ウォームアップ走行からアクシデントが相次ぎ、レース前半で赤旗終了となった全日本スーパーフォーミュラ選手権の第3戦スポーツランドSUGO。特に最終コーナーでのコースオフやクラッシュが相次ぎ、ウォームアップ走行中の山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)をはじめ、決勝では大嶋和也(docomo business ROOKIE)、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が相次いでクラッシュ。さらに太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)もセーフティカー(SC)解除のタイミングでコースオフを喫した。
レース後のメディアミックスゾーンには、上記4名のうち太田のみが出席。その時の状況や心境を語った。
「景色も何もない。真っ白です」Juju、SF初ウエットレースで視界に驚く/第3戦SUGO
「最終コーナーでリヤ(のグリップ)が抜けるなという感じでしたし、タイヤが温まっているという感じがまったくなくて、『これで本当にレースをやるの?』というグリップ感でした。特に僕はグリップ感がないと感じていて、フリー走行の時からそれをチームと話していました」
「その上に前が全然見えなくて、どこに飛んでいくか分からない状況。さらにSCが入ると、(タイヤを)温めることもできなかったです」
そうシリアスな表情で語る太田。グリップ感がないという不安がありながらも「再開した時はポジションがポジション(7番手スタート)なので、ある程度いかないといけない。そこでみんなクラッシュしていくという状況でした」とのこと。その中で彼自身もコースオフを喫したが、何とか立て直してクラッシュは免れ、コースへと復帰した。
ただ、それを経験したからこそ、主張したいことはたくさんあるという。
「ウォームアップ走行の時からあそこでクラッシュしているわけじゃないですか。僕もあと一歩で同じようなことになっていた身として発言させてもらうと……今は無線がリアルタイムで聞こえるようになって、僕も何回も『本当にやるの?』『やめた方がいいんじゃないの?』と言っていたし、他のドライバーもそうでした。運営に対してチーム側からもたくさん声が上がっていたなかで、再開されることになった。そこに関しては残念だなと思います」
「もちろんお客さんも来てくれているなかで、レースをやりたいという気持ちは理解していますけど、SUGOはエスケープゾーンも狭いですし、本当にスピンをして(バリアに)当たってコースに返ってくるかもしれない。本当に僕としては死の恐怖を感じるくらいでした」
「霧と水膜で裏ストレートと1コーナーはまったく見えない。それで避けようにもグリップがないから、前で何かあった時に止まれるのも止まれない。その中で(レースを)続けたことに関しては、どうなのかなと思います」
今回は別々のタイミングで計4台がコースオフを喫したが、他の車両も同じスピン状態になる可能性は充分にあったとのこと。仮に同じ周回で複数台がこういうことになっていたら、取り返しのつかない事態になったのではないかと、太田は指摘する。
「まったく同じところで起こっているので、仮に同じタイミングで2台に起きていたら先にバリアに行ったドライバーが後から来たドライバーに挟まれるシチュエーションになります」
「最近の(海外のフォーミュラレースで発生している)死亡事故はだいたいマシンの側面に他のクルマが当たっているケースが多いので、そうなりかねい状況でした。そういうところの恐怖はありました」と、太田はいつも以上に真剣な表情で語った。
■山本、大嶋、阪口の状況
最終コーナーでクラッシュしたその他のドライバーは、メディアミックスゾーンには現れなかった。しかしながら、3名とも無事の確認が取れている。
ウォームアップ走行中にクラッシュした山本は、メディカルセンターで診察したのち、チームのピットに戻ってきてスタッフたちと会話していたとのこと。チームのリリースでは「決勝直前のウォームアップでペースを上げ始めたところでリアが流れてクラッシュしてしまいました。決勝前にクルマを壊してレースを戦わずとして終わってしまったことでチームとスポンサーの皆さんにただただ申し訳ない気持ちです」とコメントを発表した。
14周目に入るところでクラッシュを喫した阪口に関してもチームリリースでコメントが掲載されており、「身体は大丈夫です。自分が思っていた最終コーナーのグリップではなく、大きなクラッシュをしてしまったので皆さんにはご心配をおかけしてしまいました。フリー走行のフィーリングが良かったので自信をもっていたのですが、レコノサンスラップのときにグリップがないことを感じ、レースがスタートしてからもやはりグリップしづらかったですね。レースが落ち着いてからはペースを上げられそうな雰囲気もあったのですが、その前にクラッシュで決勝を終えることになってしましました」とのこと。
大嶋に関してはコメントが出ていないようだが、チームの公式Xでは「大嶋和也選手は大きな怪我はないとの事でした」と報告しており、彼に近い関係者らも無事が確認できている。スピン時の詳しい状況については分からないが、タイミングとしては加速を始めていくタイミングだったことを考えると、太田と似たシチュエーションだったのではないかと予想される。
ひとまず4人が無事で良かったというのが感想ではあるものの、早急に改善策を立てないと、いつどこで同じシチュエーションが起きるか分からない。ここまでスピンをしているポイントが酷似しているとなると、何かしら共通の原因があるのは確かだろう。要因は複合的であり簡単に解決できる問題でないことは重々承知しているが、改善に向けた動きが始まってくれることを切に願いたい。
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