2024年F1第9戦カナダGP。ドライからウエットへコンディションの変わった決勝レースは、前戦モナコで勝利を飾ったシャルル・ルクレールがトラブルでリタイア、マックス・フェルスタッペンはまたもマシンの弱点に悩まされ、ランド・ノリスはセーフティカーのタイミングでトップの座を失うなど、一筋縄ではいかない展開となった。カナダGPを無線とともに振り返る。
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F1技術解説:メルセデスがカナダで速かった理由(2)課題克服のため再設計したフロントウイング
雨模様の決勝レース。すでに路面は完全ウエットだが、このまま乾くのか、再び雨が降るのか。情報は錯綜し、ドライバーもエンジニアも難しい判断を迫られた。
フォーメーションラップ
ピエール・アムラン(→ダニエル・リカルド):雨雲が来て、10~15分降り続けるぞ。
しかし実際には雨は降らず、路面は周回ごとに乾いていった。
レース序盤、シャルル・ルクレール(フェラーリ)のパワーユニットに異常が検出された。
4周目
ブライアン・ボッツィ(→ルクレール):エンジンに変な兆候があるが、確認中だ。そのまま行ってくれ。
5周目
ルクレール:大丈夫なのか?
ボッツィ:問題がある。でもプッシュしてくれ。
トラブルを抱えながらの走行に、ルクレールの口調は当然ながら厳しくなる。
7周目
ルクレール:どれくらい(ペースを)失っている?
ボッツィ:けっこう失っている。プッシュし続けろ。
ルクレール:だからどれくらいか数字をくれ!
ボッツィ:0.5秒だ。
ウエットタイヤでスタートする賭けに出たケビン・マグヌッセン(ハース)。14番グリッドから一気に4番手まで順位を上げた。しかし乾いていく路面でペースが極端に落ち、チームがピットインを指示。ところがタイヤが用意されておらず、大幅なタイムロス。14番手まで後退してしまった。
マグヌッセン:準備できていないなら、もう1周後でもよかったんじゃないのか?
マーク・スレード:すでに準備できてたはずだった。どうしてこうなったのか、今は不明だ。申し訳ない、ケビン。
レース序盤は、ポールシッターのジョージ・ラッセル(メルセデス)が首位を堅持する展開だった。
12周目
マーカス・ダドリー:20分後に雨がくるぞ。
ラッセル:僕にどうしてほしい?
ダドリー:タイヤをとにかく持たせるんだ。
しかし雨雲はサーキットをかすめた程度で、路面はさらに乾いていった。
マックス・フェルスタッペン:これから20分走り続けたら、スリックになっちゃうよ。
15周目
ボッツィ(→ルクレール):もし雨が来ても、同じセットでいいか?
ルクレールの返答はなかった。すでにすり減っているインターで、雨が降って来ても走り続けられるか。ドライバーには答えようがない。
25周目、ローガン・サージェントがスピン、コース上に止まってしまう。
ガエタン・イエゴ:戻って来れるか?
サージェント:いや、無理だ。
イエゴ:壁に触れたんだな。
サージェント:そうだ。すまない。
この頃から雨が降り出し、路面は再び濡れていった。スリックに履き替えていたルクレールには、最悪のタイミングだった。
ルクレール:もう一度、ピットインすべきじゃないか? 雨がすごい。
ボッツィ:いや、2周の間降るだけだ。その後ドライになる。
ルクレール:雨がひどいんだって! 1周10秒は失ってる!
ボッツィ:わかった。インターに履き替えよう。
これでルクレールは最下位に後退。42周目にリタイアを喫した。
42周目
ボッツィ:チャールズ、リタイアだ。
ルクレール:グッドアイデアだね。
全戦モナコの勝利から一転、まったくいいところのなかったルクレールだった。
ランド・ノリス(マクラーレン)のピットインのタイミングにも助けられ、首位に上がったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)。しかしモナコに続き、マシンが跳ねる問題に不満を訴える。
47周目
フェルスタッペン:ライドが本当に悪い。モナコの再現だ。サスペンションが固まってる。縁石に全然触れない!
一時は3番手に落ちていたラッセルだったが、49周目にノリスをかわして2番手に浮上する。しかし51周目にターン8のブレーキングで水たまりに左前輪を落とし、ノリスに抜き返されてしまう。思わず汚い言葉を吐くラッセルに、トト・ウォルフ代表が無線に割って入った。
51周目
ラッセル:XXXX
ウォルフ:ジョージ、集中しろ。集中だ。
52周目、セルジオ・ペレスが単独クラッシュを喫する。
ヒュー・バード:リタイアだ。
ペレス:あ~xxx。本当に申し訳ない。
バード:みんながあそこで飛び出している。君はついてなかっただけだ。
54周目には、カルロス・サインツ(フェラーリ)もターン6で単独スピン。アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)が巻き添えを食ってしまう。
サインツ:コントロールを失った。どうしようもなかった。
60周目前後、5番手を単独走行するルイス・ハミルトン(メルセデス)が、「ミラーが汚い」と文句を言ってきた。
ハミルトン:君たち、ミラーをきれいにしてなかったね。後ろが全然見えないんだけど。
ピーター・ボニントン:悪かった、ルイス。ただ後ろとの距離はかなり開いてる。前だけを見ればいい。
68周目
ダドリー(→ラッセル):チームメイトとレースしていい。ただしクリーンにね。
直後にラッセルは最終シケインで、ハミルトンを抜き去っていった。
レース終盤、アルピーヌの2台は、エステバン・オコン9番手、ピエール・ガスリー10番手で周回していた。しかしガスリーの方がペースが速く、順位入れ替えの指示が出た。
ジョシュ・ペケット:ピエールを抜かせろ。ヒュルケンベルグが2秒背後に迫っている。
オコン:理由はなんだ!
ペケット:リカルドを抜くためだ。
オコン:そんなの忘れろ!
ペケット:いいか、あと3周しかない。譲るんだ。
オコンは指示を無視し続けた。
ガスリー:どうして抜かせてくれないんだ?
カレル・ルース:エステバンには、指示済みだ。あと2周しかない。必要なら、自分から抜いていってくれ。
結局オコンは、チェッカー2周前にガスリーに順位を譲った。ガスリーがリカルドを抜くことはできなかったが、再びオコンに順位を戻すことはなかった。その措置に、オコンは皮肉で答えた。
70周目
ペケット:エステバン、順位の変更はない。最後までプッシュしろ。
オコン:そりゃあ、最高だ。ありがとう。
チェッカー後
ジャンピエロ・ランビアーゼ:マックス、素晴らしい。なんてレースだったんだ!
フェルスタッペン:簡単じゃなかったけど、やったね!
オコン:僕はいい人すぎる。
ペケット:それでも10位だ。1ポイント獲れた。
オコン:やるべきことをやっただけだ。でも君らは、そうじゃなかったね。
ペケット:そこはあとで話し合おう。
オコン:そう。いつものようにね。
今季限りで放出の決まっているオコンとチームとの関係は、どんどん悪くなっているようだ。
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