2022年より新規定車両“Next-Gen”が導入されたNASCARカップシリーズ第3戦『ペンズオイル400』が、3月5~6日にラスベガス・モータースピードウェイで開催された。その日曜決勝ではふたたびヘンドリック・モータースポーツ勢による優勝争いが展開され、前戦勝者の2021年チャンピオン、カイル・ラーソンを最終盤の逆転劇で降したアレックス・ボウマンが、274周の勝負を制して48号車Next-Genシボレー・カマロZL1での今季初優勝を飾っている。
前週の第2戦フォンタナでは“遺恨の同士討ち”の末、シーズン初勝利を手にしていた王者ラーソンは、その相手となった2020年チャンピオンの僚友チェイス・エリオットと「レース後、数日に渡った充分な話し合いの末」に和解。チームメイトとの関係を修復してラスベガスに乗り込んできた。
エリオットらスピン続発の週末を制し、王者ラーソンが"Next-Gen"初勝利/NASCAR第2戦
「会話ができて良かったし、それはうまくいったと思う。お互いに前に進むことができた」と明かしたラーソン。「正直なところ、僕が予想していたよりも最初から良好な雰囲気で、彼は良いチームメイトであり、僕も毎週素晴らしいチームメイトになるため自分の役割を果たしている。今週こそ、不運なアクシデントに見舞われないよう注意したいね」
そう語っていたヘンドリック・モータースポーツのダブルエースだが、金曜車検でこの週末最初の伏線が張られ、事前車検に2回失格したことを受け、そのエリオット9号車を筆頭に、4号車のケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)、21号車ハリソン・バートン(ウッド・ブラザー・レーシング/フォード・マスタング)、38号車トッド・ギリランド(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)、そして77号車ジョシュ・ビリッキー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)の全5台がペナルティを課され、クルーチーフの出場停止処分を受け週末から除外されるビハインドを背負ってしまう。
そんななか実施された土曜公式練習では、前戦のように台数分割方式の15分×2ではなく35分間に延長されたセッションで、全37台のマシンがトラックへ。しかし開始早々の7分にカイル・ブッシュ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)の左リヤタイヤがパンクし、ターン3でスピン。ウォール激突による車両の損傷が大きく、予選と決勝に向けバックアップカーでの勝負を強いられる。
その一方で午後の予選では、プラクティス最速を記録したラーソンに対し、トップ2を争ったクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、大先輩の雪辱を果たしてカップシリーズ初のポールポジションを獲得してみせた。
「これまでカップのキャリアではあまり良い予選ポジションを得てこられなかったが、最高にクールな瞬間だね!」と、喜びの表情を見せたベル。「何を話したらいいかも分からないが、670PSトリムでの予選は(開幕前に予定されていた550PSパッケージより)はるかに楽しかったよ」
しかし1.5マイルオーバルで迎えた日曜決勝は、今季開幕からの流れと同じく序盤からカマロ優勢の展開となり、13番手発進だったアリー・シボレーのボウマンが16周のリードラップを記録して第1ステージを制覇。これがボウマンにとって今季初の勝利であると同時に、ここラスベガスでの初ステージウインとなる。
■「2本交換を決断したクルーチーフのコールがすべてだった」とボウマン
すると、同じくシボレー・カマロZL1をドライブするロス・チャスティン(トラックハウス・レーシング・チーム/シボレー・カマロ)が勢いを見せ、この日最多となる83周をリードして、シボレー勢が第2ステージも制していく。
そんななか、スペアカーで挑んでいたカイル・ブッシュらトヨタ勢が気を吐き、レースの早い段階でシフターの問題に対処した18号車のカイルは、43周目にはアクシデントの連鎖反応でスピンを喫してコーション要因になりながらも、49周のリードラップを刻んで上位を走行。エリック・ジョーンズ(ペティGMSモータースポーツ/シボレー・カマロ)を起因にダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が絡み、残り3周で最後のイエローを迎えた時点では、その18号車が隊列を率いてトップを走行していた。
「この展開はジョー・ギブス・レーシング全員が努力し、パフォーマンスを有している真の証だ。今日は自分だけでなく11(号車/デニー・ハムリン)、19(号車/マーティン・トゥルーエクスJr.)、そして20(号車/クリストファー・ベル)も“ピッチイン”してくれた。本当に全員に感謝している」
そう語ったカイルは、最後のリスタートに向け4本のタイヤ交換を選択し、3番手で隊列へと復帰する。一方、チーフクルー不在で勝負権を失っていたエリオットとは異なり、ヘンドリックのラーソンとボウマンはすぐさま“ツー・タイヤ”を選択して賭けに出る。
延長リスタートからアウトサイドのハイラインを選択したラーソンに対し、インサイドを抑えたボウマンは、ファイナルラップのターン4でチームメイトに競り勝ちトップチェッカー。ヘンドリック・モータースポーツが戦略勝ちでのワン・ツー・フィニッシュを飾る結果となった。
「チームのみんな、シボレー、そしてアリーの全員に感謝したい。今日はとくに、2本交換を決断したクルーチーフのグレッグ(・アイヴス)のコールがすべてだった。カイル(・ラーソン)とのレースはいつも楽しいし、勝利のためにはいつだって彼を打ち負かさなくてはならないんだ」と、カップ通算7勝目を手にしたボウマン。
「僕らはいつも、お互いにとてもクリーンで、礼儀正しく、敬意を払って勝負をしてきた。今年はかなりひどいスタートだったから、ここへ来て最後のリスタートから勝利を収められたのは特別な気分だよ!」
一方、NASCARエクスフィニティ・シリーズの第3戦はタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・スープラ)が今季初優勝を飾り、同じく第2戦となったNASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズでは、残り2周のところでゼイン・スミス(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・F-150)やチーム代表のカイル・ブッシュらを抑え切った、19歳のチャンドラー・スミス(カイル・ブッシュ・モータースポーツ/トヨタ・タンドラTRD Pro)が勝利。
そして今季から2台体制となった服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)は、ともにアクシデントやトラブルに見舞われながらも、タイラー・アンクラムの16号車が16位、チェイス・パーディの61号車が14位でレースを終えている。
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