新時代のBEVツーリングカー・シリーズとして生まれ変わった新生STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権は、本来予定されていたヘルシンボリ港湾地区での開催を「2025年に延期する」としてスキップ。その代替ラウンドが9月13~14日のクヌットストープにて週末2日間で計4レースのダブルヘッダーで開催され、今季より『テスラ・モデル3』を投入するブリンク・モータースポーツ陣営が全ヒートを制圧する結果となっている。
ヨーテボリ市街地の特設トラックにて6月にエレクトリック時代が幕開けした新生STCCは、同月末にユンビヘッド・モートルバナにて通常のヒートレースも開催。この第2戦までを終え、先の8月末にはふたたびEVならではの市街地戦として“Head 2 Head(ヘッズ・トゥ・ヘッズ)”の勝負が予定されていた。
EV新時代の第3戦予定だったヘルシンボリ港湾地区ラウンドが急きょ2025年に開催延期へ/STCC
しかしオーガナイザーとの協議の結果、早い段階でこの港湾イベントは今季開催されないことが確定し、その代替としてパーマネントのクヌットストープにて、第3ラウンドとして第5戦と第6戦のダブルヘッダーを実施する運びとなった。
その金曜初日から、前戦でも速さを披露したトビアス・ブリンク(ブリンク・モータースポーツ)が、ジミー・エリクソン、ミカエル・カールソンの僚友を引き連れワン・ツー・スリー発進を決めると、続く予選でも都合2レースのポールポジションを、エリクソンとブリンクのチームメイト同士が分け合う展開となる。
そんな好調テスラに対し、ライバル陣営は幾多の苦難に直面し、当初計画の『BMW i4』に加え『フォルクスワーゲンID.3』も含めた6台体制を敷くエクシオン・レーシングは、マンツ・タリン(BMW i4)とヴィクトル・グスタフソン(フォルクスワーゲンID.3)の2台が、予選後のチェックで両車とも重量不足であるとスチュワードに判断され、予選結果から除外されることに。
そしてシリーズの雄である盟主ロバート・ダールグレン(PWRクプラ・スウェーデン/クプラ・ボーン)は、予選グリッドで5番手、8番手と、本来のポジションからは程遠い不本意な位置に沈んだ。
「チームとして得た結果は、我々が期待していたものとはまったく異なり、理想からは程遠い。受け入れられないね」と失意の言葉を続けたダールグレン。
「順位の問題ではなく、スピードで大きく遅れていることが問題だ。ペースを大幅に変えなければ、決勝でタイトル争いに加われないリスクがある。何を変えるべきかいくつかアイデアはあるが、今は改善策を見つけるために懸命に取り組んでいるよ」
迎えたレース1は、結果的にテスラのエリクソンが“ライト・トゥ・フラッグ”を決めたものの、チャンピオンシップリーダーの僚友ブリンクはいつもとは違うミスを犯し、スタートで先行されたアレクサンダー・グラフ(エクシオン・レーシング/フォルクスワーゲンID.3)にアウト側から仕掛けようとした際、レイトブレーキングが仇となり4周目のターン1でスピンアウト。結果的に、アクシデントに乗じて3位までカムバックしたダールグレンを“支援”する9位に終わった。
■レース3でエリクソンとブリンクがバリア激突のクラッシュ
「このようなミスは本来起こるはずがない。愚かなことだ」と自嘲気味に振り返ったブリンク。「ジミー(・エリクソン)がスタートで僕を押しのけたので大変だったが、その後にグラフが(インサイドを)すり抜けていった。これでグラフを追い抜くことに少し熱心になりすぎ、プッシュ・トゥ・パス機能を使用したが、ハイスピードでのターン1進入でそれを台無しにしてしまったんだ」
その反省を踏まえ先頭からの発進を決めたレース2では、ブリンクが後続に脅かされることなくポール・トゥ・ウインを飾り、エリクソン、カールソンとともにテスラのワン・ツー・スリーをリードしてみせた。
明けた土曜も決勝2ヒートのグリッドを決める予選からテスラが猛威を振るうと、今度はカールソンが僚友ブリンクとエリクソンをそれぞれ0.3秒と0.6秒差で撃破し、両レースのポールポジションを射止める。
迎えた決勝レース3は、ポールシッターのカールソンがBEV時代初優勝を飾る一方で、チームメイト同士がクラッシュを喫するなど物議を醸す展開に。スタートから2番手争いのサイド・バイ・サイドを展開したエリクソンとブリンクは、最初の数コーナーを並走したのち高速の“NGK crest”進入で接触。エリクソンはバリアに激突する派手なスピンを喫し、セーフティカー(SC)が介入する。
これでブリンクだけが生き延び、リスタート後もオーダーを維持したテスラ艦隊がカールソンを先頭にワン・ツーを達成。3位にラリークロスのスタードライバーであるアントン・マルクランド(PWRクプラ・スウェーデン/クプラ・ボーン)が続く表彰台となった。
そして週末最終ヒートのレース4は、ふたたび“反省”を踏まえたテスラ・モデル3が秩序を保った走行に終始し、エリクソン、カールソン、ブリンクの順でふたたびワン・ツー・スリーを独占するフィナーレとなった。
「今日のオープニングヒートでのクラッシュは、チーム全体にとって損失のように感じた」と、連日の自省となったブリンク。「今週末はチームタイトル、ポール獲得、クラッシュ、そして勝利と、僕らにとって本当にジェットコースターのようなレースウイークになったね」
その当事者として“バリア送り”となったエリクソンも「レース1はクルマがひどく損傷するという不運なカタチで終了したが、これは僕らふたりにとってちょっとした誤解であり、誰も悪意を持っていたわけではないよ」と応じた。
「トビアスと僕はターン1で『少しペイントを交換』し、その後、彼は僕のミラーから消え、僕の方は彼がもっと後ろにいると確信していたんだ。コーナーに差し掛かったとき、僕らはいきなり接触し、こちらがスピンしてしまった。お互いに避けられた可能性はあるが、これで終わりになった」
ここからエリクソンのメカニックたちは、最終レースに向け突貫工事でテスラを修復。復活の勝利を奪い、タイトル獲得の望みをつなぎとめた。
「最終レースに向けてマシンを100%仕上げてくれたチームに本当に感謝したい」とクルーの仕事を労ったエリクソン。「そして、最終レースのスタートでは、ファイナルでタイトル争いに加わるために全力を尽くすしかなかった。優勝できて本当に素晴らしいカムバックだったし、今はファイナルに向け全力で挑むつもりだ」
ブリンクが156ポイントで選手権首位を維持し、カールソンが12ポイント、エリクソンが17ポイント差で追う展開となったEV初年度のSTCCは、今週末の9月20~21日にマントープパークで早くも最終戦を迎える。
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