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BMWがベンツに吸収合併される!? 危機を救ったノイエクラッセ「1500」誕生から60周年

掲載 更新 7
BMWがベンツに吸収合併される!? 危機を救ったノイエクラッセ「1500」誕生から60周年

■BMWはベンツに吸収合併寸前だった

 2021年、自動車史上に冠たる名作、あるいはエンスージアストの記憶に残るクルマたちが、記念すべき節目の年を迎えることになった。

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 かの名作、3シリーズとともに長らくBMWの基幹モデルとして君臨してきた5シリーズの起源である「ノイエ・クラッセ」、BMW「1500」もそのひとつ。1961年のデビューから、今年で60周年を迎えた。

 今回は、われわれVAGUEでもその誕生にまつわるストーリーを紹介することで自動車史に輝く1台への敬意を表することにしたい。

●BMWの窮状を救った傑作ミドルサルーン

「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」。このドイツ語の言葉をそのまま英訳すれば「ニュークラス」となる。このキャッチフレーズのもと、1961年9月に開催されたフランクフルト・ショーに1500が登場するまでのBMWは、まさに「新しいクラス」、そして新しい価値を求める苦悩の真っ只中にあった。

 しかし、そののち訪れたノイエ・クラッセ、あるいはその発展版ともいうべき「2002」の大成功が、結果的にはBMWに、あるいは世界のサルーンに計り知れないほどの大きな影響をもたらすことになったのは、BMWファンならばよくご存知のことだろう。

 60年前に登場したBMWの名車たちは、同時代の常識を凌駕する高性能とドイツ製の面目躍如となる素晴らしい品質をもって、当時のサルーンのグローバルスタンダードを大幅に引き上げたのである。

 第二次世界大戦が、未曾有の悲劇とともに終結して間もない頃、西側に残ったBMW社は、戦争の惨禍とその後の経済危機によって貧困に喘いでいた欧州の経済状況を顧みない、ある意味無謀とも取れるような高級化路線を推進。「501/502-V8」などの高級サルーンを次々と送り出して、手痛い失敗を喫してしまう。

 さらに、この失地を回復せんとばかりに打ち出した高級スポーツカー「503/507」の営業的失敗がBMWの台所事情に重大な打撃を与えていたのは、1500リムジーネ登場のわずか数年前、1950年代末頃のことであった。

 このとき会社は破綻の一歩手前と見られ、西ドイツ政府主導でダイムラー・ベンツ社との吸収合併計画も進められていたという。

 ここで登場するのが、現在もなおBMW社の筆頭株主であるクヴァント家である。そして同ファミリーの資金援助を得たBMWは、イセッタ系と同じく2輪車用フラットツインを搭載したスタイリッシュな小型車「700」シリーズをヒットさせ、ようやく復活の兆しを見せ始めることになる。そして、BMW首脳陣が次なる手立てとしたのが、革新的な中型サルーン1500だったのだ。

 BMWが1500のために新規開発したパワーユニットは、戦後独立を期して一度はBMWを去ったものの、結局は夢敗れて復職していたエンジニア、アレクサンダー・フォン・ファルケンハウゼンが、その再起をかけて設計したもの。

 ノーズを低めるとともに整備性の向上のため30度左傾された水冷直列4気筒1499ccエンジンは、軽合金製SOHCヘッドで燃焼効率の高いクロスフローを採用し、もっとも低いチューンでも80psを達成していた。さらに、排気量の拡大やレーシングチューンの可能性も開発当初からしっかり見込まれていたという。

 加えて、この高性能エンジンをフロントに左傾して搭載、リアを駆動するというレイアウト、あるいは前:マクファーソン・ストラット/後:セミ・トレーリングアームの4輪独立サスペンション、高剛性のモノコックボディなどの基幹テクノロジーは、21世紀を迎えた現代のクルマとしても、なんらの言い訳もなく通用するものといってよいだろう。

 一方、4ドアのルーミーかつフレッシュなボディは、そのデザインについて公式には何らの言及はされていないものの、700シリーズと同じくイタリアのジョヴァンニ・ミケロッティの手によるものとみられている。

■ノイエクラッセからアルピナも誕生した!

 1500の開発にあたり、BMWは自ら「ノイエ・クラッセ」を標榜し、ゆるぎない自信のほどをうかがわせた。これは、従来同じカテゴリーで製作されたいかなるサルーンと比較しても、走行性能や操縦性、快適性、さらには安全性に至るまで遥かに上回っているため、もはや新しいクラス分けが必要という企業スタンスをアピールしたキャッチだったのだ。

 しかも、彼らの自信に満ち溢れたコミットメントは、1960年代初頭の自動車界の技術レベルにおいては、すべて真実と認めざるを得ないものであったようだ。

●“新しいクラス”とチューニング文化を構築することに成功

 こうしてショーデビューの1年後、1962年10月からデリバリーが開始された1500は、BMW復活を期して多大な投資をおこなったクヴァント・ファミリーをはじめとする首脳陣の期待に応えて、同社始まって以来の大ヒットを博した。

 しかしBMW技術陣は開発の手綱を緩めることなく、次々とノイエ・クラッセの排気量拡大/改良モデルを世に送り出していく。まずは1500の正式リリース翌年にあたる1963年に、エンジンを1773ccに拡大した上級バージョン「1800」が登場。さらにツインキャブレター化した高性能版「1800TI」も設定された。

 次いで、ノイエ・クラッセの発表以来ベーシックレンジを守った1500は、1964年から1573ccの「1600」にとって代わられる。また1966年には、最上級バージョンとして「2000」および「2000TI」、クーゲルフィッシャー製インジェクションによって130psを発生する「2000tii」も追加設定される。

 その傍ら、一連のノイエ・クラッセのホイールベースや全長/全幅を短縮、2ドア化した「1600-2」が1966年に新シリーズとして追加設定された。その2リッター版が、のちにノイエ・クラッセと同等かそれ以上の名車として称賛される「2002」シリーズとなったのである。

 そして1972年、ついに現行に至る5シリーズの開祖としてE12型「520」がデビュー。BMWの命運を切り拓いたノイエ・クラッセは、静かに歴史の幕を下ろしたのだ。

 ところで、BMWノイエ・クラッセの卓越したパフォーマンスは、モータースポーツの分野でもいかんなく発揮されることになる。

 とくに、この時代からヨーロッパで人気を高めていたツーリングカーレースに向けて、130psに増強した1800ccエンジンに5速MTを組み合わせたエボリューションモデル「1800TI/SA」を1964年から200台のみ生産。1965年の「スパ・フランコルシャン24時間レース」で総合優勝を果たすなど、輝かしい戦果を収めた。

 加えて、当時の西ドイツで勃興しつつあったチューニングブランドにとってもノイエ・クラッセは最高の素材となったのだが、そんなチューナーのなかでも代表格として挙げるべきが、1965年に創業された「アルピナ(ALPINA)」であろう。

 アルピナは、ブルカルト・ボーフェンジーペンが設立したチューニング専門工房である。もともとは自身の趣味として、BMW1500純正のソレックス製シングルキャプレターを、ウェーバー社製のキャブレター2基へと変更するためのマニフォールドを開発したことに端を発し、当初は友人たちのリクエストに応じてBMW各モデルのチューンを手掛けてゆく。

 ところが、ボーフェンジーペンの技術力はあっという間に知れ渡り、アルピナ創業とほぼ時を同じくしてBMW本社の公認を獲得することになってしまう。

 そして、現在に至るまでBMWと緊密な関係を保ちながら、素晴らしいコンプリートカーを送り出しているのは周知の事実である。

 BMWを危機から救い、ドイツのチューニング文化にも絶大な貢献を果たしたノイエ・クラッセは、真の名作として後世まで語り継がれるべき偉大なモデルなのである。

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みんなのコメント

7件
  • BMWといえばやっぱりこの顔!
    逆スラントノーズ!
  • まさに昨日、これの茶色を見た。走行車線を流していた。
    まず、もの凄く小さく、ピラーが細くキャビンが明るい。
    そしてカタチがいい意味で異様。
    目が可愛い。
    ビーエム、いいな、って感じでした。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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