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【俺が乗らなきゃ誰が乗る!?】File01 シビック 1200RS取材でよみがえったほろ苦い思い出

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【俺が乗らなきゃ誰が乗る!?】File01 シビック 1200RS取材でよみがえったほろ苦い思い出

このクルマとオイラの最初の出会いは高校の同級生、I(もう何十年も会ってないからイニシャルにしておく)が高校3年生のときに手に入れたオレンジ色のRS。

彼はなんと、これでレースに出る!と言い放ったので、オイラたちは驚いて腰を抜かした!
このくだりは原稿に書いた。
結局、Iはシビックではレースをしなかったのだが。
 
Iがレースに出ると言った理由は定かではないが、思い当たる節はある。一緒に見に行った所沢サーキットのダートコースで行われていたダートラ(ダートトライアル)講習会での篠塚健次郎さんによるデモランが強烈に心に突き刺さったから、かもしれない。
 
5000kmもの、めちゃくちゃハードなステージを走るというサファリラリーで入賞経験を持つ篠塚さんが、わずか1kmのダートラコースで転倒するのを見て、
「どーなってんだ!?」
ここはそんなに過酷なのか? と無知な高校生は思った。でもなんだかわからないが、これはおもしろそうだ、と直感的に感じてしまった。
  
さらに言えばこの日、チューニングされて迫力あるエキゾーストサウンドをとどろかすマシンが、飛んだり跳ねたり、ひっくり返ったりする様を見ていて、ワクワクどころか頭がポーっとしてしまい、これはやるしかない! と心に決めたような気がする(笑) まあウン十年も前、17歳のときの記憶なのであんまりアテにはならないが。
 
多分Iも同じ思いでダートラを始めたのではないだろうか。なんといってもこのダートラ場は地元にあり、すぐに行けたのだから。
 
彼の行動は早かった。さっさとシビックを売り飛ばして、トヨタ カローラレビン(いわゆるTE27)を探し出してきた。そしてIはダートラでそこそこの成績を収めた7、8年後に念願のレースデビュー。サニーのプロダクションレースや耐久レースに出場し、優勝も果たしたのだった。
 
オイラはというと、ダートラを経てラリーの道へ進んだのだが、所沢サーキットの衝撃から11年後に篠塚健次郎さんをドライバーとする三菱石油ラリーアートチームのチームマネージャーとなるという奇縁が待っているなんて、当時は1mmも想像していなかった。
 
もうひとつ、シビック1200RSにまつわるネタで衝撃的なことがあった。
 
高校を卒業して2年後の成人式の日だった。オイラはすでにダートラデビューをし、ぶつかったりひっくり返ったりしてまったく成績が出てないころ。チームの先輩が成人式のお祝いをしてくれるというのだ。
 
そこで同じチームでダートラをやっている同い年4人と集合場所に向かった。そこにはもちろんIもいた。するとまず説教が始まった。お前たちの走りには正確さがない! メートル単位ではコントロールもくそもない、センチ単位でやれるようにならないといけない、と。
 
そこで今日は先生に来てもらった、と言う。どおりでシビック1200RSに乗った知らない人がいるとは思っていたのだ。それがなぜかジムカーナのドライバーだった。
 
当時、ジムカーナの人気は下火で、どこでやってんの? やっている人なんて見たことないよ、と、オイラたちは鼻をほじりながらその説教を聞いていた。それを感じた先輩は、ニヤリとして、「まずは見てみな!」といい、ジムカーナドライバーに「オイッ、こないだのちょっとやってくれ!」と声をかけた。
 
ドライバーがデモンストレーションをしたのは両脇が生け垣の狭い田舎道で、クルマがすれ違うのがやっとという感じのところ。そこをシビックが全開で走ってきてフルブレーキングからのクルリンパ!
 「ここでスピンターンするか!?」
クルマの前後が生け垣にこすっているようにしか見えない。そのまま生け垣を突き破って農家の庭に飛び込むんじゃないかとハラハラして見ていた。いや~度肝を抜かれた。
 
その人は先輩の同級生で、久しぶりに会ってクルマの話になったらしい。“へ~ジムカーナやってんだ~”ぐらいの軽い気持ちで、「ちょっと走りに行こうぜ」と誘ったという。助手席に乗ったら、このスピンターンを披露してくれ、先輩も度肝を抜かれたらそうだ。そこで、オイラたちに見せて驚かせてやろうと、思ったらしい。
 
先輩は笑いながら、なっ!これを盗まないともったいないだろ! と、この時からオイラたちはジムカーナをあがめるようになったのだった(笑)
 
その後に知ったのだが、その人はジムカーナのチャンピオンで、オールスタージムカーナとかも出ちゃうような選手だった。競技は違えどオイラたちとはまったくと言っていいほどレベルの違う人だったのだ。
 
先輩は大ざっぱ性格だったので、オイラたち同様に、そこまでの人だとは知らなかったのだと思う。単純に同い年がこんなにやれるのなら“それぐらいできなきゃカッコがつかない”程度のノリだったのだと思う。
 
恐ろしいことに、先輩が「お前たちもやってみろ!」と言うではないか。
 
もちろん結果は見えていた。誰だったかは忘れたが、1台目が当たり前のように向きが変わらずに生け垣に飛び込んで、農家の人が様子を見に来た。みんなは“逃げなきゃ!”という場面だったのだが、そこは先輩の親戚の家だったようで、またあのアホが何かやってるな、ぐらいでおとがめはなかった(笑)
 
そんなスリルを味わった後、やっと本来の目的である成人式のお祝いをやってもらったのだった。
いまでも覚えている。トンカツをおごってもらった。しかもその食堂も先輩の親戚。どんだけ親戚だらけなんだ(笑)
 
というわけでオイラはホンダ シビック1200RSを所有したことはないが、10代の多感な時期にこのクルマにまつわる衝撃的なできごとが2回もあったのだった。
 
〈文=三好秀昌〉

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