現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 一瞬で完売! スバルWRX STI タイプRA-Rは伝説の「22B」を超えたのか?

ここから本文です

一瞬で完売! スバルWRX STI タイプRA-Rは伝説の「22B」を超えたのか?

掲載 更新
一瞬で完売! スバルWRX STI タイプRA-Rは伝説の「22B」を超えたのか?

 モータースポーツをはじめ、コンプリートカーおよびパーツの製作販売を手がけるスバルの子会社「STI」が、2018年7月19日に発売した軽量&ハイパワーなコンプリートカー、WRX STIタイプRA-R。限定500台、499万8240万円で発売されたが、たった1日(7月19日11時に発表・受注開始、16時頃には売り切れたという一報が入った)で完売してしまった。

 そのタイプRA-Rを、日本のニュルと言われる群馬サイクルスポーツセンターにて、松田秀士氏が試乗! はたしてこのRA-Rは、今からちょうど20年前、1998年に特別仕様車として誕生した伝説のモデル、限定400台、500万円の「インプレッサ22B-STIバージョン」を超える実力を備えているのか? 以下、タイプRA-Rの実力を紹介しつつ、22Bとの比較をお届けしたい。

堅実なのか!? お買い得か!? スバル車たちの本当の実力

文/松田秀士 写真/池之平昌信

■切れ味鋭い名刀のようなシュッとした走り

 スバル&STIのコンプリートチューニングカーといえば、昨年( 2017年)10月26日、ネット申し込みによる抽選で450台の限定発売だった「S208」が記憶に新しい。発売直後に購入申し込みが殺到し、あっという間に完売となった。応募者総数はなんと2619人。5倍以上の倍率だったのだ。

 そしてこのたび、2018年7月19日に発売されたタイプRA-Rである。本来この企画では、「S208を買えなかったあなたに朗報ですよ~。エンジンを含めS208のパーツが多く移植された特別仕様車のタイプRA-Rが限定500台、499万8240円で発売されます!」とお伝えしたかったのだが、こちらも7月19日11時に発表されたのち、当日19時には完売という発表となってしまった。500台という小ロット生産とはいえ、もうちょっとなんとかならんか。

 そこで、購入に手が届かなったスバリストのためにも、STI創立30周年記念モデル、WRX STI特別仕様車の「タイプRA-R」がどんなクルマなのか、群馬サイクルスポーツセンターでの積極的攻め込み試乗レポートをお届けしたい。

 まずはエンジンのおさらい。ピストン&コンロッドの重量公差を量産エンジンとしては極限まで詰め、クランクシャフトもバランス取りしたのがS207。すでにこの時、328psを発生していた。これに排気系チューンで+1psを達成。

 さらにクラッチカバー&フライホイールも85%の精度にバランス取りを行ったのがS208。はっきり言って、もう行き着くところまできた感のあるEJ20エンジンは329ps/44.0kgmの出力を発生したのだ。このエンジンと補器類がそのままタイプRA-Rに移植されている。もちろん応答性に優れたボールベアリング・ツインスクロールターボもそうだ。

■S208といったい何が違うのか?

 ではタイプRA-RはS208と比べて何が違うのか?  S208はスポーツ性もさることながら、プレミアムな質感にもこだわったモデル。それに対してタイプRA-Rは「軽さ」「速さ」「愉しさ」というスバルらしいテーマにこだわったよりスポーティなモデル。

 で、S208よりも30kg(1480kg)の軽量化を達成している。内容はホイールを19から18インチ化(−11.4kg)。エアロダイナミクスを狙ったデザインのドライカーボン製ドアミラー。ジュラコン製シフトノブ。そして、軽量ファブリック表皮のフロントスポーツ&リアシート。さらにウィンドウォッシャータンクを4.0Lから2.5Lにする、こだわりようだ。

 取り外されたアイテムもある。ポップアップ式ヘッドランプウォッシャー、リア間欠ワイパー&ウォッシャー、リアフォグランプ、フロントフードインシュレーター、メルシート(スペアタイヤパン内)、大型フロア下アンダーカバー(トランスミッション下、床下センター)、STIロゴ入りステンレス製サイドシルプレート(フロント)、リアシートセンターアームレスト(カップホルダー付き)、スペアタイヤ、といったところだ。

 これら軽量化によってパワーウェイトレシオは、S208の4.589kg/psを凌ぐ4.498kg/psを達成。0~100km/h加速は4.8秒。ちなみに、ベースモデルのWRX STIのパワーウェイトレシオは4.837kg/psだ。

■バランス取りされた329psエンジンは8000rpmまで、よどみなく回る!

 では、走り出そう。8000rpmまで振動もなく気持ちよく回るEJ20のフィーリングはS208そのもの。3速ギヤの6500rpm付近ではブースト計は瞬間的に1.29barを指していた。トップエンドの8000rpmまでも勢いよく回る。前記した0~100km/h加速4.8秒。もしタイプRA-RにDCTなどのツインクラッチトランスミッションが採用されていたなら、あと0.2~3秒は速くなるはず。

 やはりMTはシフトラグが大きく、その間にターボのブースト圧が落ち込んでしまうからだ。それにしても伸びのある気持ちの良いエンジン。ただ、最近の流行からいうと1000rpm落とした7000rpmにマックスを設定し、そこにさらに最大トルクをぶち込んでほしい気持ちになる。

 高回転域まで気持ちいいが、やはりトルクを感じるのは6000rpmまで。最大トルクは4800rpmから落ち始めるので、ならばいっそのこと7000rpmにしても良いのでは?  7200rpmで最大出力の329psを発生するのだが、出力はトルクに回転数を掛け算して算出するもの。

 つまり机上値である。トルクの落ち込みさえ少なければ回転を上げることで最大出力は増加するものなのだ。そしてDCTを採用して多段化させたい。ま、贅沢な悩みなのだが、もう8000rpmはトゥーマッチなのでは?

 コーナリングはどうか? コーナーに飛び込むとS208よりも、そしてベース車両のWRX  STIよりもシャープ! さらにコーナリング中の操舵角が半分ぐらいに少ない。ダンパーはS208の可変ダンパー、ビルシュタイン製ダンプマチックIIから倒立式のKYB製が装着され、約10mmのローダウンがされている。また18インチのタイヤはミシュラン・パイロットスポーツ 4Sを初採用。

 これはトレッド面のアウト側にドライ路面、イン側にウエット路面用のコンパウンドを配した画期的なタイヤ。アクアプレーン対策の縦溝はハッキリクッキリ。デザインもサイズも話題のFIAフォーミュラーEに使用されているものと同じだ。

 30kgの軽量化のなかでの18インチ化によるバネ下の軽量化がハンドリングに大きく寄与している。今回はホイールとタイヤの軽量化にスポットを当て、ベースのWRX STIよりも11.4kgの軽量化を達成しているのだ。回転部はジャイロ効果があるので高速になるほどに軽量化が効いてくる。このことはさらに速度域の高いサーキットを走れば一目瞭然だ。

■DCCDがうまくコントロールしてアンダーもオーバーも出ない!

 ハンドリングはステアリング切り始めの応答が想像していたよりも過敏ではない。わかりやすくコーナリング中も修正舵が少ない。群馬サイクルスポーツセンターは路面が悪く、常にサスペンションが細かく上下動しているが、そのようなシチュエーションでもライン取りが読みやすくステア操作を決めやすい。

 感心したのはDCCD(ドライバー・コントロール・センター・デフ)をAUTOでデフォルトの状態でもフロントがよく入り、リアが適度に巻き込むフィーリングだったこと。かといってリアが大きく滑っているわけでもない。

 DCCD AUTOをさらにマイナスにセットすれば、サーキットで威力を発揮しそうなくらいに切り足しでフロントノーズがさらに切れ込む。それでいてコーナー脱出加速ではステア角が小さく、かつしっかりとリアにトラクションがある。

 昨年の製品改良でセンターデフの機械制御部を取り去り完全電子制御式としたこともかなりハンドリングを後押ししている。

 つまり、アクセルOFFでのコーナー進入からAペックス付近のパーシャルアクセル。そしてエグジットにかけてのフルスロットルをDCCDが上手くコントロールして、可能な限りアンダーステアもオーバーステアも出さないのだ。

 手に入れ損ねたあなた。ほんとに逃がした魚は大きい! こんなレポートを見るのも嫌かもしれないが、せめてバーチャルでタイプ RA-Rに乗った気になって楽しんでもらいたい。

■タイプRA-Rは伝説の特別仕様車22B-STIバージョンを超えたのか?

 さあ、最後に本企画の核心に迫ってみたい! タイプRA-Rは、22Bを超えることができたのだろうか?  即日、限定500台を売り切ったタイプRA-R。相変わらずSTIの台数限定コンプリートモデルは絶大な人気だ。

 この人気のデフォルトを作ったといえるモデルがある。1998年にたった2日で450台を売り切ったSTIのコンプリートカー、インプレッサ22B-STIバージョンだ。

 1997年にWRC3連覇を達成したことを記念して、1998年インプレッサ・ワールド・ラリー・カー97のレプリカモデルだ。ブルーの車体色に黄文字で「555」とスポンサーロゴが張り込められていたのを覚えているだろう。

 あの迫力のある大型オーバーフェンダーを、樹脂製ではなくオリジナル同様に鉄板をプレスして手作業で溶接フィッティングしていた伝説の特別仕様車だ。

 これによって車幅も1770mmまで広げられている。そのオーバーフェンダーだけでも4枚の部品単体価格が約85万円。RA-Rと比べても既に手が込んでいる。

 さらに搭載されたエンジンはEJ22改と呼ばれる2.2L水平対向4気筒ターボエンジンで、EJ20をベースにボアアップ(ボアを92.0から96.9mm)してSTI専用チューニングが施されている。このエンジン、排気量アップの効果もあり、低速域からとてもピックアップが良く7000rpmくらいまでは非常に気持ちよく回る。トップエンドは7900rpmだが、そこまで回す必要もないくらいにトルクの太さを感じさせる。

 この頃は自主規制があり280ps/37.0kgmだったが、RA-Rの329ps/44.0kgmと比較してもそれほど大きな差は感じない。絶対的パワーは別として、22Bは低速域のトルクが太かったので、逆にRA-Rよりも扱いやすさを感じさせる。やはり排気量の差は明らかにある。

 そして車重も1270kgと、1480kgのRA-Rに対して210kgも軽量なわけで、49psのパワー差は車重差でかき消されてしまうのだ。もちろん22Bの時代には車体の安全基準も今ほど厳しくないので、重量差は致し方ないところ。

 RA-RのEJ20はバランスがよく、高回転域でも振動感がない。また22Bでは7000rpmを超えた超高回転域でのストレス感はRA-Rには及ばないだろう。

 8000rpmまでの気持ち良さではS208から引き継ぐRA-RのEJ20は素晴らしい。ワイドボディ&ワイドトレッド化により235/40R17のワイドタイヤ(ピレリP-ZERO)にBBS製鍛造アルミホイール(8.5J×17)を装着している。

 この点RA-Rは軽量化の目的で19インチから18インチへとサイズダウンしている。22Bのサスペンションはビルシュタインダンパーにアイバッハ製コイルスプリングを装着。RA-RではダンパーはKYB製だ。ただし、22Bではブレーキにはそれほどお金をかけていない。

 22Bの純正ブレーキシステムはフロント16インチベンチレーテッドディスクに4ポッド対向キャリパー、リアは15インチベンチレーテッドディスクに2ポッドキャリパーでレッドカラーリング塗装が施されている。その点、RA-Rはブレンボ製ブレーキだから、ブレーキに関してはRA-Rのほうがいい。

■タイプRA-Rはまだ22Bを超えているとは思えない

 結論! 筆者のなかでは、やはり手の込み具合、さらにモデルとなる車両がWRCを戦っていた事実を踏まえて、タイプRA-Rはまだ22Bを超えているとは思えない。22Bの価格も500万円と、原価を割り込んでいるのではないか? と心配になるほどのバーゲン価格なのだ。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

タナク総合首位。勝田貴元はステージ優勝2回で総合3番手まで0.1秒差|WRCラリージャパンDAY2午後
タナク総合首位。勝田貴元はステージ優勝2回で総合3番手まで0.1秒差|WRCラリージャパンDAY2午後
motorsport.com 日本版
<新連載>[失敗しない初めてのスピーカー交換]ツイーターだけを“追加 or 交換”するのは、アリ!?
<新連載>[失敗しない初めてのスピーカー交換]ツイーターだけを“追加 or 交換”するのは、アリ!?
レスポンス
レッドブル、リヤウイングのスペック選定でミス?「空気抵抗が大きすぎる上に、この1スペックしかない」
レッドブル、リヤウイングのスペック選定でミス?「空気抵抗が大きすぎる上に、この1スペックしかない」
motorsport.com 日本版
約270万円! ホンダ新型「“4.8m級”セダン」登場に反響多数! 斬新「光るボンネット」採用の「“迫力”顔マシン」に「近未来的」の声! 天井はほぼガラスな“超開放感”内装もスゴイ「L」中国で発売し話題に
約270万円! ホンダ新型「“4.8m級”セダン」登場に反響多数! 斬新「光るボンネット」採用の「“迫力”顔マシン」に「近未来的」の声! 天井はほぼガラスな“超開放感”内装もスゴイ「L」中国で発売し話題に
くるまのニュース
ドーナツターン追加や坂の角度が緩やかに。ラリージャパン2024豊田スタジアム特設コースの変更点をチェック
ドーナツターン追加や坂の角度が緩やかに。ラリージャパン2024豊田スタジアム特設コースの変更点をチェック
AUTOSPORT web
全長5m超えのレクサス高級「“3列シート”SUV」に反響多数! 堂々「カクカク」デザインに「憧れる」「カッコイイ」と熱視線集まる! 広々内装も魅力的な新型「TX」に「日本でも欲しい」の声も
全長5m超えのレクサス高級「“3列シート”SUV」に反響多数! 堂々「カクカク」デザインに「憧れる」「カッコイイ」と熱視線集まる! 広々内装も魅力的な新型「TX」に「日本でも欲しい」の声も
くるまのニュース
ポップで個性的なモンスター達が作り出す世界観! SHOEIが「Z-8」にNEWグラフィック「YAGYO」を追加
ポップで個性的なモンスター達が作り出す世界観! SHOEIが「Z-8」にNEWグラフィック「YAGYO」を追加
バイクのニュース
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
レスポンス
グリーンがアクセントの爽やかコスが素敵! SUPER GTのGreen Braveは2人の「埼玉GreenBraveサポーターズ」が応援します
グリーンがアクセントの爽やかコスが素敵! SUPER GTのGreen Braveは2人の「埼玉GreenBraveサポーターズ」が応援します
Auto Messe Web
【試乗】新型CR-Vの日本導入は水素燃料電池車のみ! 特殊なクルマかと思ったら実用性十分の「買いやすい」モデルだった
【試乗】新型CR-Vの日本導入は水素燃料電池車のみ! 特殊なクルマかと思ったら実用性十分の「買いやすい」モデルだった
WEB CARTOP
ベントレー マリナーの技が冴える「エクスプレッション オブ テクスチャー」。感性を刺激する「コンチネンタルGTスピード コンバーチブル」ベースの特注モデル
ベントレー マリナーの技が冴える「エクスプレッション オブ テクスチャー」。感性を刺激する「コンチネンタルGTスピード コンバーチブル」ベースの特注モデル
Webモーターマガジン
角田裕毅、F1ラスベガスGP初日は10番手「FP1は苦労したけど、改善できました。ポジティブな兆候です!」
角田裕毅、F1ラスベガスGP初日は10番手「FP1は苦労したけど、改善できました。ポジティブな兆候です!」
motorsport.com 日本版
クルマに付けてる「青地に車いす」マークに“法的効力”一切無し!? 「黄色いちょうちょ」と役割違う? 意外と知らない実態とは
クルマに付けてる「青地に車いす」マークに“法的効力”一切無し!? 「黄色いちょうちょ」と役割違う? 意外と知らない実態とは
くるまのニュース
日高前副会長の後任に、ヤマハ渡部克明会長兼社長が就任【日本自動車工業会】
日高前副会長の後任に、ヤマハ渡部克明会長兼社長が就任【日本自動車工業会】
バイクのニュース
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
レスポンス
ヒョンデに続いて韓国のKIAも日本に上陸! どんなクルマが揃っているのかチェックしたらデザインも中身も結構ヤバい!!
ヒョンデに続いて韓国のKIAも日本に上陸! どんなクルマが揃っているのかチェックしたらデザインも中身も結構ヤバい!!
WEB CARTOP
なぜ12気筒エンジンは魂を揺さぶるのか? アストンマーティン新型「ヴァンキッシュ」は快感以外のなにものでもない。【試乗レビュー】
なぜ12気筒エンジンは魂を揺さぶるのか? アストンマーティン新型「ヴァンキッシュ」は快感以外のなにものでもない。【試乗レビュー】
くるくら
ミツオカ、創業55周年記念車『M55』の市販モデルを正式発表。ローンチ仕様を100台限定で発売へ
ミツオカ、創業55周年記念車『M55』の市販モデルを正式発表。ローンチ仕様を100台限定で発売へ
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

452.1485.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

85.01588.0万円

中古車を検索
WRX STIの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

452.1485.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

85.01588.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村