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BMW M240i xDriveとZ4 M40i、3L直列6気筒の同じ心臓を持つ2台の決定的な違い

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BMW M240i xDriveとZ4 M40i、3L直列6気筒の同じ心臓を持つ2台の決定的な違い

近年、電動化を推進するBMWだが、BEV、PHEV、ICEとまだその選択肢を残してくれている。そのBMWのICEの代表的なパワートレーンである直列6気筒エンジンを搭載する最新の2シリーズクーペとオープンボディのZ4で、その走りの違いを味わった。(Motor Magazine 2022年8月号より)

電動化路線を邁進しつつ、内燃機関にも目を配る
最近は欧州プレミアムブランドの多くから同様の主張が聞かれているように、パワーユニットの電動化に積極的な取り組みの姿勢がアピールされるのがBMWだ。

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実際このブランドには、ちょうど半世紀前となる1972年に開催されたミュンヘンオリンピックのマラソン競技の伴走車として、通称「マルニ」と呼ばれる2ドアセダンベースのピュアEVをいち早く走らせた実績があり、「MINI」ブランドの全モデルは、2030年代初頭にはピュアEV化を行うと表明済みだ。

こうした車両そのものの電動化だけでなく、その製造の工程やパートナー企業なども含めたサプライチェーン全体でのCO2排出量の削減も進めることで、「2030年までに2億トン超のCO2排出量を削減する」とより具体的な目標数値にまで踏み込んでいるのも注目すべき点だ。

一方で、「Bayerische Motoren Werke」すなわち「バイエルンのエンジン工場」という正式な社名が示しているように、本来はエンジンこそが会社の礎というのがこのメーカーでもある。事実、BMWと聞けば優れたフィーリングを味わわせてくれるエンジンこそが最大の魅力と理解する人は今でも少なくないはず。

中でも、アクセルペダルの踏み込みに対してどこまでも滑らかに吹き上がり、その心地良さはさながらシルクのごとしという観点から「シルキーシックス」なる異名を持つ直列6気筒エンジンの存在は、フロントエンジン/リアドライブ(FR)のレイアウトや50:50の前後重量配分と共にBMW車のキャラクターを端的に象徴するキーポイントとして、ひと昔前まではまるで「社是」のごとく語られてきたものでもある。

確かに、2013年に発表された「i3」を端緒とする「BMW i」のブランドが、さらに「iX」に「iX3」「i4」に「i7」とすでに多くのピュアEVをラインナップしている一方で、前述メーカー名の由来となったエンジンを搭載するモデルの分野でも、近年はこのブランドを代表するハイパフォーマンスモデルとして名を馳せる「M3」「M4」シリーズを新型に世代交代させるなど、力の入れ方に決して陰りを見せてはいない。

同じ内燃機関を搭載する異なるボディを持つ2台
実はBMWは、ピュアEVに加えてエンジンを搭載しながらもそれを作動させることなく相当の距離をEV走行が可能な、車名に「e」の小文字を加えて展開されるプラグインハイブリッドモデルも続々とローンチさせている。

しかし同時に、内燃機関を搭載した車両の未来にもまだ見切りをつけたわけではないという本音も伺えるのが、BMWが考えるここしばらくの戦略ということがみてとれそうだ。

そうした中、純粋にエンジンだけを搭載した最新のモデルを改めて今回テストドライブした。2022年に上陸するBMW車の目玉的存在のひとつである刷新されたばかりの2シリーズクーペのM240iと、このブランドの現行ラインナップ中で唯一の2シータースポーツモデルであるZ4。

どちらもブランドを代表するもっとも特徴的なエンジンである、前述の直列6気筒ユニットを搭載する仕様をチョイスしている。「クーペ」を名乗りながらも従来型と同様にボディ後端に独立したトランクスペースを備えるノッチバックスタイルを採用し、結果として後席にもそれなりに実用的な居住空間を確保しているのが、2021年7月に公開され、日本では2022年3月に発売された最新世代の2シリーズクーペ。

その技術的に大きな見どころはやはり、従来型ではランニングコンポーネンツを共有していた1シリーズが、2019年に先行したモデルチェンジを機にFRからFFレイアウトへと転向を遂げたのに対して、2シリーズクーペではFRレイアウトを踏襲した点だ。

ただし今回のテスト車の「M240i」では、末尾に「xDrive」の文字が加えられているとおりそれをベースとした4WDシステムが採用されている。

期待どおりのフィーリングの秀逸な直列6気筒エンジン
M240iで走り始めるとまず期待どおりに、このブランドが長年「金看板」としてきた、直列6気筒エンジンが発するフィーリングの秀逸さが印象的だ。実はそうした好印象は、変速ショックなどまるで感じさせない一方で、DCTにも負けないタイトな駆動力の伝達感を実現させている8速ATの優れた仕上がりぶりによってより増幅されてもいるのではないか。

しかし、それにしてもとことん滑らかに吹き上がり、回転の上昇に伴ってダイレクトなパワーの盛り上がり感も味わわせてくれるこのエンジンの仕上がりぶりは、今さらながらやはりただ者ではない、と改めて実感させられるのは事実だ。

そんな動力性能に関する部分であえてネガティブな点を探せば、それはメーターパネル内に指針が左回りで表示をされる異形タコメーターくらい。端的に言ってその表示の読み取り時にはどうしても不自然な印象が伴う。せっかくのピックアップの良さも、その瞬間に左へと振れる指針の動きによって幾ばくか薄められる印象すら抱くのだ。

フロントフードやエンジンキャリアにアルミ材を用いるなどして軽量化への取り組みが伝えられる一方で、ボディサイズの拡大や4輪駆動系の採用などで1.7トン超と、もはや「軽量でコンパクト」とは紹介し難い点は、それも時代の流れと納得をせざるを得ないということか。

それでも、ワインディングロードへと乗り入れると後輪にバイアスの掛かった駆動力が自在なハンドリング感覚へと繋がることを感じるし、4秒台の0→100km/h加速タイムが謳われるその加速力に不満があるはずもない。

19インチのタイヤにスポーツサスペンションを組み合わせたフットワークのテイストはそれなりに硬質。ただし、テスト車がランフラット構造ではないタイヤや電子制御式可変減衰力ダンパーなどを含む「ファストトラックパッケージ」をオプション装着していたこともあってか、実はそれは過去にテストドライブ経験のあった「220iクーペ Mスポーツ」のそれよりは、むしろややマイルドと思える乗り味であることもまた事実だった。

力強さも併せもつ軽やかな走りのテイスト
そんな新しい2シリーズクーペから乗り換えると、同じパワーユニットの持ち主ながら「やっぱりこちらは純粋なスポーツカーだな」とそんな第一印象を受けたのがZ4だ。そう感じたのはまず、すべての動きがより軽やかであったことに由来している。

「超」が付くほど長いノーズに短いデッキというプロポーションが彷彿させるとおりのFRレイアウトの持ち主で、前輪駆動系からは解放されたボディは各部に補強を必要とすることで不利とされるオープンデザインながら、同様のパワートレーンを採用する「クーペ版」たるトヨタ GRスープラよりも50kgほど重いにもかかわらず、それでも1580kgというデータをマークする。

実際、アクセルペダルの踏み込みに対する加速感は明確により軽やかで力強い。とくにスポーツモード選択時にはそうした動力性能の印象を筆頭として、走りのテイストすべてが操作に対してすこぶるゲイン=応答がシャープで高いことが特徴的。

一方、2シリーズクーペ比では270mmも短いホイールベースや剛性感でやや見劣りするボディから揺すられ感がより強く、さらにチョッピーな乗り味は甘んじて受け入れるしかないという印象だ。

ブランドそのものがスポーティなイメージと強く紐づけられるBMWにとって、新しい2シリーズクーペやZ4はまさにそれをわかりやすく表現する存在に違いない。もちろん現在でも、直列6気筒デザインの心臓がそこに大きく貢献していることも言うまでもないだろう。(文:河村康彦/写真:永元秀和)

BMW M240i xDrive クーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4560×1825×1405mm
●ホイールベース:2740mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●総排気量:2997cc
●最高出力:285kW(387ps)/5800rpm
●最大トルク:500Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・52L
●WLTCモード燃費:10.9km/L
●タイヤサイズ:前255/40R19、後255/35R19
●車両価格(税込):758万円

BMW Z4 M40i 主要諸元
●全長×全幅×全高:4335×1865×1305mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:1580kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●総排気量:2997cc
●最高出力:285kW(387ps)/5800rpm
●最大トルク:500Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・52L
●WLTCモード燃費:11.6km/L
●タイヤサイズ:前255/35R19、後275/35R19
●車両価格(税込):893万円

[ アルバム : BMW M240i xDriveクーペ × Z4 M40i はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • やっぱベンベーサイコーッ!
  • BMWの直6をまだ味わったことの無い人は、今すぐにでも動かないと、数年後にはどうにも取得困難となっていることでしょう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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