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ジャガーとランドローバーのAWD解説と雪上試乗レポート

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ジャガーとランドローバーのAWD解説と雪上試乗レポート

ジャガーランドローバー・ジャパンが雪上の試乗会を開催し、プレミアムSUVモデルばかりを集めたオールラインアップ試乗ができた。
<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

ラインアップはジャガーブランドからは2016年にデビューしたF-PACE、ランドローバーからは、レンジローバー、レンジローバースポーツ、ディスカバリースポーツ、そしてレンジローバーイヴォーク・コンバーチブルというモデルたちだ。

近年のジャガー&ランドローバーの躍進ぶりには目を見張るものがある。マーケティングの若林氏の説明によれば、グローバルでの販売台数が、年間一けた万台というレベルだったのが、2016年では56万台にまで伸ばしているという。国内でもジャガーとランドローバーを合わせると6000台規模にまで増えているのだ。

それには常軌を逸したとも言われる投資が行なわれており、完全オリジナルのエンジンを新規に製造したり、組み立て工場を新設したりという「やる気」が販売台数につながっているわけだ。従って、次々と新しいモデルがデビューを飾り、ジャガーではXEというジャガーの中では比較的小型のモデルがデビューし、大躍進の要因にもなっている。さらに、2016年はXFがフルモデルチェンジをし、ジャガー初のSUV、F-PACEのデビューも勢いを加速させている。

また、さらに新型2016年ロサンゼルスオートショーでデビューした電気自動車のSUV「I-PACE コンセプト」が2018年には欧州でデビューし、国内にも19年には導入されると言われているのだ。これも注目したいモデルだ。EV開発でもジャガーは積極的であり、今シーズン(2017年)はフォーミュラEに「ジャガーパナソニックレーシング」として参戦しており、重要な技術としての取り組み姿勢が見える。

一方のランドローバーはこれといった大きなモデル変化はないものの、国内での販売台数では2015年に3015台が翌16年に3259台と伸びており、ブランド力と根強いファンがいることが明確になっている。イヴォークの人気を一過性のものだという人もいるが、途中、アイシン製6速ATからZF製9速ATへとドラスティックに変えたことも、人気の陰りを防ぐ効果があったのではないだろうか。従って、現在でも人気が下がることなく、逆に中古車市場では3年落ちになっても、価値の下落度合が少ないモデルになっているという。

そして2017年には5代目となるディスカバリーのフルモデルチェンジも予定されており、勢いの止まらないジャガー&ランドローバーブランドということができるだろう。

■ジャガーF-PACEのAWDシステム
さて、注目のジャガーのSUV、F-PACEに装備される機能をお伝えすると、2.0Lターボのガソリンと「インジニウム」の愛称のディーゼル、そしてV6スーパーチャージドのガソリンというパワートレーンにZF製8速ATを搭載。つまり縦置き用トランスミッションなのでFR駆動ベースAWDでピュアスポーツカーのF-TYPEに採用されるAWDシステムIDD(インテリジェントドライブラインダイナミクス)を搭載している。ジャガーブランドはやはりSUVでもスポーツカーを意識していることがこうしたことからも理解できる。

仕組みとして通常100%後輪駆動で走行し、滑りを予測した場合に前輪へ駆動力を掛ける前後トルクベクタリングとなっており、FR状態からAWDに変化する。トランスファー部ではプラネタリーギヤを電子油圧アクチュエーターで湿式油圧多板クラッチで制御している。このトルク配分はシームレスに行なわれており、ドライバーが感じることはないが、ABSやESC、ブレーキトルクベクタリングなどと連携し、滑りの予測を常に行なう最新式のAWDを搭載している。

また特徴的な機能としてミューの低い環境での低速での自動走行が可能なASPC(オールサーフェイス・プログレス・コントロール)を備え、1.8km/hから30km/hの間で、滑らず低速のクルーズコントロールをする機能も備えている。

この機能はアダプティブ・ダイナミクスという電子制御ダンパーが500回/1秒のセンシングを行ない、同時にエンジン出力もコントロールするアダプティブ・サーフェイス・レスポンス機能が働くことで、ASPCが可能になるわけだ。

■レンジローバーイヴォークのAWD
一方のイヴォーク・コンバーチブルは真逆で、FFベースのAWDを搭載する。ZF製のFF用9速ATを搭載し、ランドローバー内製の「アクティブドライブライン」と呼ばれるAWDになっている。こちらはトランスファーにドグクラッチを使い、機械的に動力伝達するが、左右輪に多板クラッチを装備することで、走行が安定するとFF走行へと切り替わるタイプだ。搭載するエンジンは2.0Lのガソリンターボになる。

■レンジローバーとレンジローバースポーツのAWD
レンジローバーではべベルギヤを使ったセンターデフを持つAWDで、前後50:50のフルタムが特徴だ。また、電磁クラッチによる差動制限もあり、オフロードだけでなくオンロードでのスタビリティを狙っているAWDでもある。「ダイナミック・アクティブ・リヤロッキングデファレンシャル」という名称になっている。また、レンジローバースポーツも同様の機構があり、センターデフ付きのAWDになっている。

エンジンバリエーションではディーゼルでV6型ターボ、ガソリンでV6型3.0Lスーパーチャージド、V8型5.0Lスーパーチャージドがあり、3.0Lガソリンには340psと380psの出力違いが設定されている。

また、これらのAWD機構の他に、オールテレイン・プログレス・コントロール機能がある。こちらは前述F-PACEに搭載するASPCと同様の機構で1.8km/hから30km/hの範囲で滑らずに低速のクルーズ走行をする。そしてヒルディセントコントロールも備わり、下り坂でもアクセル、ブレーキに触れることなく安定して走行する機能も持つ。

路面状況に合わせてドライブモードを選択できるテレインレスポンスとテレインレスポンス2では、後者に岩場のモードが追加されている。また、レンジローバーとレンジローバースポーツにはエアサスペンションが装備され、最大75mm車高が上昇する。
■試乗レポート
試乗した特設会場はヒルクライムとモーグル走行が可能で、あとは雪上の一般道試乗というメニューだった。一般道ではイヴォーク・コンバーチブルに試乗し、会場の斑尾高原周辺をドライブした。この日は曇天ではあったがせっかくなので、オープンにして走行してみた。

防寒ジャケットを羽織り、ヒーターを付け周辺道路を走行すると、サイドウインドウを閉めた状態であれば、それほど寒さは感じない。シートヒーターも最初は最大にしていたが、10分も走れば「弱」まで下げても問題なかった。意外と気温が高いのか?とも思ったが、撮影のため、野尻湖湖畔に駐車して10分ていど車外にでていると寒さに震えるほどだったので、オープンとは言え車内はヒーティングがしっかりできていることを実感した。

雪国でこのレベルなので、都会であれば冬でもオープンは可能かもしれない。また、SUVのコンバーチブルという斬新さが受けているのか、国内のディーラーでは在庫切れ(2017年1月)のようで、納車待ちがあるようだ。

肝心の雪上インプレッションだが、装着するタイヤはピレリのウインタータイヤでスタッドレスより雪上性能が劣るものの、一般道を普通に走行する分にはなにも問題なく走行できた。登坂路で坂道発進を試すも、こちらも問題ない。アクティブドライブラインはFFからAWDへと瞬時に切り替わるのだが、まったく体感することなくスムーズに安定して走行できた。

レンジローバーとF-PACEは特設会場での試乗となった。こちらも無理に滑らそうとしてもいずれもスタビリティが高く、安定して滑らないで走行する。ヒルディセントでの下り坂は人間がコントロールするより、はるかに安定して安全に下ることを体験する。

F-PACEのASPC、レンジローバースポーツのオールサーフェイス・プログレス・コントロールはモーグルコースでは5km/hていどの設定速度だと、モーグルコースをなめるように走行するが、ポイントは低めの設定速度にするのがいい。つまり、路面状況を判断して速度設定しているわけではないので、あくまでも設定した速度で走行するからだ。モーグルコースを例えば最速の30km/hにした場合、その速度でモーグルコースに進入してしまうので、危険である。

F-PACEはモーグルコースの外周路の比較的フラットな場所を走行するメニューだった。こちらもウインタータイヤであったが60km/h程度の速度でも何事も起こらないで走行する。ESC(横滑り防止)を途中解除してもトルクベクタリング・バイ・ブレーキ効果などでコーナーを少し滑りながら曲がれるのだ。しかも車速はややオーバースピード気味で進入しても問題とはならないほどの安定性があった。

■まとめ
こうした高級車で雪上モーグルを走行する機会はまずないので貴重な体験をしたが、いずれのモデルもオフロードを走るための機構が異なりながらも、スタビリティは高く、雪道を安全に走行できることを体験した。また同時にインテリアが豪華であることは言うまでもない。が、高級なインテリアに包まれ、静かな車内から見る雪景色は選ばれたユーザーにしか体験できない羨望のシチュエーションであることも味わった。


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