廉価でありながら「音」にこだわったモデルを紹介!
日本の多くの家庭では、オーディオを大きめの音量で満喫することはなかなか難しい。イヤホンの普及はそうした音楽環境の反映とも言える。しかし、家庭でオーディオをしっかり聴けない悩みを、イヤホンなしで解決する方法がある。
ロードノイズなどが出る走行中でもクルマの高級オーディオは意味があるのか?
それは、車内空間をマイ・リスニングルームにすること。車内は音楽を聴くのに、決して最適な空間ではないものの(音を反射するガラス、プラスチックと、音を吸収するシートファブリックなどが入り交じった複雑な音空間であるため)、車種によってはオーディオ、車内サウンドに凝ったクルマもあるのだ。
ただし、ここでは超高級オーディオを搭載した高級車ではなく、コンパクトかつ廉価でありながら、オーディオ、車内サウンドに特別にこだわったクルマに絞って紹介することにしたい。
1)マツダMAZDA3
まず、新型車では、MAZDA3が挙げられるだろう。これまでマツダはアメリカン・オーディオの雄、BOSEと手を組み、車両の開発時点からBOSEとタッグを組んで、ほとんどの新型車にBOSEサウンドシステムをオプション設定していた。
BOSEサウンドシステムは音量を絞ってもしっかりと再現される低域、リアルな中域、のびやかな高域に特徴があり、アメリカンポップスからクラシックまでを見事に再生。まるで目の前にヴォーカリスト、バンドがいるような臨場感溢(あふ)れる豊かなサウンドを聴かせてくれるのだ。
しかし、MAZDA3の場合、BOSEサウンドシステムの用意はもちろんだが、MAZDA HARMONIC ACOUSTICSと呼ばれる標準オーディオでもパイオニア製8スピーカーシステムを搭載。オーディオ自慢のクルマとして登場している。
そもそもMAZDA3は車内のノイズ、振動の徹底排除を目指した遮音、吸音性能の向上が目覚ましい。音の伝わる時間や方向までしっかりと計算された、ボディから音にこだわった車内空間なのである。
その一例が、ドアのウーファースピーカーによる大きな穴の排除だ。そのため、ウーファースピーカーをカウルサイド四隅に移動させ、エンクロージャーに収めることで、結果的にスピーカー位置がトゥイーターなどとともに前席乗員の近くに配置されることになる。
そんなオーディオシステムから再生されるサウンドは、とにかく自然で、適度な音量で聴いている限り、低域、中域、高域のバランスが見事で心地良く耳に届く。国産コンパクトカーの標準オーディオとしては、屈指の出来と言っていいだろう。
これまで、標準オーディオのフツーな音を聴いていた人は、感動できるに違いない。とはいえ、さすが、サラウンドシステムやノイズ補償システムまで搭載するOPのBOSEサウンドシステムは、一枚も二枚も上手なのだが……。
ちなみに、MAZDA3は走り、デザイン、そして「音」を包括的にこだわってつくられたクルマ。まずは走りありきなので、誤解なきように。
「走行性能なんか価値としない」とメーカーが言い切ったモデルも
2)トヨタbB(2代目)
さて、国産コンパクトカーで初めて音、そして光にまでこだわったクルマといえば、2005年にデビューした、2代目トヨタ・bBだろう。何しろ開発担当者が「走行性能なんか価値としない、止まってナンボのクルマ型ミュージックプレイヤー」って言い切るぐらい。開発テーマはズバリ「音×光×まったり」。
夜ならグレードによって最大11カ所ある妖(あや)しく光る青紫イルミネーションが9スピーカーオーディオの音と連動して変化(ゆらぎモード、常時点灯モードもあり/アームレストコントローラーも一部グレードに完備)。クラブチックな音と光の洪水に身を任せられるんだから若者にはたまらなかった。
3)ホンダN-BOXスラッシュ
N-BOXスラッシュは、初代N-BOXをベースにルーフをぶった切り、N-BOXより全高を100mmも低めた、アメリカンかつファンキーなヒンジドアのチョップトップモデル=BOXクーペだ。
ユニークなのは、ルーフを塗り分けたツートーンを含むカラフルで多彩なボディーカラーに加え、カスタムカーの本場、アメリカ仕込みのインテリアカラーパッケージがあること、だけではない。車両の開発コンセプトは「クルマ1台ミュージックBOX!」なのである。
開発責任者の趣味を反映した!? オーディオへのこだわりはすさまじく、ディスプレーオーディオと組み合わされるオーディオシステムは、詳密なサウンドマッピングに加え、前席部分にFOSTEX製17cmバックロードホーン型サブウーファー(足もと)、17cmケブラーコーンスピーカー、アルミドームツイーター、後席部分に12cmケブラーコーンスピーカー、アルミドームツイーターを配置。
8+1スピーカーをパイオニア製7チャンネル、 360Wのアンプで駆動する、重低音から高音までクリアに再生する軽自動車用として本格的すぎるシステムであり、サブウーファーの音をリスナーの前から再生するのが肝となっている(一般的にはトランクに設置)。
サウンドマッピング装着車は非装着車に対して防音材が追加され、より静かで音楽を楽しみやすい車内空間を確保。さらに、より大音量でサウンドマッピングシステムを楽しみたいユーザー向けにアクセサリーとしてプロオーディオショップでのサウンドチューニング に匹敵する「ピュアサウンドブース」と呼ばれる純正デッドニングパーツも用意されていたのだからすごすぎる。
この2台に関しては、間違いなく、当時、走りよりも「音」にこだわってつくられたクルマそのものである。
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