この記事をまとめると
■高性能であると認められている日本車には、そのエンジンにもスゴい技術が搭載されていた
これぞニッポンの底力! 地味にスゴイ世界初の国産技術と搭載車5選
■なかには日本のあるメーカーしか実現できなかったメカニズムもある
■日本メーカーが実現したエンジン技術は燃焼室内での混合気の燃焼状態に着目したメカニズムだった
日本のメーカーのみが実用化したスゴいエンジンメカニズム
日常生活に必要不可欠な道具、自動車が初めて誕生したのは1885年のことだった。よく知られるカール・ベンツのガソリン3輪車で、これがガソリンエンジンを使う自動車の起源となっている(人工機関=蒸気機関搭載の自動車という意味では、これより100年ほど前、フランスのキュニョーが完成させている)。
そのベンツの1号車から137年を経た現在、自動車はEVに移行する兆しを見せ始めているが、ヨーロッパで考案されたガソリンエンジンが、初めて日本で乗用車というかたちで使われたのは、1919年に三菱造船が生産した「三菱A型」だった。当時の日本の状況を考えれば、近代工業製品はすべて海外からの輸入技術で、日本発祥のものは皆無だったが、戦後敗戦からの復興を歩むなかで、日本と独自の技術が育まれるようになっていた。
こうした動きの先駆者となったのは、ロータリーエンジンを実用化した東洋工業(現マツダ)だった。ロータリーエンジン自体は、独NSUバンケル社が特許を保有していたが、1960年代を迎え、マツダは自動車メーカーとして生き残るには独自の技術による新たな商品が必要だと判断し、当時の松田恒次社長が自ら渡欧してロータリーエンジンに関する特許の使用をNSUバンケル社と契約。
未知のメカニズム、ロータリーエンジン完成にいたるまでの紆余曲折については、すでに多くの情報が伝えられ既知のとおりだが、開発陣の努力が実を結ぶのは1967年、ロータリーエンジン搭載第1号となったコスモ・スポーツが市販化されたときだった。以後、ファミリア・ロータリー、ルーチェ・ロータリークーペ、カペラ・ロータリー、サバンナのかたちで市販化され、広く知られるように、小型軽量コンパクトにして高出力エンジンの実績を市場に残していくことになる。
このロータリーエンジンに続いたのが、ホンダのCVCCだった。排出ガス(工場、自動車など)による大気汚染が、1970年代を迎えると同時に大きな社会問題として注視されるようになってきた。自動車の場合は、新宿牛込柳町の交差点で、滞留する自動車排出ガスに含まれる鉛成分がまっ先に問題視されたが、すぐに自動車の排出ガスに含まれる有害成分(一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物)が大きく取り上げられるようになり、最終的には昭和53年規制(1978年)というかたちで実施されることになった。しかし、昭和53年排出ガス規制値は、設定当初は達成不可能と考えられるハードルの高い難題だった。
実際、どのメーカーも企業力を傾注して臨まなければならない状況だったが、ホンダはいち早く独創的なメカニズムでこの問題に対処した。1972年、ホンダは独自のCVCC方式を発表。この方式は、まず特別に設けた副燃焼室内で濃い混合気に着火し、その火炎を使って本来の目的である主燃焼室内の希薄混合気を燃焼するという、2段構えの燃焼方式を考えついた。排出ガスに含まれる有害成分の発生を抑えるには希薄燃焼が有効で、燃えにくい希薄混合気を失火なく燃やすには、いったん濃い混合気を作り、その混合気に着火してから続く薄い混合気を燃やしてしまおう、という考え方である。
このCVCC方式はシビックに搭載され、昭和53年規制値の原点となった米マスキー法の設定値をクリアしたことで、SAE(アメリカ自動車技術者協会)から1970年代の優秀技術車に選ばれる技術力の高さが評価されることになった。
燃焼の解析技術に基づく機構を次々と開発・実用化
ホンダには、CVCC以外にも楕円ピストンという世界の度肝を抜く発想があった。2輪の世界グランプリで、4サイクルを使いながら2サイクルに対抗するにはどうしたらよいか、という対処策が原点となったメカニズムで、1気筒当たり吸排気バルブを各4本、スパークプラグを2本、コンロッドを2本とする楕円ピストンを考え出すことになった。これにより超高速回転が可能となり高出力が得られるようになった。
クランクシャフト1回転で1回の爆発が得られる2サイクルに対し、クランクシャフト2回転で1回爆発の4サイクルは、単純に同じ出力を得ようとした場合、2サイクルの倍のエンジン回転数が必要となるが、ホンダの楕円ピストンエンジンは、2サイクルに肉薄する性能の実現に成功していた。
エンジン本体の重量増や特許の問題からホンダ以外に作ることはできず、また世界グランプリでの勝利はならなかったが「ホンダNR」のかたちで750ccのバイクを市販化。市販車ながら130馬力/1万4000rpmの性能を持ち、通常の真円ピストンによる4サイクル方式では、想像もつかない性能を叩き出した究極のエンジンだった。
細長い燃焼室を持つホンダの楕円ピストンエンジンは、吸気/排気各4バルブと超マルチバルブ方式だったが、真円ピストンを使う通常のエンジンでも、マルチバルブ化は日本メーカーが先行していた。吸気3/排気2の5バルブ方式で、1984年にヤマハがF2用のOX66型V6エンジンを発表。
5バルブという変則バルブ配置のため、燃焼室の形状は梅の花びら型をした独特のものだった。
限定供給で圧倒的な強さをみせるホンダRA260E系V6エンジンに対抗する意味が強く、投入初年の1985年は3位が最高位だったが、翌1986年には富士GCシリーズで2勝を挙げてシリーズタイトルを獲得、F2もシリーズ4勝を記録する成功を見せていた。
5バルブ方式は、吸気バルブ面積(合計)が大きくなるため、より高出力化が可能となる特徴を持っていたが、3個の吸気バルブ開閉タイミングを同時とするか、時差を設けるかでメーカーやエンジニアによって違いが見られた。ヤマハはOX66を発表後、1985年に市販バイクのかたちで5バルブエンジン搭載のFZ750を送り出している。
また、4輪車でヤマハと技術提携の関係にあったトヨタでも5バルブ方式は採用され、1991年に5バルブ化された4A-G型エンジンがAE101型カローラ・レビン/スプリンター・トレノで採用された。前モデルAE92型搭載時の4バルブ4A-G型に対し、プラス20馬力(140馬力→160馬力)の出力向上を果たしていた。
現在では常識化した希薄燃焼方式(リーンバーン)も、元もたどれば排出ガスに含まれる有害成分の減少を図ったホンダのCVCC方式に行き着くが、その後も日本メーカーがリードした領域で、1980年代中盤から、希薄燃焼方式エンジンの実用化が本格化する。排出ガスに含まれる炭化水素、一酸化炭素の減少を狙いとし、薄い混合気でエンジンを運転するため、結果的に燃費がよくなるという利点もあった。ユーザーにとって、排出ガスの浄化も見落とせない要素だが、実利という点では、省燃費性能の向上は大きかった。トヨタが4A系エンジンで見せたT-LCS(トヨタ希薄燃焼システム)やTTC-L(トヨタトータルクリーン希薄燃焼方式)は、その先駆け的存在になっていた。
考え方自体は、1957年に確立(特許取得)されていたものの、1990年以降に採用が本格化したエンジンメカニズムがミラーサイクル方式だ。考え方のポイントは、圧縮比を下げることでシリンダー内の圧縮率より膨張率を高く設定し、定常走行時には排気量に対して省燃費効果を得ながら、出力が必要なときには排気量相応のパワーが得られるという考え方で、マツダが1993年、ユーノス800(後にミレーニア)にKJ-ZEM型エンジンを搭載したのが初となる。
KJ-ZEM型では、物理的な圧縮比(膨張比)を10対1に設定しながら、吸気バルブの開閉タイミングを調整することで実質の圧縮比を7.6対1に下げ、スクリュー型機械式コンプレッサー(リショルム・コンプレッサー)と組み合わせ、2254ccのV6DOHCから220馬力/30kg-mの出力/トルクを得ることに成功している(自然吸気通常方式のKL-ZE型2496ccV6DOHCエンジンは200馬力/22.8kg-mを発生)。
マツダはユーノス800以降、デミオ、アクセラ、アテンザでもミラーサイクルエンジンを展開。トヨタもミラーサイクルを積極的に活用したメーカーで、プリウスに始まり、カローラ、カムリ、クラウン、ヤリスなどで幅広く採用。高膨張比を作り出すため、過給機の併用、バルブ開閉機構の工夫などが特徴として挙げられる。
ここまで紹介したいくつの例に共通して言えることは、燃焼室内での混合気の燃焼状態に着目したメカニズムであることだ。吸入した混合気をどういった状態で燃焼させるのか? ある意味、燃焼の解析技術に基づく機構と言ってもよいだろう。
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みんなのコメント
低燃費と高性能を両立してる。おまけに低振動。
なぜ日本で売らないのか、不思議。
もしかしたら、今しか売るタイミングは無いかもしれないのに。
この技術は、圧縮自己着火との相性もよさそう。