新型レヴォーグは1.8リッター直噴ターボに1本化
スバルと言えばスポーツワゴン、レガシイのイメージを抱いているファンは多いと思う。そして国内版レガシイ・ツーリングワゴンなき後、そのポジションを引き継いだのが、2014年にデビューしたレヴォーグである。
スバル・レヴォーグだけがナゼ売れる? 人気薄のステーションワゴン市場で気を吐く理由
今回は、2020年大注目車の1台と断言できる、2代目となる新型レヴォーグのGT-H EXとSTI Sport EXの2台を乗り換え、東京から軽井沢を目指す、市街地、首都高、関越道、上信越道、そして軽井沢のワインディングロードを含む約200kmのロングツーリングの機会を得た。そう、待望の初公道試乗である。
最初にステアリングを握ったのは、話題のアイサイトの進化版、アイサイトXを搭載したSTI Sport EX。その「革新を超える革新」を確かめた。周知のとおり、新型レヴォーグのパワーユニットは1種類。先代の1.6リッター、2リッターに代わり、水平対向エンジンはその中間の1.8リッター直噴ターボに1本化。そのスペックは177馬力/5200-5600rpm、30.6kg-m/1600-3600rpmというもので、先代の1.6リッターの170馬力、25.5kg-mに対して、とくにトルクアップが顕著。全車AWDの燃費性能はJC08モードで16.5km/L、より実燃費に近いWLTC総合モードで13.6km/Lとなっている(ちょっと物足りない?)。タイヤサイズはGT-H EXとともにヨコハマブルーアースの225/45R18となる。
東京・恵比寿がスタート地点だったのだが、幹線道路に出る道は幅が狭く、駐車車両も多いのだが、全長4755×全幅1795×全高1500mmの日本の道にジャストなボディサイズをキープしているから、運転のしやすさは文句なし。体にフィットする自然なサポート性に優れたシートのかけ心地も、これから始まるロングツーリングにぴったりだと思わせる。また、12.3インチのフル液晶カラーメーター、11.6インチの縦型センターインフォメーションディスプレーがもたらす先進感にも心奪われる。そして、新設定のSOSコール、スバルiコール(安心ホットライン)機能よる、何があっても心配なし!! と思える安心感が、日常、ロングツーリングにかかわらず、大いなる余裕を生んでくれることを改めて実感してのスタートだった。
市街地の乗り心地は、18インチの大径タイヤから想像するよりずっと快適だ。いや、上質すぎるタッチと言っていい。エンジンは下からトルクがあり、アクセル操作に対してリニアに反応してくれるので、じつに走りやすい。そして素晴らしく静かだ。水平対向エンジン独特のビートを感じさせてくれるのは走り出し、低回転域のみであり、スバルファン、フラット4ファンとしては物足りないかも知れないが、それが新世代のスバルユニットの正義、持ち味ということだ。
首都高速の入り口から本線に合流する場面では、ちょっと大げさに言えば、新エンジンは電動車的に回転を上げ、ウルトラスムーズに加速する。荒れた首都高の路面を、低重心感覚にして舐めるように走るフラットライドは、上質そのもの。ザラついた路面、継ぎ目越えなどでの乗員にやさしいマイルドさ、サスペンションの収まりも見事というしかない。
アイサイトXの制御は適切かつ確実!
が、そんなことだけに感動している場合じゃない。さっそく、首都高名物の渋滞に遭遇。ここでいよいよ新型ステレオカメラと前後左右4か所に配置されたレーダー、リヤソナー、電動ブレーキブースターによる、アイサイトXの、0~50km/hで可能となる渋滞時ハンズオフアシストを体験。ちなみに渋滞追従機能&停止保持機能付きACCとは、完全に停止したあとも、ペダルまたはスイッチ操作不要で自動再発進してくれるところが違いであり、先進的便利さと言える。
ハンズオフOKの制御中はアイコンが青になり、視覚的にも安心感がある。とにかく、制御は適切かつ確実で、減速、追従性能、レーンキープ機能も完璧。渋滞が苦にならない、どころか楽しくなるほどだった。これならペットボトルの蓋を開けられるし、サンドイッチを食べることだって安全にできるではないか。もっとも、しっかり前を見ていることが前提で、横見をしていると、カメラが監視しているため、警告後、ハンズオフアシスト機能はキャンセルされる。
3D高精度地図ユニット、GPSだけでなく、準天頂衛星による運転支援は、自動車専用道路でのカーブ前速度制御も行う。一般的なACCはカーブだろうが料金所だろうが、設定した速度、または前車に追従した速度で突っ込み、前車がいない場合は思わずブレーキ!! となったりするのだが、アイサイトXは侵入するカーブの曲率に合わせた速度に制御(減速)してくれるから安心だ(減速制御してくれないカーブは、その速度で曲がれるということ)。
それは料金所でも同様で、3D高精度地図ユニットが料金所まで読んでいるため、料金所手前の適切なタイミングでETCゲートを通過できる速度まで減速、制御。そして料金所通過後の再加速も、歯がゆさなしの勢いだから、アクセルの踏み増しをすることもないのである。つまり、アイサイトXを一度セットしてしまえば、自動車専用道路では追加の操作不要ということだ。
クルージング中はエンジンのトルクアップによって、ほぼ1500回転以下で走っているシーンがほとんどとなるため、アイサイトXに守られた、静かで快適すぎるドライブを味わせてくれる関越道、上信越道では、アイサイトVer.3から定評ある、車線のど真ん中を走るレーンキープ性能とともに、アクティブレーンチェンジアシストをリアルワールドで実体験。常時、メーター内にレーンチェンジの可否を示す表示があるのも安心で、レーンチェンジが可能になると、可能な車線(左右)が表示され、普段は自動で戻らないウインカーレバーを最後までカチッと倒すことで、自動レーンチェンジを開始。終わるとウインカーが自動で戻る仕組みとなっている。ここで感動できるのが、まるで運転の達人、スーパーテストドライバーがレーンチェンジを行ったかのようなスムースさと「おつり」のなさ。下手にレーンチェンジを行うと、揺れ戻しりのような「おつり」が発生したりするが、それがまったくない。後席同乗者にレーンチェンジしたことを気づかせないほどの優秀な自動レーンチェンジ制御と言っていい。クルマ酔いしやすい同乗者、ペットにも優しいはずだ。
STIスポーツのほうがロードノイズが気にならない
また、STI Sportならではの機能として、ドライブモードセレクトがある。コンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+、インディビジュアルの5つのモードが切り替えられ、パワーユニット、ステアリング、電子制御可変ダンパー、エアコンに至るまで、可変できるのだ(インディビジュアルならすべての項目を自分好みにセットできる)。しかも、その可変幅が確実かつ明確で、コンフォートなら高級サルーンの乗り味に。スポーツなら硬派なスポーツカーのドライブフィールに大変身。「なんとなく変わったかも」というドライブモード機能のクルマもあるなかで、新型レヴォーグのドライブモードセレクトは間違いなく使える機能だと思えた。
途中、関越自動車道上のパーキングエリアで、STI Sport EXからGT-H EXに乗り換える。すると、タイヤサイズはまったく同じなのに、ステアリングレスポンス、ロードノイズに、STI Sportとの違いが見られた。ステアリングレスポンスに関しては、STI Sportはステアリングセンターから切込む際、「遊び」ゼロの精度感で精密にレスポンスし、ノーズの向きを気持ちよくリニアに変えてくれるのに対して、GT系はやや「遊び」があってからレスポンスしてくれるという違いがある。また、ロードノイズも、同サイズ、動銘柄のタイヤにして、STI Sportのほうが圧倒的に気にならなかったのである。
その理由は、先に触れたドライブモードセレクトと、サスペンションにある。まずステアリングレスポンスについては、STI SportはZF製の電子制御可変ダンパー、それ以外のグレードはカヤバ製のコンベンショナルなダンパーを用いているのだ。電子制御可変ダンパーのほうは、ドライブモードでダンピングを3段階に変更できるだけでなく、ステアリングの切り角、路面からの入力、Gなどを検知した瞬間に4輪を瞬時に電子制御=アダプティブ制御。結果、乗り心地はもちろん、パワーステアリングそのものの制御の違いによって、元々、操舵力がやや重めでセンターがよりしっかりしているSTI Sportは、ステアリングレスポンスが瞬時に立ち上がり、また、安定感、直進感の良さを、かなりハイレベルなところで、さらにワンランク高めているというわけだ。
では、STI Sportのほうが優れていると、さまざまな路面で感じさせてくれたロードノイズの差はどこにあるのか。じつは、標準系サスペンションはゴムブッシュとスチールハウジングを用いているのだが、ZF製の電子制御可変ダンパーを使うSTI Sportのほうは、可変幅の広さによる、低速域で路面から入ってきやすい高周波のノイズをカットすべく、ウレタンブッシュとアルミハウジングを奢っているのだ。それがロードノイズ性能の差になって現れていたのだ。
上信越道・碓井軽井沢ICからはプリンス通りに至る、延々と続くワインディングロードとなる。そこでは、新型レヴォーグの盛り上がるパワー、シャープでリニアさ極まるステアリング、引き締まった足まわりによって、登坂路をぐいぐいと余裕たっぷりに上っていく。まさに真正AWDスポーツワゴンそのものの、上質でハイレベルかつ意のままの操縦感覚、回頭感、まるで路面をなめるような安定感、低重心感たっぷりのスポーティな操縦性の気持ち良さ、そしてフラット極まる乗り心地を堪能することができたのだ。
水平対向エンジンが先代より40mm後方=車体中心寄りにレイアウトされていることも忘れてはならず、それが回頭性の良さを高めている要因とも考えられる。しかも、エンジンを高回転まで回すシーンでも、車内は終始、静かそのもの。後席乗員との会話も用意で、それこそ寝ている乗員やペットを起こすこともないかもしれない(あくまで運転の仕方によりますが)。
STI Sport EXがベストバイグレード!
というわけで、市街地、首都高、高速道路、ワインディングロードをおよそ200キロ走破した結論としては、新型レヴォーグの運動性能、走りの質感、快適性の高さ、進化の大きさ、洗練度に、改めて驚かされ、納得できたのだ。そしてまた、アイサイトXを備えた、STI Sport EXこそが、どう考えてもベストバイグレードだということも、上記のさまざまな理由から、確信したのである。
GT-H EXとの価格差は38万5000円にもなるが、本革スポーツシート、ドライブモードセレクト、電子制御可変ダンパー、内外装のSTIスペシャルパッケージ、もっと言えば、将来の下取り価格も含めて、価格差は当然!! という印象を強く持てた。個人的にグレードを選ぶなら、アイサイトX搭載車は絶対として、迷うことなく”男は黙ってSTI Sport EX”である。実際、先行予約でのグレード別予約率は、STI Sport EXが54%、GT-H EXが31%で(STIスポーツ2グレード計で57%)、アイサイトX選択率は93%に達するというから、新型レヴォーグのユーザーは、なるほど、わかっている。
ところで、新型レヴォーグはスポーツワゴンであり、ワゴン機能にも触れずにはいられない。ボクは過去にもステーションワゴンを2台、今でもドイツ製コンパクトワゴン愛用しているほどのワゴン派であり、だからワゴン機能にかなりうるさいのだが、新型レヴォーグはその点でも文句なしだった。
パッケージ面では、25mm伸びたホイールベースのすべてを、リクライニングが1段できる後席のニースペースにあて、身長172cmの筆者のドラポジ背後に着座すると、ニースペースは先代の175mm(これでも十分に広いが)に対してぴったり200mmとなり、ゆったり足が組めるほど(頭上空間120mmはほぼ不変)。同時にフロアからシートまでの高さ=ヒール段差も高くなり、椅子感覚の自然な姿勢で着座できるようになったのも褒められる点だろう。先代になかった後席エアコン吹き出し口も完備。より広く、空調も行き届く、アップライトな姿勢で座れる後席になっているのだ。
ラゲッジスペースは、フロア奥行き1070mmこそ先代同等だが、それ以外の部分はすべて拡大。先代比+10リットルのVDA容量492リットルを確保し、ゴルフバック4セット、4人分のアウトドアグッズを、後方視界を確保した上で積み込むことができる。さらに床下に69リットルものサブトランクを備えているから、荷物の積載性は完璧である(機内満ち込みキャリーバッグがすっぽり入る!!)。
さらに、後席を格納した時のフロアは完全にフラットで(フロア奥行き約1640mm。後席背面までなら約2000mm)、開口部に段差がないため、重く大きな荷物の積載、出し入れ、ワゴンとしての使いやすはもう抜群だ。しかも、リヤエンブレムに手やひじをかざすだけでバックドアが開く新開発パワーリヤゲートは、両手に荷物を持っているとき、両手にペットをひいているときなど、もう便利この上なし。 ※鼻で開くか実験したら、
開いた!!!
それだけじゃない。先代レヴォーグの後席は6:4分割だったのだが、新型は4:2:4分割となり、センターの2部分のみを倒してアームレストとして活用できるとともに、センタースルー機能でスキー板のように長尺物を車内側に積み込むことができる。また、大型犬などのペットをラゲッジルームに乗せなくてはならない場合でも(後席推奨)、後席の飼い主とのアイコンタクトが容易になり、エアコンの風が届きやすく、お互い安心、快適に新型レヴォーグの極上のドライブを楽しむことができるのである。
そう、新型レヴォーグは、走りをメインに考えるスポーツワゴンユーザー、スバルファンはもちろん、アウトドア派、サーフ&スノースポーツ派、そして愛犬家にも、これ以上望めない、国産スポーツワゴン史上最高の1台と断言したい。なんて書いているうちに、過去から現在に至るまでワゴン派のボク(わが家)としては、無性に欲しくなってきているところだ……(本革シートはわが家には適さないので、STI Sport EXのファブリックシートがあれば最高!!)。
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みんなのコメント
ただ顔面のデザインが自分の好みから外れてしまった。。。
先代はすごく好きなデザインなんだけどなあ。