4月6日、富士スピードウェイで行われたフォーミュラ・ドリフト・ジャパン(FDJ)第1戦の予選。GOODRIDE MOTORSPORTSのGRカローラでドリフト界に初挑戦した大嶋和也は、2本ある走行でいずれも『0点』を記録し、決勝に駒を進めることができなかった。
■ドリフト歴“4日”、ぶっつけ本番のトップカテゴリー初参戦
どうしたロバンペラ。3度目のフォーミュラ・ドリフト・ジャパンでのショッキングな敗退は、わずかな“キャラ差”も影響か
3月15日に突如発表された、大嶋のFDJ参戦。全日本スーパーフォーミュラ選手権、そしてスーパーGT GT500クラスと、国内4輪レース最高峰シリーズを戦うトップドライバーの他カテゴリー挑戦ということで、今回スポット参戦したWRCドライバー、カッレ・ロバンペラと並んで注目を集めることとなった。
フォーミュラ・ドリフトは2004年にアメリカで生まれ、日本には2014年に上陸したドリフト競技だ。以来パワフルなマシンとエキゾーストサウンド、ドライバーのテクニック、アメリカ式のフレンドリーなパドックの雰囲気などで人気を博してきた。今季はこの富士戦を皮切りに、鈴鹿ツインサーキット、“ドリフトの聖地”エビスサーキット、スポーツランドSUGO、グランスノー奥伊吹、岡山国際サーキットを転戦する。
土曜日に単走方式の予選、日曜日に追走方式の決勝というスケジュールで争われるFDJ。単走では、審査員によって3つの項目が厳格に採点される。コースレイアウトに準じた車の走行軌跡『ライン』が35点満点、マシンの角度『アングル』が35点満点、そして、ドリフトの迫力『スタイル』が30点満点という内訳の100点満点だ。2回の走行機会のうち点数の高い方で予選順位が決定し、上位32名が日曜の追走トーナメントへと進出する。富士スピードウェイでは、グリーンファイト100Rからアドバンコーナー出口にかけてが、FDJのコースに設定された。
今回、チームを運営する知人から声をかけられたことがきかっけでドリフト初挑戦となった大嶋だが、練習を開始したのは今年に入ってから、そして新たに仕立てられたGRカローラに初めて乗ったのは大会前日の金曜日(しかもこの日はウエットコンディション)という、“ぶっつけ本番”状態でのデビューだった。
「チームメイトの山中(真生)選手のクルマを借りて半日くらい走って、CUSCOさんにクルマを借りてちょっと練習して、あとは自分のチェイサーで1回練習したくらいで、(初戦を)迎えてしまいました」と大嶋。予選日時点で、ドリフト歴はわずか「4日」というから驚きだ。
FDJには下位カテゴリー(FDJ2、FDJ3)も存在するが、ドリフト競技出走未経験でいきなりの最高峰カテゴリー挑戦に大嶋は戦前から過度な期待は抱いておらず、ドリフト特有の技術と、そこで繰り広げられるハイレベルな戦いは理解していた。しかし、戦いの厳しさとサーキットレースとの違いは想像以上のものだったようで「えらいこと始めたな、と思ってますけど」と笑う。
すべてが初めての経験に戸惑いながらも、普段参戦するカテゴリーでは味わえない刺激を存分に楽しんだことは、予選日を笑顔で振り返るその表情に表れていた。
「もうルールも何も分からないし、練習走行のときも(どこに並ぶか)迷子になっちゃって(笑)。そもそもクルマが完成したのが昨日(金曜)だし、練習走行もウエットだし、今日もドライになったのは途中から。しかも途中までエンジンまともに吹けなくて走れなくて、(練習走行で)ちゃんと走れたのは4本くらい。その4本が意外と決まっちゃったから、『これは予選通れるかも』と思ったんですが(笑)、ダメでしたね」
具体的には、予選1本目の走行ではウォームアップエリアでのリヤタイヤの温めに失敗し、充分なグリップを得られていなかったという。
「おそらく温めがうまくいかず、練習のときよりもグリップしなくて、100Rの立ち上がりでちょっとはらんでしまい、(ヘアピンに向けて)切り返すタイミングが遅れて無理やり行ったところでアングルがうまくつかなくて、アクセルオンが遅れて回転が落ちてしまい、そこで(アングルが)戻ってしまいました」
ドリフトでは、いったん深くなったマシンのアングルが浅くなることを「戻る」と表現し、FDJではこれが長引いてしまうと予選での採点が0点となる。また、3輪以上がコースを外れた場合も0点となるが(縁石上ならセーフ)、100R立ち上がりの“ゾーン1”で大嶋は大きく外に膨らんでもいた。いずれにせよ、上位勢の流麗なドリフトにはまだまだ届かない走行となった。
続く2本目には、ちょっとしたトラブルにも見舞われた。
「2本目もうまくいっていたんですが、昨日から前荷重が多いときにパワステが固まって効かなくなるというトラブルがあって。今朝からは出ていなかったのですが、最後はラバーが載ってきてグリップが上がったことに加えて、僕も結構な勢いで前荷重を作って飛び込んでしまったら、急に(ステアリングが)固まってしまってコントロールできなくなってしまいました」
これによりコースオフを喫した大嶋。結果、2本の走行をともに0点で終えることになり、44台が出走した予選から、日曜日のトーナメントに進出することはかなわなかった。
ドライビングの面で大嶋がもっとも苦戦しているのは、サーキットレースにはないドリフト特有のマシン操作だ。
「正直、滑り始めてからのコントロールは、全然苦じゃないです。角度さえついてしまえば、そこで何キロ出ていようが、別に何も難しくない。ですが、やっぱり“きっかけの作り方”がよく分からなかったり、振り返してサイドブレーキ引いたときに左足がスムーズにクラッチを踏めないとか、そのときにアクセルも煽って回転上げとかなきゃいけない……といった操作の部分がまだ身体に馴染んでいない。どうしても『次あれやって、これやって』と考えながらだと、ワンテンポ操作が遅れてしまいますね」
今回のコースは、サーキットレースでは何千周と走ってきた富士スピードウェイの一部分。ただし「もうまったく、なーんのメリットもないですよ! (レースでは)そもそもあんなライン走らないし、あそこにあんな角度で行った日には大クラッシュなので(笑)」と、異世界への挑戦に“地の利”はなかったようだ。
予選走行前は、「こんなに緊張するのは何年ぶりだろう、というくらい、めちゃくちゃ緊張した。スーパーフォーミュラやGTの予選の比ではなかった」という。その緊張は練習不足による自信のなさからきたものであり、「楽しかったですけど、もうちょっと練習して、リラックスして楽しみたかったですよ」と大嶋。単走とは別種のテクニックが求められる追走も、未経験のまま初戦が終わってしまった。
残りの2024年シーズンは、「今後の練習で、僕がめげなければ(笑)」他カテゴリーの日程と重複しないエビス(6月15~16日)、岡山(10月4~6日)の2戦に出場予定だという。まだまだ始まったばかりの2019年GT500王者のドリフト挑戦。充分な練習と準備を経て、次の出場機会で見せてくれるであろう進化が楽しみだ。
■2024 Formula Drift Japan Round 1 Qualifying
https://www.youtube.com/watch?v=HhL2WGyqB-c&t=9325s
(大嶋の予選1本目は29:04~、2本目は2:35:22~)
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みんなのコメント
それはそれで苦労してたな