どんなクルマでも所有するためには、購入費用に加えて、燃料代や車検費用そしてメンテナンス費用、税金といったランニングコスト(維持費)が必要になる。
スーパーカーやヴィンテージカーといったクルマのランニングコストをオーナーに赤裸々に語ってもらうのがこの企画。
身内のSUVのキャラが濃すぎ!? ライバルと比べてマツダ2の存在感が売れていても薄いのはナゼか!!?
第2回は中学1年生の時にスクリーンで見て、心を奪われたデロリアンを25年越しに手に入れたオーナーに話を聞いた。
文、写真/萩原文博
スクリーンで観たデロリアンに心を奪われてしまった小林少年
2年前に手に入れたデロリアンDMC-12とオーナーの小林さん
70年代のスーパーカーブームと同じくらいクルマ好き男子に影響を与えているのが、映画やドラマに登場した劇中車だ。
「あぶない刑事」に登場した日産レパードをはじめ、「西部警察」に登場した日産フェアレディZ、スカイラインRSは当時テレビにかじり付いて見ていた男子にとって現在でも憧れのクルマとなっている。
今回、登場してもらう小林将大(こばやし・まさひろ)さんも劇中車に心を奪われた1人だ。当時、中学1年生だった小林さんは、1985年に封切られた「バックトゥザフューチャー」に登場したデロリアン・DMC-12に一目惚れをした。
20歳だったとき、200万円で販売されていたデロリアン・DMC-12を手に入れようとしたのだが、当時趣味のダイビングに使えるクルマとして、初代RAV4を購入。その後、フィアット500、マセラティグランツーリズモなどを乗り継いだ。
しかし、初恋のクルマだったデロリアン・DMC-12が忘れられず、まさに約25年越しの夢を叶えるためにデロリアン・DMC-12を探し始めた。埼玉県にあるショップに相談すると、なんとフロリダに走行距離3800マイル、約6000kmというデロリアン・DMC-12を発見。
そのクルマこそ、1200万円で購入したデロリアン・DMC-12なのだが、小林さんが最初のオーナーというレアなクルマだったのだ。
小林さんのデロリアン・DMC-12の現在のランニングコストは
●自動車税・・・2.8Lエンジンの10%増しなので5万6100円。
●駐車場代・・・自宅のシャッター付き駐車場に停めているので0円
●燃料代・・・主に週3回、お子さんの幼稚園の送り迎えに使用。タンク容量は51Lで燃費はだいたい10km/L。
●タイヤ代・・・フロント195/60R14、リア235/60R15というサイズで、現在は購入時のタイヤを装着しているが、リアタイヤのサイズがレアで該当するサイズがほとんどない。
●メンテナンス代・・・部品の調達はできるが、作業をしてくるショップを探すのが大変。だいたい、何か壊れると10万円くらいかかる。ウィンドウのモーターが壊れたりして約2年間で20万円くらい掛かった。
RRの駆動方式を採用したスポーツカー
デロリアンDMC-12のリアスタイル
小林さんが所有するデロリアン・DMC-12は1981年~1982年の間、アメリカの自動車メーカー、デロリアン・モーター・カンパニーが北アイルランドの工場で生産していたモデルである。
販売不振などによりデロリアン・モーター・カンパニーは1982年に倒産するものの、約8975台が生産された。
正式名称はデロリアン・DMC-12だが、デロリアン・モーター・カンパニーは、このモデルしか生産していないので、デロリアンと呼ばれることが多い。
デロリアン・DMC-12は、デザインはイタルデザインのジウジアーロが担当。機関系はロータスが請け負った。運転席後方のRRに搭載するエンジンはプジョー・ルノー・ボルボによって共同開発された2.8LV型6気筒エンジンで、ミッションは5速MTが組み合わされている。
何と言ってもデロリアン・DMC-12の特長は、外装全体を無塗装のステンレスで覆ったこと。さらに表面は加工時のサンドペーパーの傷をそのまま残したヘアラインが残っている。そして、ガルウィングだ。
小林さんのクルマはコーションプレートに1981年11月生産と書かれている。1981年式のデロリアン・DMC-12は製造スタッフの経験不足などにより、クオリティがイマイチだったとのこと。
取材時も水温計が振り切れていたが、小林さんはまったく意に介さない。実はデロリアンオーナーにはバイブルと呼ばれる本があるのだ。それは、日本のデロリアンオーナーズクラブの会長が書いた本のこと。
デロリアン・DMC-12のウィークポイントや対処の仕方をはじめ、歴史などデロリアン・DMC-12に関わることがすべて書かれているという。まさにバイブルだ。
所有していて喜びを感じられることを聞いてみると、クルマを停めると写真を撮られまくることだという。また、デートとか出掛けることができないと小林さんは笑いながら話す。
一方、所有していて苦労することは、40年前のアメリカ車らしく壊れること。購入して3日目でオーバーヒートしたという。
しかし、オーナーズクラブに参加し、会長の書いたバイブルを手に入れてからは、大半のトラブルに対処できるようになったという。
ただ、治してくれるショップがないのが悩みの種で、オーナー同士の繋がり、情報交換がなければ維持していくことは難しいと話す。
元々、カメラマンのアシスタントからIT系会社の副社長を経て、現在は自称冒険家という小林さん。41歳の時にはランドクルーザープラドで、1年2カ月新婚旅行を兼ねて世界一周の旅を行った。
この壮大な旅行を行った理由は30歳の時に留学したオーストラリアで知り合ったフランス人が、オートバイで世界一周を2回したという話を聞いたから。
現在はその世界一周を行ったランドクルーザープラドとデロリアン・DMC-12の2台を所有している。ランドクルーザープラドは世界一周の思い出。そしてデロリアン・DMC-12は若い日の思い出のクルマ。
どちらのクルマも小林さんのやり遂げたい夢を実現させたリアルな結晶といえる存在なのである。
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