■鉄鋼業界でもっとも野心的で先進的な非化石スチール開発プロジェクト
ボルボ・カーズが2021年6月16日、自動車業界で使用される化石燃料を使わない高品質な鉄鋼の開発プロジェクト「HYBRIT」を開始すると発表した。
HYBRITは、スウェーデンの鉄鋼メーカーであるSSAB、鉄鉱石メーカーのLKAB、エネルギー会社のVattenfallによって共同で立ち上げられたプロジェクトで、鉄鋼業界でもっとも野心的で先進的な非化石スチール開発プロジェクトである。
このプロジェクトは、鉄鉱石を原料とした製鉄に従来必要とされていた原料炭を使用せず、電気と水素で代替することを目指している点で注目されている。なぜならば、世界初の化石燃料を使用しない製鉄技術は、ほとんど二酸化炭素が排出されないことが期待されているからだ。
このコラボレーションの一環として、ボルボ・カーズはスウェーデンのルレオにあるHYBRITのパイロットプラントで製造された水素還元鉄から作られたSSABのスチールを採用する最初の自動車メーカーとなる。このスチールは、テスト目的でコンセプトカーに採用される可能性もあるという。
そんなSSABは2026年までに、化石燃料を使用しないスチールを商業規模で市場に供給することを目指している。そして同時にボルボ・カーズも、自社の生産車に化石燃料を使用しない鉄を用いる最初の自動車メーカーとなることを目指すことになる。
ボルボ・カーズのホーカン・サムエルソンCEOは次のように説明する。
「二酸化炭素排出量を継続的に削減していくなかで、鉄鋼がさらなる進歩のための主要分野であることはわかっています。SSAB社との非化石スチール開発により、当社のサプライチェーンにおいて大幅な排出削減が可能になります」
SSAB社の社長兼CEOであるマーティン・リンドヴィスト氏も「私たちは、最終顧客に至るまで、完全に化石燃料を使用しないバリューチェーンを構築しています。私たちの画期的な技術は、カーボンフットプリントがほとんどなく、顧客の競争力強化に貢献します。ボルボ・カーズと協力して、未来のクルマのために化石燃料を使わない鉄鋼製品を開発することを目指しています」と述べた。
世界の鉄鋼産業は現在、原料炭に依存した高炉を用いた鉄鉱石ベースの製鉄技術が主流であることから、世界の直接炭素排出量の約7%を占めている。
ボルボ・カーズの場合、自動車に使用される鉄鋼生産に関連するCO2排出量は、自動車に使用される部品の材料や生産に伴うCO2排出量全体のうち、従来型のクルマで約35%、電気自動車(BEV)では約20%に相当するという。
そのため、SSABとのコラボレーションは、自動車業界でもっとも野心的なボルボ・カーズの総合的なカーボンニュートラルに向けた計画に関する最新の取り組みであり、この計画の中心となるのは、2030年までに完全な電気自動車ブランドとなり、純粋な電気自動車のみをラインナップするというボルボ・カーズの目標である。
この目標を実現するための計画として、全面的な電動化によるテールパイプからのCO2排出量の削減にとどまらず、ボルボの広範な事業活動における、サプライチェーン、材料のリサイクルと再利用による二酸化炭素排出量の削減にも取り組んでいる。
短期的には、2018年から2025年の間に、自動車1台あたりのライフサイクルにおけるカーボンフットプリントを40%削減することを目標とし、2040年までに、カーボンニュートラル(実質排出ゼロ)な企業となることを目指す方針だ。
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みんなのコメント
2030年のボルボの立ち位置がどうなっているかはかなり気になる。
何が主流になっていたとしても、プレミアムEVを牽引しているメーカーの先頭に立っているだろう。
今のサイズのラインナップでは、EVインフラが整わない日本ではしばらく苦戦しそうな予感。