採用へ進むと予想され、空気圧などのタイヤメンテナンスが不要となるメリットを生かして、レンタカーやカーシェアリング、自動運転車などにおいて活用が見込まれますが、一般の乗用車への適用については、まだまだ時間がかかりそうです。

ミシュランがDHL Expressと提携して、シンガポールでアプティスを装着したDHLのライトバン配送車。エアレスタイヤ実用化への第一歩を踏み出したが、一般の乗用車への適用は、まだ時間がかかりそう

◆     ◆     ◆

 実用化や普及に時間がかかりそうなエアレスタイヤですが、現在の自動車が最優先で取り組むべき4つの技術「CASE」のコネクティッド(C)/自動運転(A)/シェアリング(S)/エレクトリック(E)のうち、自動運転とシェアリングに直接関係する技術であり、タイヤメーカーも本気で取り組んでいます。エアレスタイヤは、決して夢のタイヤで終わることはない、将来有望な技術なのです。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

クシタニが2024-25FWガーメントを発売! 暖かさと運動性の高さを両立した防寒パンツ・ブーツ・グローブをラインナップ
クシタニが2024-25FWガーメントを発売! 暖かさと運動性の高さを両立した防寒パンツ・ブーツ・グローブをラインナップ
バイクのニュース
ミツオカ新型「M55」世界初公開に反響多数! MTのみ設定&“旧車”デザインに「良すぎる」の声! 青内装の「ゼロエディション」が話題に
ミツオカ新型「M55」世界初公開に反響多数! MTのみ設定&“旧車”デザインに「良すぎる」の声! 青内装の「ゼロエディション」が話題に
くるまのニュース
ついに昔の[ダイハツ]が蘇る!? [不祥事]以来変わった[社内の雰囲気]とは
ついに昔の[ダイハツ]が蘇る!? [不祥事]以来変わった[社内の雰囲気]とは
ベストカーWeb
ニューズウィーク誌が選ぶ「2025年最も期待される新型車」にベントレー新型「コンチネンタルGTスピード」が選出されたもっともな理由…とは?
ニューズウィーク誌が選ぶ「2025年最も期待される新型車」にベントレー新型「コンチネンタルGTスピード」が選出されたもっともな理由…とは?
Auto Messe Web
フィアット125周年をイタリアが国をあげて祝福、2つの特別展示会をトリノで開催
フィアット125周年をイタリアが国をあげて祝福、2つの特別展示会をトリノで開催
Webモーターマガジン
「ランクル」兄弟で最もモダンな“250”に試乗! オンロードでもオフロードでも隙がない万能モデルだ。【試乗レビュー】
「ランクル」兄弟で最もモダンな“250”に試乗! オンロードでもオフロードでも隙がない万能モデルだ。【試乗レビュー】
くるくら
「クルマの左寄せ」苦手な人が多い!? よく見えない「左側の車両感覚」をつかむ“カンタンな方法”がスゴい! JAFが推奨する“コツ”ってどんなもの?
「クルマの左寄せ」苦手な人が多い!? よく見えない「左側の車両感覚」をつかむ“カンタンな方法”がスゴい! JAFが推奨する“コツ”ってどんなもの?
くるまのニュース
文化を身近に。BMWが贈る特別イベントに名門ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が登場!
文化を身近に。BMWが贈る特別イベントに名門ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が登場!
OPENERS
全長2.5mで新車100万円級! トヨタの「斬新2シーターモデル」がスゴイ! めちゃお手頃サイズなのに「必要にして十分」の“おふたりさま向けマシン”とは
全長2.5mで新車100万円級! トヨタの「斬新2シーターモデル」がスゴイ! めちゃお手頃サイズなのに「必要にして十分」の“おふたりさま向けマシン”とは
くるまのニュース
アルピナの未来、26年「BMW傘下」でどう変わる? 高性能EV&Mモデルとの差別化を考える
アルピナの未来、26年「BMW傘下」でどう変わる? 高性能EV&Mモデルとの差別化を考える
Merkmal
高すぎるよぉ…! 価格が暴落したら買いたいスーパーカー3選
高すぎるよぉ…! 価格が暴落したら買いたいスーパーカー3選
ベストカーWeb
男性が乗って女性にモテるクルマTOP5は? ChatGPTに聞いて出た「ホントかよ!」な答えとは!!
男性が乗って女性にモテるクルマTOP5は? ChatGPTに聞いて出た「ホントかよ!」な答えとは!!
WEB CARTOP
悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑
悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑
AUTOSPORT web
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
レスポンス
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
乗りものニュース
あれぇぇ!? [ノートオーラNISMO]と[シビックRS]を比較してみると意外な結果
あれぇぇ!? [ノートオーラNISMO]と[シビックRS]を比較してみると意外な結果
ベストカーWeb
レゴ、F1全チームをテーマにした製品を2025年1月1日から販売開始。往年の名車ウイリアムズFW14Bなど“オトナ向け”製品も3月に発売
レゴ、F1全チームをテーマにした製品を2025年1月1日から販売開始。往年の名車ウイリアムズFW14Bなど“オトナ向け”製品も3月に発売
motorsport.com 日本版
ホンダが「凄い施設」を初公開! 夢の「全固体電池」実現に一歩前進!? パイロットラインを栃木で披露
ホンダが「凄い施設」を初公開! 夢の「全固体電池」実現に一歩前進!? パイロットラインを栃木で披露
くるまのニュース

みんなのコメント

67件
  • ズボラなオバハンなんかが使ったらパンクしないからといってトレッド面が無くなってツルツルになっても交換しなさそう

  • シャビ雪がはまって目詰まりする?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村