2023年にスーパーGT、スーパーフォーミュラでダブルタイトルを獲得したTOYOTA GAZOO Racing(TGR)の宮田莉朋選手。2024年は海外に拠点を移してFIA F2、ELMS(ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ)に参戦しつつ、WEC(FIA世界耐久選手権)にテスト・リザーブドライバーとして帯同します。
第4回目となる今回のコラムでは、クール・レーシングから参戦するELMSで“衝撃のデビューウイン”を果たした第1戦バルセロナの裏側をメインに、プライベートでの近況を含めてお届けいたします。
【宮田莉朋“三刀流“コラムLAP 3】FIA F2の現場で感じるF1の近さと日本との違い。開幕迫るヨーロピアン・ル・マンに向けて
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読者のみなさんこんにちは、宮田莉朋です。ELMS第1戦バルセロナ、優勝しました!
いやぁ、すぐに勝てるとは思っていなかったので、「こんなことがあるんだなぁ」というのが率直な感想です。
というのも、ELMSのレベルはかなり高いと感じたからです。ドライバーも少なからずFIA F2に参戦していた選手や、僕みたいに現役でF2を戦っている選手、プラチナやゴールドのドライバーはF1に乗ったことがある選手もいるし、F1を目指してこの耐久レースに出ている若手もいて、いろいろなドライバーに出会えるという部分でも僕にとっては刺激が多いカテゴリーになっています。本当にレベルは高いと思いますね。
ありがたいことに、僕のことを知っているドライバーも多くて嬉しかったですね。
直前の公式テスト『プロローグ』から自分たちにポテンシャルがあるのは分かったのですが、耐久レースの醍醐味と言いますか、チームによって予選が得意だったり、ロングランのパフォーマンスが良かったりと勢力図がバラバラでした。僕らはどちらかというとロングランの方が戦える、というイメージでした。
そもそも4クラス・43台も走るので、テストやプラクティスではクリアラップがなかなか取れません。ですので、ニュータイヤの予選シミュレーションをするのが大変で、しかも全然、予選シミュレーションができないまま、予選に行かなきゃいけない状況になってしまったのです。
そうです、そもそも初めてのELMSのレースなのに、僕が予選担当だったんですよ! プロローグが終わったあと、レースウイークに向けたブリーフィングのときに担当が分かりました。ランプランを見て、チームメイトと「これ、予選担当はリトモじゃない?」みたいな(苦笑)。
予選はクラス別なので、そこで初めてトラフィックなしで、タイヤをきちんとウォームアップさせてのアタックができました。といっても、LMP2だけでも14台が出走したので、スーパーフォーミュラのQ2くらいの台数ではありました。そんな状況での初めての予選ながら、トップ5に入れたことは大きかったですね。プラス、決勝ではパフォーマンスがあるというのが分かっていましたし、チームと僕らドライバーの力がうまく噛み合って、勝つことができたのだと思います。
決勝では、トラフィック処理が意外と難しかったです。
スーパーGTでもそうですが、GT3車両はABS(アンチロック・ブレーキシステム)がついているので、僕らよりもコーナーに飛び込めます。一方でLMP3マシンは低速コーナーでは僕らとあまり速度差がないので、無理に行こうとラインを外すとピックアップ(タイヤかす)も拾ってしまい……そのあたりは僕もまだまだ改善しなくてはいけない部分だと感じましたが、スーパーGTでの経験は少なからず活きている感じはしました。
テストから約1週間をバルセロナで過ごしましたが、天気がずっと良かったので気持ちよく過ごせましたし、どのチームもホスピタリティには力を入れていたので、食事の部分もまったく悩みがなく、快適でしたね。
■FIA F2から駆けつけたGR010のテストでの好感触
話は前後しますが、前回のコラムでお伝えしたように、オーストラリアのFIA F2のあとはオーストラリアのメルボルンからポルトガルのポルティマオへと移動して、僕自身2回目となるGR010ハイブリッドのテストに参加しました。
残念なことに天候が良くなくて、テストとしては難しいものになってしまいました。雨量が一定なら、同時に走っていたライバル勢や前後に乗った選手と比較しての評価ができるのですが、“山あり谷あり”という感じで、あまりにも天候が安定しなかったので……。
そのなかで唯一、僕はドライコンディションでクルマに乗ることができました。おかげで経験を積むことができ、最初に乗ったアラゴンのときよりは自分の感覚としても「乗れる」ようになってきた部分があるので、ポジティブな感触で終えることができました。
あとは、僕が担当したメニューからのフィードバックで、今後のWECのレースにチームとしてつなげられるデータがあればいいな、と思っています。WECのリザーブドライバーとしては、第2戦イモラの前にTGR-Eのシミュレーターに乗り、イモラのレースにも帯同していました。
そして先日エントリーリストが発表されたとおり、WECの第3戦スパには、アコーディスASPチームのレクサスRC F GT3で、LMGT3クラスに出場することが決まりました! まずは、この機会を与えてくださったみなさんに感謝したいです。
僕は実際にスパを走ったことがありません。そもそもRC F GT3という車両としても経験の浅いサーキットになると思うので、限られた時間のなかでうまくやらなくてはいけません。
ただ、僕はeスポーツの方ではスパ24時間レースを経験済みで、『スパ×GT3車両』という部分においては、いまでも昨日のことのように思い出せるくらい、長時間の走行経験は積んでいます(笑)。これは1月に同じくRC F GT3で初出場したデイトナ24時間でも同様で、eスポーツでの経験があったからこそ、初めてでも問題なく走れた。そういう部分では、今回のスパに向けても、すごくわくわくした気持ちですね。
■ドイツ・ケルンで見つけてテンションが上がった『癒し候補』
最後にドイツでの私生活の近況をお伝えすると……ケルンの自分の部屋では、ようやくシミュレーターが動くようになりました。ただ、全然家にいられる時間がなくて、日本にいたときほどはできていません。「ようやく稼働した」という状態です。
あとは僕、日本に犬3匹と猫1匹を置いてヨーロッパに来ているのですが、家族から写真が送られてくるたびに「去年は彼らに癒されていたなぁ」と思い返していて。
ちょうどELMS開幕戦に行く前に少しだけ休みがあったので街に出たのですが、ドイツはデパートとか洋服屋さんとかでも、犬を連れて中に入ってもOKな店が多いのに気づきました。そのときに「日本にあるような、犬カフェ・猫カフェとかないのかな?」と閃いて調べたら、ケルンに猫カフェがあることが分かりまして、ちょっとテンション上がりました(笑)。今度、時間ができたら絶対に行きたいと思っているので、そのときはこちらのコラムでも紹介できればと思います。
このあとはELMSのポール・リカール、WECスパ、そしてFIA F2のイモラ・モナコ2連戦と、レースが続きます。なかなかケルンでゆっくりする時間は取れなさそうですが、猫カフェでの癒しを夢見て頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いします!
⚫︎今月の“リトモメーター”
三刀流+moreとして世界のさまざまなサーキットを訪れる2024年の宮田選手の移動距離を、フライトマイルで計測。ご本人のアプリのスクショを公開させていただきます。
今回、3月25日~4月25日の期間で……
⚫︎3月25日~4月25日
8回の搭乗
8,789マイル
搭乗時間:23時間
⚫︎2024年累計
45回の搭乗
102,654マイル
搭乗時間:246時間37分
10万マイル=16万km突破。すでに地球4周……。
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