高級車じゃないが後席の快適性は特筆なクルマたち
後部座席の装備や質感は、おおむね車両価格と比例するので、高級車ほどすごくなる。ロールスロイスなどは、アシストグリップひとつとっても、凄まじくお金がかかっていることを実感させる。
この後席は狭すぎる! 一見ファミリー向けなのに家族で使うには厳しいクルマ6選
空間的な広さについては、やはりミニバン系が圧倒的だったりするが、今回は「地味な存在だけど、じつは後部座席がすごく快適なクルマ」をセダン/ワゴン系のなかからピックアップ。国内市場では中古車でも入手困難な場合もあるが、後席が広くて快適なセダン/ワゴンを思い出しておきたい。
1)オペル・シグナム
このクルマの存在自体、多くの人が忘れていると思うが、3代目オペル・ベクトラの派生ハッチバック車として、2003年から発売された。後席の居住性を高めることが重要な開発コンセプトとして掲げられ、ベクトラのホイールベースを13cmも延長。当時のオペルは「スポーツ・リムジン・ワゴン」と称していた。やたら後席が広いハッチバック車という、新しいジャンルの開拓に挑戦したのだ。
メルセデスのSクラスやBMW7シリーズあたりの高級サルーン以上に広い足もと空間や、左右独立してスライドできたり、30度もリクライニングができるなど、後席シートの作りはとても凝っており、掛け心地も素晴らしい。荷室と居住空間に仕切りのないワゴンボディながら静粛性も高く、後席まわりのユーティリティ機能もよく考えられていた。
ここまで凝った後席も、日本市場ではミニバンなどのRV車を前にしてはあまり訴求力にならず、サッパリ売れずに3年ほどで販売終了。メディアの注目度が低かったせいで当時の広報車の稼働率も低く、いつも空いてたのを良いことに、1カ月ぐらい借りて愛用した思い出がある。古き良きドイツの実用車らしい硬質な走りなど、乗り味も素晴らしく、クルマとしての総合力はとても高かった。
本国でも後継モデルが登場しなかったが、思い出せば思い出すほど、惜しまれる力作といえる。中古車の検索サイトでは1台も上がってこないのも残念だ。
「リムジンインテリア」と名付けられた内装をもつクルマも
2)トヨタ・プロナード(および前身モデルのアバロン)
トヨタの北米市場向けセダンで、生産も北米なので日本では輸入車扱いとなった。アメリカ的な大柄ボディのFF車ということで後席空間が極めて広く、後席の快適性だけなら、当時のセルシオやマジェスタなどのトヨタの最高級サルーンを凌駕するものだった。内装の内張りなどの質感はそれほど高くないが、シートは昔のアメリカ車っぽく、やや大柄でソフトなクッションを採用。乗り心地もソフト路線なので、日欧の高級サルーンにはないおおらかな雰囲気が魅力的だった。
スカイフックTEMSと呼ばれる減衰力可変式のダンパーは、変化の幅がとても大きいのが特徴。ソフトよりにすると往年のアメ車を思わせるほど柔らかく、船のような乗り心地となるが、強めに設定すると揺れの収まりは良くなり、意外と山道でもしっかり走れるようになる。
後席の居心地そのものは、可変式のダンパーではないプロナードの前身アバロンのほうがより快適だったが、前述したプロナードの独特の味わいも忘れがたい。
3)ホンダ・アヴァンシア
アコードよりも高級で、広くて快適な後席空間を強く意識して作られたワゴン。内装に「リムジンインテリア」と名付けたところからも、後席の快適な空間作りにこだわったことがわかる。
ボディの全幅は1800mm前後、ホイールベースは2765mmで、1999年当時の日本車としては輸入車なみに大きなサイズ感だが、乗り込むと、室内空間はその数値以上に広さを感じさせた。後席のスライドとリクライニングは連動して調整できるなど、後席乗員の快適性向上の工夫が随所に見られる。
これもかなりの力作だったが、ミニバン全盛時代を迎えるにあたり、一般的なユーザーには同じホンダのショールームに置かれるオデッセイなどのほうが商品としてわかりやすく、販売は低迷。
不人気ゆえ中古車物件も少ないものの、ミニバンは嫌だが後席が広くて使いやすいクルマが欲しいという人は、今から手に入れても悪くない。
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