25年ルール 三菱デリカ全米デビュー
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】走破性も人気 三菱デリカ新型、どんなクルマ?【ディテール】 全102枚
米国には「25年ルール」という、ちょっと古いクルマに対する優遇措置がある。
製造から25年以上経過したクルマは米国の保安基準であるFMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard)やEPA(排ガス)の基準を満たしていなくても、シートベルトがなくても右ハンドルでも輸入や販売、登録が認められる制度である。
25年ルールが現在の形になったのは1998年だが、日本や米国で注目を集めるようになったのは2010年以降沸き起こって来たJDMブーム、とくに2014年に1989年デビューのR32スカイラインGT-Rが輸入解禁となった前後だと考えられる。
R34までのスカイラインのように米国での正規販売がされなかった日本車は特に人気が高い。
今回紹介する三菱デリカも米国では87年~90年まで4G64型2.4Lガソリンエンジンを搭載したFR車は発売されていたが、4×4の販売はされなかった。
アメリカ車には存在しない「本格オフロード走行も可能な4×4ディーゼル小型バン」というコンセプトも高く評価されており、熱狂的なデリカ4×4オーナーも少なからず存在している。
ところがこのデリカに大変な問題が発生している。
デリカ愛好家に「真相」聞いてみた
デリカ、大変な問題。登録に関することだ。
米国メイン州で突如として明確な理由も公表されず、25年ルールを経て輸入されたデリカの登録ができなくなったという。
新規の登録はもちろん、一度登録したデリカに対してもナンバー返納を命じられている。
これはいったいどういうことなのか。
アンディ・リリエンタールさんはオレゴン州ポートランドに住むフリーランスライターである。
彼は89年のデリカ・スターワゴン(L300 4D56 2.5L)と94年のデリカ・スペースギア(L400 4M40 2.8L)の2台を所有している。
「ディーゼルエンジン、本格的な4×4システム、さまざまな目的に合うインテリアの組み合わせは、キャンプや旅行、冒険のための素晴らしいプラットフォームです」(アンディさん)
「米国製の多くのバンよりも手頃な価格でちょうどいいサイズ。最高です!」
アンディさんは自身が運営する「Crankshaft Culture」や「GEARJUNKIE」 などのメディアで、デリカや日本の軽自動車が2021年5月頃から米国の一部の州で登録ができなくなっていることを報じている。
――デリカの登録は今どうなっていますか?
「現在、メイン州はデリカの路上使用を禁止しています。25年ルールで連邦政府が輸入を許可しても、公道を走るための登録は個々の州が担当しています」
「50州それぞれが免許や登録に関する規則を独自に設定することができるのです」
「メイン州のDMV(日本でいうところの運輸支局)ではデリカが登録不可になったことを明文化していませんが、今年5月頃から州内のデリカオーナーのもとに登録を廃止する知らせが届き始めています」
――登録の廃止は何が理由なのでしょうか?
「米国で販売されるクルマには、安全性と排ガス規制に適合していることを示すFMVSSステッカーがドアの内側に貼られています」
「しかし、25年ルールで輸入されたデリカなどには、このステッカーは貼られない」
「メイン州は、FMVSSステッカーがない車両は公道走行車として登録できないと言っているのです」
人気の軽自動車を登録禁止とする州も
――デリカ以外で、同様に登録禁止になったものはありますか?
「これも州によって異なりますが、日本から来た軽自動車の中には米国の一部の州で登録ができなくなっています」
「ロードアイランド州では現在、25年ルールを経て合法的に登録されている軽自動車(乗用車/トラック/バンとも)の登録廃止を始めています」
「メイン州がデリカに対しておこなっているのと同じ行為です。他の州もこれに追随するのではないかという噂もあります」
「これらの指導の多くはAAMVA(米国自動車管理者協会)によるものだと思われます」
――一度登録したものを登録不可にするとは大変なことですよね?
「デリカオーナーたちは、みなとても怒っています。デリカを毎日の移動手段として使っていた人もいればキャンプやレクリエーションに使っていた人もいます」
「あるオーナーは弁護士に相談したところ、訴訟で解決する可能性は低いが、地元政府を通じてロビー活動をするのがいいだろうと言われたそうです」
「しかし、デリカの所有者はナンバープレートを外してメイン州に返納することを余儀なくされました」
「この件に関しては、Specialty Equipment Market Associationの一部であるSEMA Action Networkと連絡を取り合っています。彼らはこの問題を調べているところです」
具体的な理由ははっきりしないが、メイン州でデリカが登録できなくなっていることは事実である。
メイン州では登録禁止の理由を「安全性と排ガス」だと言っているが……具体的にどこがどのようにダメなのか? 明らかにされていない。
またメイン州では同じタイミングでもう1台、登録できなくなっているクルマがある。
公道を走れぬデリカ「世界最大の文鎮」
1台、登録できなくなっているクルマ。かつて米軍で使用されていた初代ハマーである。
2台の共通点は、いずれもオフロード走行に卓越した機能を持つクルマであることだが、このことが安全性に影響するとは思えない。
25年ルールで合法となった古いクルマの中には衝突安全性が大幅に劣るクルマも多数存在するだろう。
となると2車のもう1つの共通点であるディーゼルエンジンの排ガスが理由なのだろうか?
なお、アンディさんはメイン州から遠く離れたオレゴン州ポートランドに在住しているため愛車のデリカが「文鎮」になることはない。
アンディさんのフェイスブックにはオレゴンの美しい大自然を背景に大切にメンテナンスされ、いきいきとしたデリカの写真が多数掲載されている。
古いデリカを維持していくためのパーツについてもほぼほぼ入手ができているそうだ。
「わたしたちのデリカは、免許、登録、保険が完備されています。デリカは日常の足ではなく、キャンプや冒険のためのレクリエーションカーとして使っています」
「わたしはこの車をここアメリカで問題なく運転し、所有することができています。大きめのタイヤ、少し高めのサスペンションシステム、ルーフラック、オフロードバンパー、ウィンチ、ライトなど、キャンプやオーバーランディングのために装備されています」
「部品は手に入りにくいものとそうでないものがあります。例えば、ブレーキはモンテロ(パジェロ)と同じです」
「オイルフィルターはこちらで調達できます。そのほかの部品は他の国から調達する必要があります」
「カナダにも米国のような輸入ルールがあり、25年ではなく15年で解禁となるためJDM車は米国より10年長く存在しています。したがって、そこには多くの部品会社が存在し、わたしのデリカのアイテムはカナダのブリティッシュコロンビア州から入手することができます」
「その他の部品は日本か、オーストラリアの会社から入手しています。インターネットが発達したおかげで、数年前に比べればずっと簡単になりましたね」
メイン州では世界最大の「文鎮」になりつつあるデリカだが、明確な理由はまだはっきりとわかっていない。
そしてもう1つ、軽自動車の登録禁止についても気になるところだ。引き続き、関係各所に取材をして真相を追求し記事として伝えていきたい。
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みんなのコメント
JDCがここまで人気が出てきたので、規制したい勢力が有るのは想像できる。