■昭和の時代に見られた2トーンカラーのクルマを振り返る
クルマを購入するときに、多くの人が悩むのはカラーリングではないでしょうか。クルマのボディカラーには流行があり、かつてはホワイトやガンメタ、シルバーなどが人気で、流行には世相も大きく影響するといわれています。
また近年、軽自動車やコンパクトカーを中心に広まっているのが2トーンカラーで、ルーフやドアから上のキャビンを車体色と異なるカラーで仕上げることでより見た目の印象が変わり、有償オプションながら人気となっています。
この2トーンカラーはかなり長い歴史があり、かつては高級車を中心に多く見られましたが1970年代以降は幅広い車種でも2トーンカラーが採用されました。
さらに2トーンカラーにはいくつの種類が存在し、高級感だけなくスポーティさや外観のアクセントとなるなどさまざまです。
そこで、昭和の時代に流行した2トーンカラー車を、5車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「カローラレビン/スプリンタートレノ」
現在ネオクラシックカー人気が世界中で高まっていますが、それ以前から日本の愛好家を中心に人気なのがトヨタ「カローラレビン/スプリンタートレノ」です。
初代の誕生は1972年で、トップグレードには高性能なDOHCエンジンが搭載され、軽量な車体に比較的安価な価格から、スポーツドライビング好きの若者から絶大な支持を得ました。
その後も同様なコンセプトで代を重ね、1983年に登場したのが4代目で最後のFR車である「AE86型 カローラレビン/スプリンタートレノ」です。
このレビン/トレノでは、発売当初はトップグレードの「GT-APEX」のみ2トーンカラーが選べました(後に他のグレードにも展開)。
まず前後バンパーの上端部分が車体色で下はブラックのままで、そのラインに合せてボディサイドもブラックに塗装され、さらにその数センチ上とフェンダーアーチをつなぐようにブラックに塗装し、リアフェンダーから後部にもブラックのラインがコの字型に入ります。
ボディ下部を暗色系で塗装することで全体が引き締まって見えることから、日産「R30型 スカイライン」なども早期に採用していましたが、AE86型では1本ラインを加えたことで一層シャープな印象です。
ちなみにホワイトのボディをベースにした2トーンカラーのAE86型は「パンダ(カラー)」と呼ばれ、人気漫画の「頭文字D」の影響でこの呼び方が浸透したといえるでしょう。
●日産「フェアレディZ」
日本を代表するスポーツカーの日産「フェアレディZ」は1969年に初代が誕生しました。次期型の7代目が2021年8月にデビューするとみられ、再び大いに話題となっています。
このフェアレディZでは1978年に登場した2代目の「S130型」において「マンハッタンカラー」と呼ばれる2トーンカラーがオプションで設定。
マンハッタンカラーはもともと限定車のみに設定された2トーンカラーなのですが、1980年のマイナーチェンジでTバールーフの設定と同時に有償オプションとなりました。
当初はブラックもしくはブルーのボディカラーをベースに、ボンネットとフェンダーの上部、それとドアの上端部分をシルバーで塗装され、よりロングノーズが際立つような印象です。
さらに後期のモデルではシルバーのボディカラーをベースにブラックのアクセントを塗装した、通常のマンハッタンカラーと色を入れ替えた、通称「逆マンハッタンカラー」も設定されました。
他にも、北米向けダットサン「280ZX」の限定モデル「280ZX 10th Anniversary」では、ゴールドベースとレッドベースにブラックのアクセントとしたマンハッタンカラーもあり、日本のZファンには垂涎の的となっています。
なお、マンハッタンカラーはS130型のみの設定で、次世代のZ31型ではボディの下部を塗り分けるだけの2トーンカラーとされました。
●トヨタ「ソアラ」
トヨタの歴史に燦然と輝くスペシャリティカーとして、1981年に誕生した「ソアラ」があります。現在のレクサス「LC」のルーツといえる存在で、初代のトップグレードである「2800GTエクストラ」は当時の若者の憧れの存在であり、「ハイソカー」の頂点に君臨しました。
この初代ソアラの2800GTエクストラで象徴的なカラーが「ホリゾンタルトーニング」と名付けられたゴールドの塗装で、ヘッドライト下部のラインから下はボディ全周にわたって濃いめのブラウンに塗り分けられました。
同系色の2トーンカラーは見るからにゴージャスな印象で、さらにホイールのメッシュも同系色とされるなど、ソアラのイメージカラーといえるでしょう。
ボディ下部を塗り分ける手法は多くの高級車も採用し輸入車ではメルセデス・ベンツ「Sクラス(W126型)」、国産車ではトヨタ「クラウン」などが積極的に採用していました。
ちなみに初代ソアラではサンルーフとのセットオプションで、後部座席上部のルーフとリアピラーをホワイトのビニールレザーで覆う「ランドゥトップ」が設定され、アメリカの高級2ドアクーペをイメージさせるアイテムですがまず見かけることはありませんでした。
■正統派2トーンカラーと、簡易的な2トーンカラーとは
●トヨタ「マークII」
前出のソアラと同じく、昭和の時代のハイソカーブームをけん引したモデルといえばトヨタ「マークII」と姉妹車の「クレスタ」「チェイサー」が挙げられます。
マークIIは1968年に「コロナ」の上位モデルとして「コロナマークII」の車名で誕生。
その後、3代目まではスポーティな2ドアクーペをラインナップしていましたが、1980年にデビューした4代目ではセダンのみとされ、より高級路線へとシフトしました。
この4代目コロナマークIIは4ドアハードトップ、ホワイトのボディ、パワフルかつスムーズな6気筒エンジンと、後のハイソカーの要素をすでに兼ね備えており、まさにブームへの下地になったモデルです。
高級路線となったコロナマークIIのなかでも4ドアハードトップのトップグレード「2800グランデ」「2000グランデ」には「アーバントーニング」と呼ばれる2トーンカラーをオプション設定。
ボディサイドのプレスラインを境目に、上部がワインレッドに近いマルーン、下部がシルバーとされ、さらに上位の高級車に近い雰囲気を醸しています。
1984年に登場した5代目からマークIIと車名が変わり、ホワイトのカラーリングがメインとなったことから、正統派の2トーンカラーは廃れてしまいました。
●ホンダ「シビック」
1970年代まではクルマのバンパーはスチール製で、クロームメッキや塗装が施されるのが一般的でした。その後、1980年代には衝突時の衝撃吸収や復元性を考慮したウレタン製が主流となります。
このウレタン製バンパーは一気に普及しますが、下位グレードでは素地のままで、上位グレードでは塗装されることで、見た目でも差別化されました。
塗装されたバンパーは現在のようにボディと同色なのが自然でしたが、ここに挙げるホンダ3代目「シビック」のように、あえてボディとは異なるカラーとすることで、デザイン上のアクセントとした例もあります。
3代目シビックは1983年に登場。2代目は初代のデザインを踏襲していましたが、3代目ではデザインとともにシャシやエンジンまですべて一新した新世代のモデルとなっています。
ボディタイプは3ドアハッチバック、4ドアセダン、5ドアのショートステーションワゴン「シビック シャトル」をラインナップ。
下位グレードでは素地のバンパーですが、上位モデルでは一部が素地でシルバー系の塗装となっており、外観のアクセントとされました。
ちなみ素地のバンパーはいまではSUVや商用車以外ではほとんど見られませんが、コンパクトカーでは2000年代初頭まで廉価グレードに残されていました。
※ ※ ※
カラーリングはクルマのキャラクターを決める重要な要素で、各メーカーともカラー専門のデザイナーを雇っているくらいです。
本題の2トーンカラーだけでなく有償オプションの単色カラーも数多く存在しますが、欧州の高級車などでは顧客の好みを反映した世界でひとつだけのカラーを調合するオプションも用意されています。
一般的に有償オプションのカラーは数万円から20万円程度ですが、このオリジナルカラーでは100万円から数百万円といった価格も珍しくなく、そうしたリクエストを聞く専任のコンシェルジュがつくなど、庶民には夢のような世界といえるでしょう。
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