大きく変わらないことが最善の策
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
マイナーチェンジを受けたRS5スポーツバック。一部のRSモデルは、大きく変わらないことが最善だと、アウディは考えたのかもしれない。
メルセデスAMGのCクラスを個性的にしてきたV8エンジンは、間もなく消滅する。新しいBMW 4シリーズがまとう、フロントグリルへの心構えはできているだろうか。新しいM4にも、あのノーズが付くはず。
取り巻くプレミアム・ブランドの動向を見ると、ドイツ製ハイパフォーマンスカーを欲するドライバーは、アウディRS5を試乗する機会が増えるかもしれない。少なくとも、2年ほどは。アウディに初めて触れる人は、優れた質感に強く惹かれることだろう。
2020年版のRS5は、スタイリングの手直しが施され、インテリアはアップデートされた。少し古びて感じられたデザインは、最新版と呼ぶのに充分なものとなった。
一方で、エンジンや駆動系統で新しいトピックはほとんどない。エンジンは、ポルシェと共同開発した2.9LのV型6気筒ガソリン・ツインターボ。最高出力450psで、従来通りにエネルギッシュなサウンドを奏でる。
トランスミッションも変わらず、8速AT。トルクベクトリング機能の付く四輪駆動システム、クワトロを採用する。
サスペンションは5リンクのスチールコイルで、アダプティブ・ダンパーが標準装備。ダイナミック・ライド・コントロール(DRC)も備わる。もともと人気のなかった可変ステアリングのオプションは、英国では選べなくなったようだ。
パフォーマンス・モデルらしいインテリア
英国のRS5には、3段階のトリムグレードが用意され、ボディタイプはクーペとスポーツバックの2種類。4ドアのスポーツバックと比較して、2ドア・クーペの方が車重は35kg軽量だ。
カーボンファイバー製のルーフを選択すれば、さらに軽くすることもできる。英国での販売価格は、マイナーチェンジ前と変わらない。
今回試乗したのはRS5スポーツバック。着座位置がやや高く、前席のヘッドルームは筆者には狭く感じられた。一方でハイパフォーマンス・モデルらしいインテリアがお好みなら、超が付くほどスマートで、綿密にデザインされたRS5の車内は気に入るだろう。
最新のMMIを採用したインフォテインメント・システム用モニターの位置は高く、ロータリー・コントローラーは省かれた。操作するには腕を高い位置へ伸ばし、モニターを触れるしかない。システム自体はとても洗練され、操作しやすい。
メーターパネルは、バーチャル・コクピットと呼ばれる全面モニター式。グラフィックは鮮明で、表示レイアウトは変更ができる。
筆者が注目したのが、夜間走行時の設定。中央のモニターを完全に消し、メーター用モニターの明るさを最小限に抑えることが可能となっている。夜間ドライブで、人工的な光を長時間受けることによる目の疲労を、かなり軽減してくれる。
運転の集中力や、進行方向への視線維持にも、大きな違いをもたらすはず。他の自動車メーカーも、アウディの方針に習ってほしいところ。
掴みやすい動的性能のキャラクター
見た目の変化は小さい。マイナーチェンジ後のRS5だとわかりやすく主張したいなら、ターボ・ブルーかタンゴ・レッドの、追加された新色を選ぶのが良いだろう。
ラジエーターグリルの位置はやや低くなり、形はワイドになった。バンパーのエアインテークの形状も新しくなり、リアではディフューザーとテールライトも新デザインとなっている。
グループB時代のラリーマシン、クワトロから影響を受けたスタイリングだと主張するアウディ。筆者のアイコン的な存在でもある、かつてのRS2に塗られていたノガロ・ブルーが選べないのが残念だ。
アウディRS5がどんな走りを披露するのかは、ある程度予想ができる。ドライブ・モードを切り替えても、比較的シンプルで、挙動の予想も付きやすい。ドイツの高性能マシンとしては、珍しくなりつつある。
RS6のように、アクティブ四輪操舵システムは付かない。車高調整が可能なエアサスでもないし、アクティブ・アンチロールバーも備わらない。
おかげで、RS5の動的性能のキャラクターは掴みやすい。コーナリング時の挙動は予測しやすく、運転にも自信が持てる。といっても、単純というわけではない。
トランスミッションの設定には3段階があり、全体的なドライブ・モードの選択肢も3種類がある。さらにドライバーが個別に登録できるRSモードが2つ用意されている。
安全性が高次元で確保されたオンロード走行
RS5のドライバーなら、パワーステアリングの重さやダンパーの硬さ、トランスミッション、デフ、スタビリティ・コントロールの効きなど、個別の設定を変更してみたくなるはず。好みの設定が見つかったら、RSモードに保存すれば良い。
設定を探っていくと、適度な重さとレシオのステアリングを持ち、秀逸な正確性を備えた好みのRS5へ仕上げられる。しなやかで、引き締められた姿勢制御も素晴らしい。
過度に機敏な設定は、RS5には似合わない。爆発するような個性も、テールを派手に振り回す仕草も、このクルマの性格とは少し違う。
一体感のある操縦性という面では、RS5はさほど上位には入らない。それでも優れた実用性とラグジュアリーさを持ち、高い次元で安全性が確保されたオンロード走行を楽しめる。条件が許せば、かなりの速度域で。
フェイスリフトに合わせて、エグゾーストノートにもわずかに手が加えられた。やはりRS5を走らせるなら、しっかりエンジンは回したい。聴覚面でも楽しませてくれる。
V6ツインターボは、ライバルモデルほど常時太いトルクを発揮するわけではない。アクセルレスポンスは、4000rpmを超えるまでは少し柔らかく感じられる。
たくましさが一気に増すのは、4000rpm以上。7000rpmまで爽快に吹け上がる。低い段数での加速も鋭い。馬鹿げていると感じるほどではないけれど。
時代とともに高まるアウディRS5の訴求力
筆者は、現行のV8エンジンを積んだメルセデスAMGのCクラスや、美しいクーペのBMW M4を買い、後世のために残せれば、と考えている。一度消えてしまったら、恐らく今後復活することはないだろう。
そして、アウディRS5の訴求力が強く光ってくる。かつてのように、興奮でしびれることはないかもしれない。でも、濡れた路面で突然オーバーステアが顔を出したり、過度に突っ張った乗り心地で疲れてしまうこともない。
趣味のセカンドカーとしてではなく、日常的に使える高性能なドイツ製モデルを探しているなら、アウディRS5スポーツバックの訴求力は相当に強い。間もなくメルセデスAMGとBMWが迎える変化によって、アウディRS5の価値と魅力は、一層引き上げられることになるはずだ。
アウディRS5スポーツバック(英国仕様)のスペック
価格:6万9525ポンド(917万円)
全長:4783mm
全幅:1867mm
全高:1387mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:10.5km/L
CO2排出量:215g/km
乾燥重量:1742kg
パワートレイン:V型6気筒2984ccツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:450ps/5700-6700rpm
最大トルク:61.1kg-m/1900-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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みんなのコメント
ノーマル版とは全く別物なんだろうな
マイチェンで変わったのかな?