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今後に懸念を抱かせるPHEV マツダCX-60(最終) 乗り心地と燃費に疑問 長期テスト 

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今後に懸念を抱かせるPHEV マツダCX-60(最終) 乗り心地と燃費に疑問 長期テスト 

積算8432km 優位に運べる内容には届いていない

小さなハッチバック、フォード・フィエスタのエントリーグレードが、英国では2万5000ポンド(約402万円)ほど。ボルボの新しいバッテリーEV、XC90は10万ポンド(約1610万円)を超えるとか。英国の自動車価格は、驚くほど上昇している。

【画像】リビングのように落ち着くインテリア マツダCX-60 競合のPHEV SUVと写真で比較 全127枚

マツダの新しいSUV、CX-60に5万ポンド(約805万円)の価格がついていたとしても、今の欧州では驚く人は少ないかもしれない。とはいえ、やはり安い金額ではない。少し前ならメルセデス・ベンツGLCを購入できた価格帯にある。

ドイツの名門だけでなく、レクサスやランドローバーといった、プレミアムブランドのSUVと競合することは間違いない。CX-60には、不足ない魅力やバランスが必要といえる。

ところが、正直なところ万全とはいえないだろう。これまで、マツダは優れたクルマ作りで一定の評価を得てきた。自ずとハードルは上がっていた。しかし、競争の激しいプレミアムSUV市場で、優位に運べる内容には届いていないといえる。

逸材揃いといえるBMWの開発チームが、CX-60のようにギクシャクしたSUVを量産車として提供する姿は考えにくい。速度抑止用のスピードバンプや、低速域が多い市街地では、落ち着きのない乗り心地に疑問を感じざるを得ない。パワートレインも同様だろう。

最初は新車ならではの渋さが影響していて、走行距離が伸びれば角が取れるのではないかと考えていた。しかし8000kmを過ぎた今でも、走りが滑らかだとはいいにくい。

優れない乗り心地 伸び悩んだ燃費

車重は1980kgと軽くない。英国仕様の上級トリムグレード、タクミには20インチという大きなアルミホイールが履かされており、タイヤは肉薄。バネ下重量も増えている。高速道路にある橋桁の継ぎ目や舗装のツギハギでも、振動を隠すことはない。

ハードな足回りだからといって、コーナリングで驚くような印象を残すわけでもない。5万ポンド(約805万円)する欧州でのフラッグシップSUVとして、充分な洗練度といえるだろうか。

プラグイン・ハイブリッド(PHEV)でありながら、CX-60は燃費でも伸び悩んだ。電動化技術を選ぶ理由は、走行時のCO2排出量を低減し、ランニングコストを抑えることにある。ところが、筆者が6400kmほど走らせた平均燃費は13.5km/Lに留まっている。

長期テストで費やしたガソリン代は、699ポンド(約11万2000円)。充電にも48ポンド(約8000円)掛かっているから、1マイル(約1.6km)当たり19ペンス(約31円)と、予想より多くの金額を支払うことになった。

PHEVのCX-60は、駆動用バッテリーとモーターだけで約64kmを走れるとうたわれる。その通りなら、ガソリンを燃やさず毎日の通勤をこなせたのだが、実際は遥かに及ばない。気温が温かい好条件の日でも、40kmが良いトコロだ。

職場だけでなく、自宅でも充電できていれば、もっと燃費は伸ばせただろう。とはいえ、マツダが掲げる駆動用バッテリーでの走行可能距離は、甘い数字だといっていい。

リビングのように落ち着けるインテリア

そのかわり、上質でリビングのように落ち着けるインテリアと、充実した装備が気持ちを和らげてくれた。インフォテインメント・システムなどの完成度も高いと感じた。

上級ブランドの多くのモデルとは異なり、ダッシュボードには実際に押せるボタンとスイッチが沢山並び、車載機能の操作性は優秀。ステアリングホイールとダッシュボード、センターコンソール上のインターフェイスの割り振りも、使いやすく考えられている。

とはいえ、もっとバランスに優れたSUVへ仕上げることが、マツダにはできたはず。CO2の排出量規制や、このカテゴリーの急速な需要の高まりを、強く意識しすぎたように思える。

BEV版のMX-30の内容も加味すると、マツダの次期BEVが、従来の内燃エンジンモデルと変わらない競争力を備えることができるのか、懸念を抱いてしまう。過去数10年のマツダのように、魅力的なクルマは生まれるだろうか。

少なくともCX-60の場合、内燃エンジン版の仕上がりは良いようだ。搭載される直列6気筒エンジンは、ガソリンがディーゼルを選べる。重量のかさむハイブリッド・システムが載らないぶん車重は軽くなり、ディーゼルなら同等以上の燃費を狙えるはず。

ファミリーSUVとして、PHEV版より適したモデルになり得るだろう。CX-60が備える長所も、より輝くように思う。

セカンドオピニオン

2022年の年末にマツダCX-60を借りたが、シートは座り心地が素晴らしく、オーディオシステムは美音を響かせ、居心地の良い大型SUVだと感じた。だが、燃費が伸び悩んだことも事実だ。

車両価格を考えれば、エネルギー効率はもっと優れているべき。走りの洗練性や車内空間の広さも、もう少しを求めたいところだ。 Illya Verpraet(イリヤ・バプラート)

テストデータ

気に入ったトコロ

運転環境:整然としたデザインで、レイアウトは賢明。装備も充実している。デジタルとアナログのバランスが素晴らしい。
現実的な速さ:327psと50.9kg-mという数字に相応しい活発な走り。四輪駆動システムで、効果的に路面を蹴ってくれる。

気に入らないトコロ

EVモードの走行可能距離:マツダが主張する数字には、残念ながら近づけない。
エアコンの制御:独自の意思を持っているかのように、思ったように効かなかった。暑い時には窓を開けて、寒い時には上着を羽織る方が早いほど。
乗り心地:コーナーや舗装の悪い区間で、シャシーは手を焼く。MX-5では、しなやかな処理を実現しているのに。

走行距離

テスト開始時積算距離:2092km
テスト終了時積算距離:8432km

価格

モデル名:マツダCX-60 2.5PHEV AWD タクミ(英国仕様)
開始時の価格:4万9520ポンド(約797万円)
現行の価格:4万9520ポンド(約797万円)
テスト車の価格:5万3370ポンド(約859万円)

オプション装備

コンビニエンス&ドライバー・アシスタンス・パッケージ:2100ポンド(約33万8000円)
パノラミック・サンルーフ:1000ポンド(約16万1000円)
ロジウム・ホワイト塗装:750ポンド(約12万円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:66.6km/L
燃料タンク:50L
駆動用バッテリー:17.8kWh
平均燃費:13.5km/L
最高燃費:15.8km/L
最低燃費:8.3km/L
航続可能距離:675km

主要諸元

全長:4745mm
全幅:1890mm
全高:1680mm
最高速度:199km/h(リミッター)
0-100km/h加速:5.8秒
車両重量:1980kg
パワートレイン:直列4気筒2488cc自然吸気+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:327ps/6000rpm(システム総合)
最大トルク:50.7kg-m/4000rpm(システム総合)
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック
トランク容量:570L
ホイールサイズ:20インチ
タイヤ:235/50 R20

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:606ポンド(約9万7000円/1か月)
CO2 排出量:33g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:699.1ポンド(約10万7000円/ガソリン)+48.4ポンド(約8000円/電気)
燃料含めたランニングコスト:747.5ポンド(約12万円)
1マイル当りコスト:0.19ポンド(約31円)
不具合:なし

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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